2015/9/30 | 投稿者: pdo


パット・メセニーとオーネット・コールマンの『ソングX:20thアニバーサリー』というCDがかなりいい。

パット・メセニーは言うまでもなくジャズ・ギタリストの超絶テクニシャンで、オーネットは当然ながら好き勝手に超絶フリーにかつお気楽に吹きまくっているだけなのだが、相性がいいというのか、何とも言えない解放感がある。

マイルス・デイヴィスは聴いていると緊張を強いられるが、オーネット・コールマンは聴いていると頭のネジがゆるゆるになってくる。

思うに、この人には「作為」がない。好き放題やってやろうとか、フリーにやろうとかいう「意欲」をまるで持たずに、ただ内からの流れにひたすら素直に吹いているだけだ。

「天真爛漫」と言ってしまえば身も蓋もないが、貧乏だった彼は、ミュージシャンになるまでも、なってからも、周囲から蔑まれ、冷たい視線を浴び続け、時には暴行さえ受けた。

スタイリッシュなマイルスの「反抗」とも違う、「変人の受難」を味わい続けた人だ。オーネットが凄いのは、そうした迫害をものともせず、世界に向かって自分を開き続けることをまったく躊躇しなかった。

日本の有名なサックス奏者、梅津和時が、初めて自分のレコードを作った時、真っ先にオーネットの住むアパートを訪ねたという話がある。

突然自分のレコードを聴いてほしいと訪ねてきたまったく無名の日本人ミュージシャンに対して、オーネットはニコニコと耳を傾け、家に上げて、ティーパック入りの紅茶を持ってきて、自分の新しいビデオを一緒に見ながら談笑したという。

別の日本人ミュージシャンは、オーネットが来日した時、宿泊するホテルまで押しかけていって、無理矢理レッスンを受けたそうだ。翌年渡米し、オーネットに教えてもらうようになった。まだ英語がそんなに上手ではなかった彼に、長い時には3〜4時間、ひとつひとつ楽譜に書きながら、手取り足取り教えて。

別にオーネットが「いい人」だという話がしたいのではない。

金に厳しい面もあったというし(道端で見かけたホームレスに大金を渡すこともしばしばだったそうだが)、マイルスの「口撃」に対してはシニカルで辛辣なユーモアで応じている。

オーネットが音楽で体現した「自由」は、ジャズという音楽を通してアメリカ黒人たちが追い求め続けてい感覚そのものだった。彼の登場がセンセーションを巻き起こした最大の理由がそれだ。

スタイルに囚われることの不自由さを「カッコよさ」として演出したのがマイルスで、スタイルからの逸脱を徹底的に追求しすぎて燃え尽きたのがエリック・ドルフィーでありコルトレーンであり、誰の真似でもなく、逸脱したいという欲求さえなく、スタイルなどという発想も持たない「そのまんま」をただただ表現し続けたオーネットが結果的に一番長生きしたのはとても自然なことだろう。

冒頭のパット・メセニーとのアルバムに戻ると、テクニックとは無縁のオーネットが超絶テクニシャンのメセニーと完璧にコラボしているこの奇跡のような音楽は、わずか2日間ですべての録音が終わったという。

発売当時はCDの容量制限のため全曲が収録できなかったが、この20周年の記念エディションでは冒頭6曲が新たに追加されている。聴くならぜひこの「20thアニバーサリー」をお勧めする。










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2015/9/24 | 投稿者: pdo

9月に入ってから聴いたCD

「アガルタ」マイルス・デイビス
「パンゲア」マイルス・デイビス
「Cool Struttin'」ソニー・クラーク
「Full House」ウェス・モンゴメリー
「ダーク・メイガス」マイルス・デイビス
「New Jazz Conception」ビル・エバンス
「ボギー&ベス」マイルス・デイビス
「Spring」トニー・ウィリアムズ
「ライフ」スライ&ザ・ファミリー・ストーン
「Tone Dialing」オーネット・コールマン
「Alter War In Tokyo」Date Course Pentagon Royal Garden(DCPRG)
「Ace Rocker」ザ・クロマニヨンズ
「教育」東京事変
「Stan Getz Plays」スタン・ゲッツ
「心の詩」スティービー・ワンダー
「スタンド!」スライ&ザ・ファミリー・ストーン
「バードランドの夜 Vol.1」アート・ブレイキー
「Cure Jazz」菊地成孔&UA
「Second Report From Iron Mountain」DCPRG
「ウエスト・コースト・シアトル・ボーイ」ジミ・ヘンドリクス
「ススト」菊地雅章
「花と水」菊地成孔・南博
「Franz Kafka's Amerika」DCPRG
「野生の思考」菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
「Walkin'」マイルス・デイビス・オールスターズ
「Seven」ソフトマシーン
「Giant Steps」ジョン・コルトレーン
「ブリリアント・コーナーズ」セロニアス・モンク
「紫のけむり」クロノス・カルテット

9月に入ってから読んだ本

「マイルス・デイヴィスの真実」小川隆夫
「オーネット・コールマン」ジョン・リトワイラー
「ユングのサウンドトラック」菊地成孔
「エレクトリック・マイルス1972-1975」中山康樹
「アガルタ・パンゲアの真実」中山康樹
「モナドの領域」筒井康隆(途中で挫折)
「雌伏三十年」マキタスポーツ(連載小説)
「アフロ・ディズニー2」菊地成孔
「別冊文藝 マイルス・デイビス」
「プリンス論」西寺郷太
「憂鬱と官能を教えた学校(上)」菊地成孔
「CDは株券ではない」菊地成孔
「考えるヒット1」近田春夫 kindle版
「考えるヒット2」近田春夫 kindle版
「考えるヒット3」近田春夫 kindle版
「聴き飽きない人々」菊地成孔



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2015/9/17 | 投稿者: pdo

新潮新書からの西寺郷太による新書『プリンス論』。

早速買った。

ある時期までは、プリンスに対する思い入れは誰にも負けない自負があったが、90年代後半以降は正直そんなに真面目に聴いていない。

いつの間にか聴いていないアルバムの方が多くなりつつある。

というわけで、特に90年代後半以降のプリンスについての動向をこの本で勉強しようと思う。

感想はまた後日。
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タグ: 西寺郷太

2015/9/4 | 投稿者: pdo

 「なぜ日本のロック音楽には、今までただのひとつも、ランキングされたオールタイム・ベストの名盤リストがないのだろうか?」という疑問から、本書『日本のロック名盤ベスト100』を執筆したというのは、作家として活躍する川崎大助さん。

 本書では、日本のロック名盤アルバム1位から100位までのランキング、そのそれぞれについてのレビューとともに、現在にいたるまで日本のロックが歩んできた歴史についても総覧していきます。

 川崎さんによるランキングの基準は、「ある種の音楽的一徹さ、研究熱心さ」「オリジナリティ」「革新性」「大衆性」「影響度」の5つ。

 なかでも最も重要視したというのは、影響度。同時代的に、あるいは後進に、どれほどの影響を肯定的な意味で与えることができたか、ファンやミュージシャンへの影響のみならず、社会的・文化風俗的に、その一枚が与えた影響を考慮したといいます。

 こうした指標に基づきランキングされた作品の数々。10位までを少し眺めてみると、1位から順に、


1 はっぴいえんど『風街ろまん』(71年)、
2 RCサクセション『ラプソディー』(80年)、
3 ザ・ブルーハーツ『ザ・ブルーハーツ』(87年)、
4 イエロー・マジック・オーケストラ『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』」(79年)、
5 矢沢永吉『ゴールドラッシュ』(78年)、
6 喜納昌吉&チャンプルーズ『喜納昌吉&チャンプルーズ』(77年)、
7 大滝詠一『ロング・バケイション』(81年)、
8 フィッシュマンズ『空中キャンプ』(96年)、
9 サディスティック・ミカ・バンド『黒船』(74年)、
10 コーネリアス『FANTASMA』(97年)。


BOOKSTAND 9月3日(木)7時30分配信



僕も僕なりに日本のロックベスト10を考えてみたので発表する。

ランキングの基準は「主観」のみ。自分が心を動かされ、影響を受けたもの。

まったくの主観で選んでいるにもかかわらず割とオーソドックスな作品ばかりになったのは、自分の資質が所詮ミーハー的であることを示している。

1 エレファントカシマシ『THE ELEPHANT KASHIMASHI』(1988)
2 岡村靖幸『家庭教師』(1990)
3 RCサクセション『シングルマン』(1976)
4 小沢健二『LIFE』(1994)
5 小沢健二『犬は吠えるがキャラバンは進む』(1993)
6 山下達郎『IT'S A POPPIN' TIME』(1978)
7 川村結花『Lush Life』(1999)
8 椎名林檎『無罪モラトリアム』(1999)
9 宇多田ヒカル『First Love』(1999)
10 Yes, Mama OK?『Modern Living』(1996)

1位がダントツ。5位までと、6位からの間には、天と地ほどの開きがある。



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2015/9/2 | 投稿者: pdo


 お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光が2日未明放送のTBSラジオ「爆笑問題カーボーイ」で、東京五輪エンブレムなどパクリ疑惑が噴出したデザイナー・佐野研二郎氏を“擁護”した。
 番組のオープニングで太田は「佐野研二郎の友達のパク・リンタロウです」といきなりパンチを見舞った。
 だが、ここから佐野氏をフォローする。
 「5年くらいすれば忘れるんじゃない? みんな。エンブレムなんかにそれほどこだわってないよ、最初から。イジメられ続けてたら、やってらんないもんね」と佐野氏の気持ちをおもんぱかった。「それこそ企業のロゴとか、いくらでも似てるのはあるんじゃない? どこまでなのかって話だよね」
 ノリノリの太田の話は“周辺”にも及ぶ。
 「『僕が考えたコレです』ってネットにアップするヤツがいっぱい、いるっつうんだけどさ。なんでああいうことすんのかね。イヤなことするなぁ」と語ると、相方の田中裕二が「人が弱ってるところにね。それは逆にすげえ優位な立場でさ」と賛同。




Mr.Copycat こと佐野研二郎氏を何とかして擁護できないものかと面白半分に考えてみる。

上に挙げた太田の擁護の仕方は能天気すぎる。

この人の著書に、

『今すぐ始める 思考のダイエット』

『7日でできる思考のダイエット』

というのがあって、これらの本自体が、

小池龍之介著 『考えない練習』

のパクリではないかと思うのだが、こういう<自己啓発本>のジャンルにおいては、パクリや剽窃一歩手前の書籍やセミナーが乱立しているため、そんなに問題視はされてこなかったように思う。

<商業デザイン>のジャンルにおいても似たり寄ったりの状況が存在したということか。

小池氏の、日常生活においては思考がストレスを産むのだから、なるべく頭を休ませて「考えない」ようにした方がいいというメッセージは分かるような気がするのだが、

佐野氏のように、創造性と想像力が必要なアートというジャンルにおいて、「思考をダイエットする」というのは必ずしも適切ではないように思われる。

むしろ徹底的に考え抜いて、苦しんだ挙句に真の創造性が生まれるのではないか。

図らずも、今回の騒動は、創造性が必要な分野で「思考をダイエット」するとどういう道を辿るかの見本になってしまったように思う。

いかんいかん、擁護しないといかんのに。

ところで、彼が12月に出版する予定の

『伝わらなければデザインじゃない』

という本は、デザインを一般国民に伝えることに失敗した彼のエンブレムを、彼自身が身をもって示した反面教師としてフィーチャーしたものになるのだろうか。

佐野氏自身が9月1日に公開した声明によれば、彼がエンブレムを取り下げた理由は「パクリ(剽窃)を行ったこと」にあるのではなく、「一般国民に伝わらなかったこと」にあるのだから。
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