2020/8/5 | 投稿者: pdo

先日書いたオザケンのBLM(Black Lives Matter)に関するツイートに対して、アメリカ在住の音楽関係者が腰の入ったパンチを入れると、さらにそれに対してアカデミズム系の人がカウンターパンチを繰り入れるなど、マウント合戦論争がますます盛んになっている様子だ。議論の中身に立ち入るとめんどくさいのでいちいち引用したりリンクを貼ったりはしないが、このことに関する感想は、前に書いたこと(SNS洗脳で誰もが脳味噌の沸点が下がっており、メンタル共喰いの地獄絵図がネット世界を侵食している一事例として興味深くもない)に尽きる。

と思っていたら、今和製ブラックミュージック界隈で結構影響力のある松尾潔氏が、オザケンの25年前の曲「ラブリー」は、あからさまに Betty Wright の Clean Up Woman という曲のパクリ引用なのに、未だにクレジットがオザケン一人で、著作権料がClean Up Womanの作曲者に支払われていないと「寝た子を起こす」的指摘を行って、これがまたプチ炎上している。

この点については以前このブログで何度も触れたことがある。いろんな観点からいろんな意見があるだろうところで、そこに(マイノリティに対する)「文化的搾取」という観点をさらに持ち込むと泥沼になるのは目に見えている。この議論が今後どう展開するのか或いは黙殺されて終わるのかを、高い緊張感をもって注視していきたい。

しかし90年代には渋谷系の王子として君臨した小沢健二だが、今後は(将棋のひふみんみたいに)すっかりネタ扱いのアーチストと化していく予感が。もっとも、ひふみんと同じく、ネタとしては極上だと思うけどね。

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2020/7/27 | 投稿者: pdo

自分の頭を整理するために書いてみる。

オザケンことミュージシャンの小沢健二が、2020年7月26日午後1:35付でこんなツイートをして、プチ炎上みたいになっている。

https://twitter.com/iamOzawaKenji/status/1287245014473379841?s=20

まずオザケンは、今アメリカの黒人差別反対運動(この呼び方自体もOKなんだろうか?)のスローガンに用いられている「Black Lives Matter(BLM)」という言葉について、「わざと怒らせる手法」であると指摘する(それを英語では「トローリング」と言う、とオザケンは僕のような無知な人々に教えてくれている)。

「Black Lives Matter」を直訳したら、「黒人の生命は大事だ」となる。でもそう聞いたら「誰の生命だって大事だろ!」とツッコミが入る。だが、このツッコミを引き出すことが、この言葉の重要な機能なのだ、とオザケンは指摘する。そして、BLMのように、わざと人々を怒らせたりツッコまれるような挑発的なスローガンを使うことは、言論の武器として有効であると主張する。いわゆる、「炎上商法」というやつだ。

関係ないが、僕の好きな(?)ユーチューバーに「遠藤チャンネル」というのがあって、世の中で話題になったあらゆるニュースにひたすら逆貼りし続ける、というシンプルな手法で人気を博したのだが、なぜかユーチューブ側から収益化停止の措置を食らってしまい、今はただの薬物依存患者のリハビリのような日常系動画になった。

さて、オザケンは、もう一つ、「黒人の命は大事だ」という言葉には前提があって、アメリカには長年「黒人の命は大事じゃない」という酷い下火があった(今もある)ことだと指摘する。

以上がオザケンのツイートの論旨である。

このオザケンのツイートに対して、いわゆる信者のような方々の「勉強になりました!」「さすがオザケン!」という反応が次々と寄せられる中に、オザケンの言葉に強烈な違和感を持つ反応が続々とツイートされている(←いまここ)。

その反応は様々で、「オザケンはBLMというスローガンの発生した背景や意味をそもそも理解していない」という根本的な指摘から、「上級国民的な物言いがムカつく」という感情的な反感まで多種にわたるが、乱暴にまとめれば「オザケンの言葉が当事者性を欠いていることへの反感」というワードに集約されるのではないか。

何より、オザケンの今回のツイートが「トローリング」になったのは、次の一節が含まれていたからだろう。

(以下引用)

確かに、トローリングは下品。かまってちゃんの人、炎上狙いの人、ゲーっとなる。でも上品なことだけ言ってたって「ああそうですね」で終わり、でもある。それに、言葉や言い方って、変わっていく。

(引用おわり)


オザケンの今回の文章の中に上の一節がなければ、彼の主張に対する反応の激しさの度合いは変わっていたのではないかと思う。

もっとも、語るに落ちるというやつで、上の一節によりオザケンは、BLMをスローガンとして掲げる人々への一種の軽い軽蔑(上から目線)を露呈してしまっている。

そこには当然被抑圧者としての当事者性などまるでないし、逆に抑圧者としての(無意識的な)当事者性が表れているともいえる。なぜなら、人種差別という問題(究極的にはあらゆる問題=マター)に関しては、中立的な立場など存在しないからである。

ここで僕自身の立場についていえば、「BLMを炎上商法と同じレベルで捉えるオザケンの感性そのものが終わってる」という批判が正当なものだとしても、僕自身はその批判に唱和する資格がないと感じる。

こう書くと「じゃあお前は抑圧者側の人間なのだな」と糾弾されるのかもしれないが、今僕の生きている社会の中ではそうなのかもしれないし、もしアメリカで暮らすことになったら違うのかもしれない、としか言えない。

「オザケンのツイートをきっかけにしてこういう問題を深く考える良いきっかけになった」というのが一種の模範解答なのかもしれないが、所詮ネット情報で構成された「問と解」を頭の中でいくら構築したところで、現実の問題に直面した時に何をするのか(「安倍政権の退陣を要求します」みたいなツイートに唱和することは何かしたことにはならない)を問われるしかないのだと思う。

ちょっと話題を変えると、やはりミュージシャンの野田洋次郎(RADWINPS)が、「大谷翔平選手や藤井聡太棋士や芦田愛菜さんみたいなお化け遺伝子を持つ人たちの配偶者はもう国家プロジェクトとして国が専門家を集めて選定するべきなんじゃないかと思ってる」とツイートしたことについて、とんでもない優生思想の持ち主であるとして集中砲火を浴びた(?)のも記憶に新しいが、僕自身は、野田洋次郎のこの発言が血眼になって批判するだけの価値があるとも思えない。

野田洋次郎を糾弾して事足れりとする人は「安倍政権の退陣を求めます」とハッシュタグつきのツイートをして自己満足してる人でしかなく、僕はそういう人を現実世界で信用しない。

オザケンの今回のツイートにしてもそうだが、SNSという人類洗脳ツールによって人々の心理的沸点がますます低下し、いわばメンタル的バーチャル共喰いのような地獄絵図がいよいよ誰の目にも明らかな度合いで普遍化しつつあるという事態を示す事例であるとしか捉えられないのが正直な所だ。

この事態については、菊地成孔がその著書『時事ネタ嫌い』文庫化の時点で予言的な明確さをもって指摘している(ちなみに彼は2020年のオリンピックが国家的災厄に転化する運命でしかないことも正確に予知していた)。

そうして世界は回り続ける。地球の表面で何が起ころうと、世界を回し続けるのは結局のところ愛の力でしかない。
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タグ: PC やばい BLM

2019/11/24 | 投稿者: pdo

オザケンの新譜は、実はまだ怖くて聴けていない。

あのタイトルとあのジャケ、そして新曲「彗星」のMVを観て聴いて、これは今の自分に必要なものではないな、と無意識に判断してしまった。

きっと多幸感と大肯定感に溢れて「オッケーよ」という人たちも沢山いるのだろうし(というかほとんどがそうだろう)、「いまここにある宇宙の奇跡」とか自己啓発セミナーまがいのカルトっぽいテイストが(元々あったとはいえ)ますます前面に出て来たなあ、などと意地悪に水を差す気も毛頭ない。

彼を見ていると、めちゃくちゃ頭が良くて高学歴で高収入で意識高いけどイタい知り合いの姿とオーバーラップしてムズ痒さを感じてきた。

90年代はそれも含めて微笑ましかったが、アメリカから返ってきた今の彼が放っている高揚感にどうも違和感を覚える自分の感覚が、むしろズレているのかなとも思う。

このことについては改めて考えてみたい。


※この記事を書いた後に、小沢健二のあるツイートが排外主義的だといって軽く炎上しているのを知った。彼に政治的な求めることは間違いだと思っているし、反グローバリズム運動的なことをやっていたときにも胡散臭さを感じていたので、彼の発言に別段驚きはない。それよりも、発言へのリプライに小沢健二崇拝的な全肯定の意見がけっこうあることに衝撃を受けた。
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2017/2/23 | 投稿者: pdo

僕は今、メキシコの首都、メキシコシティーにおります。




久しぶりにオザケンの『我ら、時』というライブアルバムをひっくり返してみたら、そんな文章のある小冊子が入っていた。

ちょうど今、メキシコといえば僕たちの間でちょっとしたブームでもあり、以下その内容をかいつまんでおきたい。

* * *

えーと、アメリカ合衆国の歴史は、「もともと住んでいたネイティブアメリカンたちを、人口が95%以上減るくらい大虐殺した」という、ぞっとするような事実が無ければあり得ないわけです。

人口が95%以上減ってしまったというのは、北米の話で、メキシコでも大規模な殺戮があったわけですが、北米の状況を「核爆弾によってインディアンが消去された」と例えるなら、メキシコ側は「核じゃない爆弾によって殺された」くらいの違いがあります。どっちにしてもひどい話です。

メキシコと言うのは、ネイティブアメリカンと言われるものの魂が、日常の中にムラムラと漂い、近代化と産業化とぐちゃぐちゃになりながら生きている場所です。

それは北米における「インディアン文化保護区」みたいな生き残り方ではなく、ネイティブアメリカンの魂が、混沌とした日常の中できらめいている。

北米で自らのルーツや歴史や文化に深い疑問を持った学生なんかは、メキシコに下って行くというのがわりとあります。ジャックケルアックという「路上」という小説を書いた人や、イヴァンイリッチという知識人なんかが代表で、カウンターカルチャーとかヒッピーの価値観には、インディアン、メキシコという色が濃いです。

ちなみに小沢健二さんの妻エリザベス・コールさんも、20歳の時一人でバスに飛び乗ってメキシコに向かい、メキシコで新聞記者として記事を書いたりもしています。

そんなメキシコは、「未来都市メキシコ」という一面も持っています。未来と言ってもSF的な嘘の未来ではなくて、現実の、この土の上にやってくる未来の感じ。

例えば、メキシコシティー空港の第二ターミナルを利用する人は、車いすに乗った係員さんに案内されます(2010年10月当時)。空港では60人の車椅子に乗った職員が働いていて、もちろん車いすの人が意図的に採用されているのですが、別に大袈裟な感じは無くて、普通にたくさんの人が車椅子でスイスイ動いています。

あるいはメキシコシティーでは、同性同士の結婚は、異性の結婚と法律上同じで、国内のどこでも有効です。またメキシコシティーには公共の自転車システムがあって、市民は町じゅうの自転車ステーションに止めてある市の自転車「エコビシ」を利用できます。

メキシコは市民による抗議運動が多い事でも有名ですが、これは1917年にできた革命憲法によって「国民が抗議をする権利」が保証されているからだ、と言われます。この憲法は「社会権」というものを世界で初めて認めた憲法で、それより後にできたドイツのワイマール憲法の方が有名なのは今の世の中の仕組みのせいです。

100年前にできたメキシコの憲法は、簡単に言うと百姓一揆が成功した結果の憲法です。現在のメキシコは、百姓一揆で世の中がひっくり返ったあとの世界みたいなものです。

そんなメキシコでは、やっぱり社会とか政治とか文化についての意識がとても高くて、だから自然と本屋さんとか文化施設のレベルが高くなります。

政府が支援している文化施設「カーサ・ラム」なんて「ご立派!」という感じ。

本屋さんでも、メキシコシティーで人気の「ペンドゥロ」は、広くてお洒落で食事もできて映画も借りられて夜はライブや朗読が見られて、という空間。このお店の本の選び方、並べ方、雑貨、食事の充実ぶりは、どれもさすが。

あるいは古いアールデコの建物を改築したすてきな本屋さん「コホネブランコ(白うさぎ)」も、地味な立地にもかかわらず、お風呂場を本売り場にしていたり、とてもお洒落。メキシコ製の服ばかり売る部屋も、すてきなカフェもあります。

メキシコで社会に対する意識が高い理由の一つには、1985年のメキシコシティーでの大地震の経験があると言います。地震後に助け合って生きる中で、人々は「近所の人で自治をするのが一番効率がいい」と気づいて、寄り合いを活発に開いて、どんどん自分たちで政治をするようになった、という歴史があるのです。

このように住民自治もしっかりしている知性的な面のある一方で、麻薬組織関連の殺人が48分に1件起こるという暴力的な国でもあります。しかしこの知性的なメキシコと暴力的なメキシコは実はつながっていて、何が起こるか分からないワイルドな場所だからこそ、それを生き抜く知性が必要、みたいな関係があるような気がします。

そして、その知性は身近な暴力との緊張関係によって、研ぎ澄まされていると思います。

* * *

そんなメキシコで、今週から映画『この世界の片隅に』のプロモーション活動を行う片渕監督とのんさんはじめスタッフ御一行様、どうかよい旅になりますように!
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2017/2/21 | 投稿者: pdo

マジか(笑)

Mステにも出るらしい(笑)

もちろん嬉しくて笑ってるんだよ(笑)

これが最後のシングル(笑)




というわけで、早速買ってきた。

オザケンのエッセーによる全面広告が掲載されている今日付けの朝日新聞と一緒に。



『球体の奏でる音楽』を連想させるジャケット。後姿は息子さんのようだ。



新曲(去年や過去のライブでは既に披露されているらしい)は、思ったより「はっちゃけてる」感じ。しばらくリピートし続けることになりそうだ(笑)
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