電車に乗っていた。
混んでいたので、つり革につかまって立っていた。
目の前に座っている若者は、とても疲れている様子で首をうなだれて眠っている。
男かな。女かな。
スニーカーを履いているその若者は、どうやら背の高さからして男の子のようだ。
私は、ゆらゆらと窓を見つめていたが、ふと油断したすきに電車の揺れが手伝って、腕に下げた2つの荷物が座っている若者のひざこぞうにかかってしまった。
ゆらゆら。
ゆっさゆさ。
あ、いけない!と思い、私はあわてて荷物を持ち上げた。
でも、若者は目を覚まさない様子。
よっぽど疲れているんだね。
そのとき、若者は私の荷物が何度もかすめたひざこぞうを、左手でキュキュッと引っかいて、再び眠りに入っていった。
うふふ。
もしかして、くすぐったかったのかな。
ごめんね。
でも、うふふ。
ちょっと面白かった。

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