2021/9/8 | 投稿者: pdo

何か書くことにブレイクスルーを起こすための一つの有効な方法は、こんなつまらないことわざわざ書くようなことじゃないよな、ということを書いてみることである。変身が起きる(かもしれない)。
千葉雅也@masayachiba 

大学三年生の頃だったと思うが、高校時代の同級生I君と一緒に北海道旅行を企てたことがある。なぜ大学三年生の頃だったと思うかと言うと、夜、二人で、当時住んでいたアパートの近くの公園で遊んだ記憶があるからだ。

I君とはそれほど仲が良い訳でもなかったのになぜ一緒に旅行などしたのか分らない。結局その旅行は北海道まで行く予定だったのが福島あたりで中断して戻って来ることになった。旅行中、二人の雰囲気は終始険悪といってよかった。お互いに鬱屈したものを抱えながらほとんど会話もせず黙々と電車に乗っていた(二人で電車に乗っているところの記憶もない)。

極端な出不精で、海外はおろか国内ですらほとんど旅行したことのない僕が旅行しようなどと思い立ったのは、そのとき福島県に住んでいた、大学の同じサークルに一時期所属したことのある人に連絡して、あわよくば会えないかと思ったからだった。

その人は同い年で、大学一年の時に僕が所属していた音楽愛好サークルに加わった一人であった。大学を卒業して福島県の実家に帰っていた。なぜ実家の連絡先を知っていたのか、本人から聞いた記憶もないから、たぶんサークルの人づてに教えてもらったのだろう。

I君と福島で宿を定めた夜、宿の電話から実家に電話した。一年以上ぶりだったから、突然の電話に驚いているようだった。お互いの近況について話したが、何となく気乗りしていない様子が伝わって来た。一時間近く喋って、その日は電話を切った。明らかに戸惑っているのが分ったので、会おうよとは言えなかった。

次の夜も電話をした。二晩続けての電話に、不審がっている様子が伝わってきた。「会わない?」と訊くと、そっけない断りの返事だった。次の日、ずっと放心状態のまま、I君と二人で、ひたすらだだっ広い野原を無言で歩いた。ちっとも面白くない旅行を打ち切りにして、東京に戻った。それ以来I君とは会うことも連絡を取ることもないままだ。

その人の名前でググったら文芸社という出版社の本のカバーデザイナーで出てきたが、同一人物かどうかは分からない。
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