2017/1/6 | 投稿者: pdo

『あまちゃんメモリーズ』の執筆者でもあり『この世界の片隅に』のパンフレット制作にも携わっている中川大地氏による「片渕須直×のん 特別対談」の記事が、さすがに内容が濃い。

この中で、「のん」が演技について、他の媒体に比べるとかなり突っ込んだことを語っているので、備忘録代わりに発言を抜き出しておく。

あ、第31回高崎映画祭ホリゾント賞(野心的かつ革新的作家性を備え、日本映画界の未来を照すであろう作品に与える賞)受賞おめでとうございます。


             * * *

まずは役柄の人となりを、どう解釈をするのかっていうことを考えていきますね。それから、その解釈っていうのを、自分の魅力から派生したものとすりあわせる……というか。で、それと観る人が楽しむところの落としどころはどこかっていうのを、同時に考えながらやっていくんですが。あ、同時じゃないか。それは最終的に考えるのか。

だから、私がやっているのは、自分しかできないその人の解釈みたいな感じですね。じゃないと、自分にその役が来た意味がないという気がしちゃうので。でも、それは、現場で演じるという時は、一旦、手放してその人になりきるっていうことに打ち込むんですけれど。


化けると言うより、私の場合の演技は、キャラクターを解釈することですよね。キャラクターはもう、台本の中にとか、映像とか、原作の中に描かれているものがあるじゃないですか。そこから、そのキャラクターをどう考えるかみたいな部分が、その役者さんによって違う面白いところなのかなって思いますね。この感情の流れを、どういう風に面白くするかみたいな……。言葉にするの、難しいなあ。

―――のんさんが重視されてるその解釈作業に対して、片渕監督みたいにものすごく密に相談に乗ってくれる方と、役者さんに丸投げというかガイドのない中で任される方と、演出家さんによっても色々スタイルがありますよね。そのあたりの得意不得意はいかがですか?

難しいですね。片渕監督みたいにとことん付き合ってくださる方もすごく貴重なんです。

私としては、監督の求めているものが理解できると、そこからどうアプローチするのかが考えやすいというか。でも、監督の腹の中にあるものに気付かせないようにそこに持っていこうとする、みたいなことをされるのが苦手です(笑)。ストレートにぶつけてくれる方が好きです。

最初はもう監督が求めているものを何もわからない状態で行ったので、リハーサルの時とか、とにかく探っていくっていう感覚ですね。それを受けてどういう風に作っていくか。監督から受けたものを「じゃあこんな感じか? こんな感じか?」って考えをめぐらせたりして。で、現場で作られていくっていう試行錯誤するのが、楽しかったです。

お仕事してなかった間も鈍らないようにレッスンを積んだりとかしてたんですけれど、やはり声優というお仕事っていうのをちゃんと分かっていなかったので、その感覚をつかむのが一番難しかったです。

以前にも、海外のアニメ映画の吹き替えのお仕事をしたことはあったんですが、すごくキャラが濃い役だったというか。記号がハッキリしている役だったような気がします。なので、なんかがむしゃらにやったという記憶しかないのですが、すずさんはすごく面白い方ですよね。アニメのキャラというよりも、観ている人が自分に重ね合わせて思い入れのできる役というか。そういう、記号的ではない人だったのが難しいですよね。

監督のすずさん像がどんな感じなんだろうって、ずっと訊きまくってました。最初に私がイメージして出したのよりも、声を低くするように言われて試行錯誤しながらやってましたけれど、そういう感覚をどういうところに落とし込めたらいいのかを探るために、ずっとお話を聞かせていただいていたんです。

最初のお話しの時はまだ、スタジオでの一つ一つの指示の意図が、まだわからなかった感覚でした。そこで、監督からすずさんは中に隠れている部分があると聞いて。で、それがどう表面に現れてくるのか、どう表現すればいいのかは、監督のお話の先にある部分だったので、本収録ではそれを探り探りやっていきました。なかなか手こずってしまいましたが。

でも現場で、ああでもないこうでもないとやっているうちに、だんだんオッケーのカットをいただくようになって。それを映像にはめたものを休憩の時にちょこちょこ観返させていただくみたいな流れだったのですが、その時に、「ああ、あれはこういうことだったんだ」と考えを巡らせながら演っていたような気がします。

―――つまり、のんさんが最初に原作を読んだ時のイメージと、片渕監督のイメージが結構ちがっていたわけですね?

いや、片渕監督のイメージというよりも、映像の印象ですね。原作を読んだ時は、すずさんの晴美さんと張り合っちゃうみたいな面白い部分とかを強く感じてたんですけれど、映像を観たときに、すごく美しくって。映像の中のすずさんのセリフが入ってなくても、これで全部なんじゃないかって思ってしまって。その美しさが自分の中で大きくなっちゃって、それに合わせて美しい声を出さなきゃみたいな風になってたところはありましたね。

で、監督とリハーサルさせていただいて、お話しさせていただいて、漫画をもう一度読み直したりして。そうやって手探りしていきました。

サン役の新谷真弓さんは広島の出身の方で、新谷さんが吹き込んだ方言CDをいただいたんです。それをガイドにしながら自分でも色々やって録音して、それを聞き返しながら練習していった感じですね。まず、すずさんの声を口の動きに合わせて映像にはめるっていう部分からもうつまづいていて難しかったので。

まずはそこからやりながら、シーンごとに「こういうトーンなのか? こういう感情なのか? こういう雰囲気もあるんじゃないのか?」というのを、お家で考えながら自分の中で作っていって、いくつかパターンを持って行って、現場に臨んでたっていう感じですね。

それを使うかどうかはわからないんですけれど、監督の演出に対してどうアプローチするのかということについて、いろんな表現が使えるなっていう感じで、だんだん視野を広げていく感じでした。

(片渕)嫁に行った先のお父さんお母さんの前で、「ちゃんと大人になって挨拶しなさい」みたいに演出して、本心はそうなってないのに、ちゃんと表面上お行儀よくしているすずさんみたいなね。そこから結構、すずさんの二面性が出てるんですよ。

そうですよね。そういう部分で、みんな猫を被るっていうことは日常的にしなくちゃいけないことなんだけど……うーん、なんだろう。あっ、そうだ、わかった! えっと、嫁ぐっていうことの感覚が、私まったくわからなかったんです。

私は家族全員から「結婚できない」「一生独身」みたいな呪いの言葉を言われているんですけれど(笑)。なので、そこが一番大きいかもしれないです。結婚するということへの想像力が足りなかったのかもしれない。

そこで、やっぱりその時はすずさんも嫁ぐっていうことは初めてだっていう時の戸惑いっていうのを、微妙に入れこませなくちゃいけないっていうのが難しくって。緊張しているんだけれど、嫌なわけではないっていうところが、なかなか腑に落ちなかったんですよね。

私が納得したのは、口の中にキャラメルの味が広がったっていうナレーションっていうか、心の声が入ってくるところ。自分の記憶の中にはなくても、子供時代に周作さんがキャラメルを化け物にあげていたのが無意識に懐かしく感じられて、いきなり他人の家に嫁ぐことにびっくりしてたりのもあるけれど、心の底に嬉しいっていう感情があるのかな……っていう風に思いました。
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