夫の存在が妻の寿命を縮めている/田中明和
タイトルが釣りっぽいですけど中身は情報量の多いマジメなもの。浜松医科大学名誉教授が、仕事・結婚・食事・睡眠など多角的な方面から長寿についての研究発表を引用し考察を述べている本です。
「医学は統計なので絶対ではありません」と断っているところが誠実ですね。タバコは体に悪いけれど100歳のヘビースモーカーだっている話とか、ご自身は座禅を実践して精神を安定させているけれど、それが絶対とも言いません。「自分に合ったストレス解消法を見つけてみてください」と穏やかに諭してくれるところが人柄を感じさせます。ただ、それだけにまじめな文章で、特にまえがきが面白くないのがもったいない気がします。
結婚・離婚・死別などが寿命に及ぼす影響
タイトルにもある衝撃のデータは4章にあります。愛媛や福岡の地方都市で高齢者を対象に死亡危険率の調査をしたところ、男性は喫煙や高血圧・肥満など複数の因子がありましたが、女性はただひとつ「結婚」でした。
”女性の場合には、夫の存在が最大の危険因子だったのです。”
と(著者が)言っちゃってます。
なぜ「結婚」という答えが導かれたのか具体的な調査方法が書いていないので不明ですが、結婚は夫だけじゃなく姑や舅、子供など色々な問題がありますよね。でもそれを夫と解決したり夫が緩和してくれるようなら、結婚がストレスで病気になる率は少ないのかもしれません。
田中先生は、”経済力さえあれば女性は結婚しない方が幸せではないか、と勘繰りたくなります”とまで言っています。
うーん、これは、ある意味わかる、ことが辛いですね。男性は生活を女性に依存しているので妻に先立たれるとあっという間にガクっときて死亡率が高まるそうです。一方、夫に死なれた妻はしばらくすると以前より生き生きと暮らしている、なんてよく聞く話です。
この調査はちょっと古いし、高齢者を対象にしているし、都心ではまたちょっと違うかなという気もしましたが、概ね間違いではないというか、なんか共感してしまいました。