2017/1/24 | 投稿者: pdo

2015年12月に公開され、ロカルノ国際映画祭で受賞するなどして話題になった映画『ハッピーアワー』がCSで放送されていたので録画して見た。

以前菊地成孔氏の映画評を読んで、ヤバそうな映画なので見てみたいと思っていたが、劇場で見る機会には恵まれなかった。

期待通り、いい意味でヤバい映画であった。

特筆すべき点として是非記しておきたいのが、主演女優4人の“顔”のチョイスが絶妙であること。

この4人は前述のロカルノ映画祭でも主演女優賞を獲得しているのだが、大阪育ちで母親の実家が神戸にある自分としては、「あの4人が神戸に存在していること」がこの上ないリアリティをもって迫ってきた。だって、あんな女(ひと)たちいたもん実際。

桜子のそこはかとない「UA感」(中学生の息子がいるのだがこの人が一番エロい)や、純の「神戸の自由でいい女」感(僕はこの人を個人的に知っているような気がして仕方がない)、あかりの「神戸の病院でバリバリやってます」感(僕はこのタイプの女性に弱い、というか支配されたい)、芙美の「いかにも地元でワークショップなど“意識高そうな”イベント企画してそうな感じ」など、すべてが配役と、神戸という舞台に完璧にマッチングしている。

このキャスティングだけで、もうこの映画は観るに値する作品であることが冒頭で分かった。

男性たちの配役も素晴らしい。もうこれは観てもらえばすべて納得なのだが、全員がこの人しかあり得ないという説得力をもっている。

映画紹介によると、出演しているのはほとんど演技経験のない素人で、監督の演技ワークショップに参加した人たちから選ばれたそうだ。

実際、セリフなどはほとんど棒読みに近い部分もあるし、いわゆる演技の上手さのようなものはほぼ誰も持ち合わせていない。しかし見ていて不快になるようなレベルではない。

むしろ、彼らの「素人っぽさ」(演技してない感じ)が、この映画のドキュメンタリー的な見せ方にうまくハマっている。

とにかく見ていて終始心がザワザワする。休憩をはさんでトータルの上映時間が5時間を超えるというすごい鑑賞スタイルを強いる作品なのだが、まったく時間の長さを感じない。


以下一部内容に触れるので未見の方は注意のこと


物語の前半に、鵜飼という得体の知れない“アーチスト”によるボディワーク系のワークショップの模様が延々と流されるのだが、この胡散臭さが絶妙で、見ながら笑いが止まらなかった。もちろん笑いを誘うようなシーンではないのだが、鵜飼の「よく分からないけど只者ではなさそうな感じ」(僕は彼を見ながら『闇金ウシジマくん』の洗脳くんに出てくる奴を思い出していた)や参加者の「戸惑いながらも次第に引き込まれていき最後に全員の拍手で終わるような雰囲気」などが、いかにもありそうな“カルト系”の匂いをプンプンさせており、もしかしたら物語がこっちの方向でエスカレートしていくのでは、とのスリリングなザワザワ感が離れなかった。

実際、このワークショップの参加者の半数は鵜飼の知り合いであり、質疑応答にも「サクラ」的な応答が紛れ込ませてあったりして、手法としては「ソフトカルト」とさえ言ってもよいものであることが物語のラスト近くで判明するのだが、物語の主軸はそこではない(主軸ではないが重要な部分ではある)。

このワークショップの場面は、まるで現場の模様をそのまま撮影したように流される。しかし当然ながらこの場面のカメラの位置、セリフ、背景に映る参加者の様子などはすべて計算し尽くされている。見返すとほとんどすべてのやり取りがその後の伏線になっている。

ほかにも重要な場面を上げていくときりがなくなるので止める。

一言でいえば、いろんな思いがわき上がってくる、すごい映画だった。
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