その店の女子トイレに、個室はひとつだけだった。
私が個室から手洗いスペースに出ようと思ったとき、誰かが女子トイレの表の扉から入ってきた。
ちょうど入れ替わりで、グッドタイミング。
そう思って個室の鍵を開け、続けてドアを開けようとしたまさにその瞬間、トイレに入ろうとやってきたその女性は、すごい勢いで私が手をかけていた個室のドアをパーッと開けた。
「きゃーーーー!」
まず叫んだのは彼女。
個室には誰もいないと思って、思い切りドアを開けたのだろう。
そこに正面向いて私が立っていたものだから、そりゃびっくりするだろうなぁ。
「あわわ・・・」
彼女はまだ驚き覚めやらぬ様子。
私は、結果的に驚かせてしまったのが、何だか申し訳なくなってきた。
「今ちょうどドアを開けようと鍵を開けたところだったのですが、逆に驚かせてしまってごめんなさい〜」
「いいえ、誰もいないと思ったので、すごい勢いで開けちゃってごめんなさい〜」
最後は、二人とも笑み。
驚かそうと思って、できるタイミングではない。
トイレの個室のドアだっただけに、妙に面白い出来事だった。

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