新しく小説始めます。更新が不安定ですが、是非読んでみてください。未熟ですが、感想なんかいただけると嬉しいです
「竜のわすれもの。」
〜prologue〜
早朝、目覚ましよりも早く目が覚めカーテンの隙間から差し込む光に目を細めた。
今日は日曜日。一応全国的に休日だ。
でも私は何かをやらないといけない気がして、とりあえずカーテンを開け窓を開け放した。
夏の終わりの空気は、早朝のせいもあるだろうけど少し肌寒いと同時に、寂寥の想いを含んだ、胸を弾ませるような、そんな未来への軌跡を描いている気がする。
雀たちの囀りと共に、少し汗ばんだ身体には寒すぎる風が部屋の中へ入ってきた。
「うわーさむー」
早起き鳥は暖を得る、という昔の人の格言を疑いながら私は急いで窓を閉めた。そういえばあいつも同じこと言ってたっけ。
再びベッドに戻り、二度寝しないように目をパッチリと開けそんなことを考えた。
「早起きすれば何かいいことが起こりそうな気がしない?」
彼女はいつもそういって、寝起きの私の寝ぼけ顔に向かって神様みたいな笑顔で囁いた。
まあ実際に神様なんだけど。
彼女の顔を思い浮かべようと目を閉じた。
そこには幼い容姿のわりに増せたことを言う女の子の姿があった。
よかった。ちゃんと目蓋の裏にくっついてる。
よし、と気合を入れベッドから跳ね起きる。着替えを済ませ階下へ行く途中、寝ぼけ顔の弟とすれ違った。
「あれ・・・?お姉ちゃん、早いね・・・」
とろん、とした目で私を見上げる弟の髪の毛をくしゃっと撫で、おはよう、と言ってからそのまま玄関へ向かう。
なぜそんなに急いでいるのか、自分でもよくわからないまま靴を履く。
すると、何処からともなく母がひょっこり顔を出した。
「ちょっと出てくるね」
「はいはいー。お土産よろしくね」
朝っぱらから冗談を言う元気、というか寝起き力を持つ母に感心しつつ、ドアを開ける。
読み終わった後の無力感が嫌で、私は推理小説はあまり読まないけど、母は好きだ。
大学の先生が言うには、推理小説は、未来へ無限の拡がりをみせるSFと違って、過去へ遡ることがやるせない喪失感を生むんだって。よくわかんないけど。
それと関係あってかなくてか、母は時たま憂鬱な表情をすることがある。私は、そんな母の回復した姿を見るのが秘かに好きだ。
そのギャップに人間としての愛おしさを感じているのかもしれない。
ひとつ得したな。
「いってきます」
笑顔のまま振り向かないで、開いたドアから元気に飛び出した。
見上げると晩夏の空があった。
秋の匂いのする、少し冷たくて涼しい風が頬に触れてゆく。