2018/6/8 | 投稿者: pdo

日本将棋連盟は8日、東京都内で通常総会を開き、東京都と大阪市にある将棋会館が老朽化してきたため、「会館建設準備委員会」の発足を決め、委員長に第一人者の羽生善治二冠(47)が就任したと発表した。

 同委員会のメンバーには将棋連盟専務理事の森内俊之九段(47)、中村太地王座(30)、久保利明王将(42)らが入った。東西の会館は建設後、共に約40年が経過。建て直すか、賃貸にするかなど白紙の状態で今後、話し合いを重ねていくという。





将棋会館建て替え問題については、羽生さんには前に苦い経験がある

今この役割を引き受けたということには、いろいろと思うところがあったのだろう。

自分の父は、大山康晴名人による、現在の将棋会館設立の資金作りに協力して、高級(?)将棋盤を購入したらしい。

ならば、自分も、羽生さんと素晴らしい棋士たちのために、できる限りのことをしなければなるまい。

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東京将棋会館が建ってから20年以上が経ち、あちこちが傷み出した。そこで、大掛かりな修理をするか、いっそ建て直すか、という話が出た。

大問題であるから、例によって審議委員会がつくられた。中原誠が委員長で、羽生など上位棋士が委員として加わった。

このとき羽生は、将棋界の実質的な代表者になったのだから、運営面にも関わらねばならぬ、との使命感を強く持った。そして、この問題を真剣に考えたらしい。

建築について勉強し、一級建築士や会計士などにも助言を求めたと聞く。そして、建て直すべきとの結論を得て、試案をまとめた。それを見た先崎学によると、考えられぬほど完璧なものだったという。

委員会も羽生案を答申しようという空気だった。自信を得た羽生は、東京だけでなく関西でも、若手棋士たちとの集会を開き、試案を説明し、賛成を得た。

そうして、棋士総会で羽生案が採決されることになった。念を入れて、総会当日の午前中に、鳩森神社で羽生案支持の若手棋士たちを集めて、意思を確認した。

午後から棋士総会が開かれ、いよいよ「将棋会館建設」についての採決が始まった。

理事会が示したのは、(1)新将棋会館を建てる、(2)5年様子を見る、(3)10年様子を見る、の三つからどれかを選ぶ、という投票方法だった。建て直すか、やめるか、白か黒かとは言わないで、三者択一にしたあたりが将棋指しらしいやり方である。

投票結果は大差で、(3)10年様子を見る、だった。

その結果は仕方ないとして、驚いたのは、羽生案に対する支持が、予想をはるかに下回ったことで、感じとしては、支持すると確約した棋士の半数が裏切っていた。…

羽生には大ショックだっただろう。これ以後、運営面に関わろうとはせず、若手棋士たちともつき合わなくなった。棋士総会には顔を出すが、それも中途に来て、すぐ帰ってしまったこともあった。

ともあれ、将棋界はあのとき、いちばん大切な人のやる気をなくさせることをしてしまったのである。それがどれほどの損失か、反対票を投じた若手棋士たちはわかっていない。

私の若手の将棋を見る眼は、このときから変わった。

(『盤上の人生、盤外の勝負』河口俊彦 による)
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