『町のけんきゅう 世界一のけんきゅう者になるために』– 2000/7/15
岡本 信也、岡本 靖子、伊藤 秀男 (イラスト)
お弁当に入っていた魚の形の醤油入れとか、空き紙コップとか、ゴミみたいなものを収集している森永卓郎さん(経済評論家)っていますよね。この絵本を読んで、その意義・意味・面白さみたいなものがちょっと分かった気がします。
* * *
家庭文庫の勉強会で、「絵本の庭」から、毎回誰かが一人の作家について調べて発表することをしています。今回わたくし「岡本信也」の回で立候補してみました。全然知らない人でしたが、本が一冊だけだったのと、「世界一のけんきゅうしゃになるために」という副題が興味をひいたからです。結果、けっこうおもしろかったですよ〜。
絵本作家ではなく、絵本はこの本一冊だけ、「考古学」の現代版である「考現学」(こうげんがく)というフィールドで頑張っているかたのようです。考現学っていうの、初めて知りました。
たとえば「看板」「のぼり」「おばあちゃんの履物」とか「電車の座り方」とか、道に落ちている「プルトップ」の形なんかを何種類もスケッチし、図鑑のように一覧にしています。おばあさんの履物は、けっこう草履も多い。でも孫のゴム長を履いている人もいて、笑えます。プルトップも、もう今はどこにも落ちていないし。
この本の情報は1974年〜99年のものなので、私世代にはけっこう懐かしい観察がいっぱいあって楽しかったです。黒いごみ袋とか、あったな〜とか。
どこにでもある見慣れたものばかりですが、数年前まではありふれていても、急に見ることのできなくなるものもある、と言われるとなかなかに意義深い。
ふつうこういうことをしているのはお父さんだけで、家族には変わり者扱いされがちだと思うのですが、この本は娘さんと奥さんと一緒にみんなで観察にでかけているところが、よかったね、というかんじです。
* * * 余談
考現学の祖は、今和次郎という人で、柳田國男に師事していたひとだとウィキペディアに載っていて、なんとなく流れ的に納得。きっかけは関東大震災後のバラックをスケッチしたことだったというのもなんかドラマ。