2020/10/9 | 投稿者: pdo

コロナ禍による対局日程中断という未曽有の事態に襲われた2020年の将棋界の締めくくりを飾る、第33期竜王戦七番勝負が始まった。

初防衛を期する豊島竜王に挑戦するのは、タイトル通算百期という前人未到の記録の達成をあと一期残すのみとなった羽生善治九段。

二人に共通する点は、直近の対藤井聡太二冠との対局にいずれも勝利しているということ。

どちらも王将リーグでの対局であり、豊島竜王はその前にもJT杯で藤井二冠に土をつけ、藤井二冠はプロになって初めての三連敗を経験した(銀河戦など勝敗非公開の棋戦を除く)。

豊島竜王はなんと藤井聡太二冠相手に通算成績6勝0敗という一方的な成績を上げており、いくら豊島竜王が現在の将棋界きっての実力者とはいえ、相手はあの勝率8割を誇る藤井二冠であり、この一方的な対戦成績は棋界七不思議の一つに挙げられよう。

羽生九段は先月で50歳を迎え、いよいよ棋士としては若手や中堅を相手にするベテランの域を迎えた。50代の棋士が竜王戦七番勝負に登場するのは初めてとなる。これまでの最年長者は第31期の羽生で48歳。

竜王戦の前身棋戦である十段戦では、1974年に当時50歳の大山康晴が、中原誠十段を4勝3敗で破って十段位に就いている。50歳でタイトル取得は初めてのことであった。
ちなみに大山は50代でタイトルを11期も獲得している。どれだけ破格な棋士かが分かる。

2年前に無冠となって以来タイトル戦に縁のなかった羽生にとって、今期の竜王戦には特に期するものがあることだろう。数々の前人未到の記録を作り続けてきた羽生。若手のレベルは年々上がっており、その下には藤井聡太という怪物が出てきた現状、この機会を逃すと次の機会を得るのはいつになるか分からない。

一方の豊島も、若手の頃は「無冠の帝王」と呼ばれ続け、悲願のタイトル保持者となってからは、まだ防衛戦に一度も勝っていない。名実ともに棋界を背負う代表者となるためには、この竜王戦は何としても防衛したい。

個人的には、やはり同世代である羽生九段を応援したくなる。世間の風も圧倒的に羽生贔屓に傾くのもやむを得ないところだろう。

今期羽生が竜王を奪取し、翌年に藤井聡太の挑戦を受けて立つというのが、多くの将棋ファンの夢想するところであろう。両者の対決をタイトル戦という場で見てみたい。それも竜王戦という最高の舞台で。間違いなく将棋界の歴史に永遠に語り継がれる番勝負になる。

暗い世相の最中にあって、将棋界はファンに大きな夢を見させてくれている。将棋ファンのみにとどまらず、将棋を知らない人々にまで藤井聡太らの活躍は励ましを与えるものとなっている。

「将棋というのは本来なくてもよい仕事だ。だからファンを喜ばすような将棋を指さなければいけない」と言ったのは天才・升田幸三だが、今のプロ棋士たちはファンを喜ばせるために、あらゆる手を尽くして励んでいるように見える。彼らのファンサービスは時に過剰と思えるほどで、そこには純粋な善意とサービス精神しかないから、笑いながら感謝の涙が出てくる。

私自身は将棋棋士という存在を決して「なくてもよい」仕事だとは考えておらず、一種の聖職者とみなし、最大級の敬意を抱き続けている。彼らの存在は非日常のレベルにあり、純粋に尊い。

私は、棋士が存在しなくなる世界になど、生きていたいとは思わない。

そんな棋士の中でも、別格の神々の戦いを、リアルタイムで見れることの幸運に、震えずにはおれない。

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