2014/7/30  12:35

第37回性教育指導セミナーに参加してきました!  女性の健康

7月26日(土)は、外来を臨時休診にさせていただき、
滋賀県大津市で行われた第37回日本産婦人科医会性教育指導セミナーに参加してきました。
(26日は県民公開講座、27日がセミナー)

性教育指導セミナーとの出会いは、まだ国立米子病院に勤務していた2003年に、産婦人科医行う性教育の模擬講義を行うという企画があり、無謀にも応募したところ、一番若かったためか当選し、高校生対象の講義を担当させていただいたのが始まり。
・・・世を忍ぶ、仮の苗字で出ていますね・・・(笑)。

その後も、鳥取県内の中学・高校で性教育講演をさせていただいていたんですが、
2004年10月に東京に来てからはなかなか学校性教育とご縁がなくなり、大人対象のスポーツ医学や更年期、月経トラブル対処などばかりになって、少し残念に思っていました。
で、2005年の博多でのセミナーに出席して以来、しばらくご無沙汰しておりました。

昨年、避妊教育ネットワークに加入させていただき、ここ何年かは前日の県民公開講座でそのメンバーがロールプレイ(寸劇)を披露しているということを知り、是非公開講座から出席したいと休診にして出かけた次第です。

今回のメインテーマは、
「妊娠の適齢期はあるのだろうか?
 その為の性教育はどうしたらいいのだろうか?」

県民公開講座では、日本産婦人科学会の特命理事であり、女性クリニックWe!TOYAMAの院長 種部恭子先生から「女性のライフプラン〜男女とも妊活は思春期から〜」のテーマで、いつもながらわかりやすく熱く温かい「種部節」を聴かせていただき、すごく明るく前向きな気持ちになった後、ネットワークメンバーのロールプレイ。
若年妊娠・高年妊娠、それぞれの問題点を寸劇でメンバー有志が演じました。
まぁ、この先生方の芸達者なこと!
脚本は長野市丸山産婦人科の渡邉智子先生が書かれたものですが、それがメーリングリストで回ってきて、配役は立候補で決まり、4月の勉強会の時にちょっと読み合わせをして、後は当日、数時間の練習で、ここまでの出来!
最後に、メンバーみんなで「恋チュン」の替え歌「夢見る・フォーチュンベイビー」を踊りました。私も舞台の端っこで踊らせてもらいましたよ!
(前日、汗だくになって練習して行きましたが、昨年末のようにふくらはぎが痛くなることはなかったです(笑))
夜の懇親会も琵琶湖クルーズで盛り上がりました!

そして、7月27日(日)セミナー本番。
産婦人科医だけでなく、性教育に関わる看護師、助産師、養護教諭なども対象になるもので、参加者300人程度の小じんまりとした会なので、いくつもの会場で並行して講義が行われることがなく、みんなが一つの会場で同じ講義を聴ける、というのがとてもよいと思いました。
さて、内容ですが、
大会会長でもある、滋賀医大地域周産期医療学教授の高橋健太郎先生による教育講演1
「思春期からのHPV感染と子宮頸がんの予防〜大切な子宮をなくさないために〜」
子宮頸がんとHPV感染、ワクチンと検診について分かりやすく解説がありました。

同じく滋賀医科大学の産科学婦人科学教授である村上節先生の特別講演
「日本の生殖医療の現状」妊娠の適齢期〜生殖医療と周産期医療の視点から〜
今回のテーマを産婦人科医が学問として冷静に語るとこうなる、というデータを示していただきました。やはり年齢に伴う卵子の質の低下は避けられないし、高齢妊娠では周産期のリスクもかなり高くなること、しかしこの10年余りで急激に出産年齢が上昇していること、数字で示していただき、納得。逆に10代の若すぎる妊娠のリスクもあり、
「産婦人科医として言える『適齢期』はやはり20代後半、遅くても30代前半まで」
というのに納得!でした。
「代理出産」や「卵子提供」による妊娠も示され、医学の進歩で、望めば「妊娠」は可能になっていることも。もちろん倫理上の問題や様々なリスクがあることを度外視すれば、ですけどね。

ランチョンセミナーは、飯田橋レディースクリニックの岡野浩哉先生の教育講演
「女性ホルモン製剤(OC/LEP)と血栓症」
岡野先生にはいつも本当にいろいろなことを教えていただいており、この半年、私の血栓症に関する知識の半分以上は岡野先生から教えていただいたことではないか?と思えるくらいですが、何度伺ってもわかりやすくためになるお話でした。
日本中の産婦人科医だけでなく、医師みんながこの知識を持っていると、低用量ピルに対する誤解や過剰な恐れがなくなるのにな〜と、いつも思います。

そして午後のシンポジウム。
「妊娠適齢期の現在・未来」
〜妊娠適齢期を踏まえた性教育を子供たちにどのように指導していくかを考える〜
これは本当におもしろくためになりました。
様々な立場(産婦人科女性医師、精神科医、宗教学者、保健・行政担当者、教育者、保育室に子供を預けるお母さん、子育て男性)からの意見が述べられたわけですが、特にこれまでなかなか聞けなかった宗教学的見地と、子育て男性の立場から。
宗教の話は、改めて書かせてもらいますが、
子育て男性(いわゆる「育メン」)の立場からの話をされた「NPO法人ファザーリングジャパン」の事務局長、眼科勤務医を妻に持つ3人の子のパパ、徳倉康之さんのお話は本当に面白かったです。
やっぱり、「女性の活用」なんていう前に、これまでの日本は男性の働き方にも問題があるわけで。
男女ともに家庭科が必修科目になったのは中学校が1993年、高校が1994年→その時の学生さんたちが2012年には31〜35歳になっており、彼らが今どきの子育て世代になっていると。
家庭科を習って家のことをするのは当然になっている世代に、そうじゃない世代が会社に押し込めることはあってはならないんじゃないかなぁ〜と。
不妊に悩む患者さんの多くから、「旦那さんが出張で不在」とか「帰宅が遅くて疲れててそれどころじゃない」なんていつも聴かされているのもあって、やっぱり男性の働き方改善が大きな鍵を握っていると実感。
男女ともワークライフバランスがとれてこその少子化対策!と本当に心から思いました。

来年のセミナーは広島で開催されます!
今からとても楽しみです。
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2014/4/4  22:00

平成26年度 中央区の風疹対策  女性の健康

本当に久しぶりの更新です。
年が変わり、年度が変わり、桜が咲いて、なんと散り始めています・・・。
ご無沙汰して申し訳ありません!!

さて。今週月曜日、3月31日、夜桜がきれいな聖路加看護大学前の中央区保健所に、新年度の中央区予防接種説明会に出かけてきました。

今年度のポイントは、
・基本的には「多くの方に抗体検査をまず受けていただく」(無料)
・抗体検査の対象者は、19歳以上の妊娠を希望している女性または抗体が低い妊婦さんと「同居している人」
・抗体検査で低値だった人にはワクチン接種を無料で行う

というところです。

詳しくは、中央区HPをご覧ください。

昨年まで「19歳以上の妊娠を希望する女性と、妊婦さんのパートナー」でしたから、
かなり対象が広がっていますよね!!
この機会に、ぜひ、まずは風疹抗体検査をお受けください。

抗体価が低いと確認された場合、原則的には同じ医療機関でワクチン接種を無料でお受けいただけます。その際、基本はMR(風疹・麻疹混合)ワクチンが推奨されています。
さすが、中央区!太っ腹です。

ご希望の方は、上記HPからダウンロードできる申請書を記入し、中央区保健所、日本橋・月島保健センターで「風しん抗体検査及び予防接種予診票兼助成金申請委任状」の交付をお受けのうえ、ご予約ください。

当院は、完全予約制の女性専用クリニックですので、基本的には女性の方のみを対象とさせていただきますが、当院かかりつけの方の「同居の男性」については時間帯によっては対応できる場合もありますのでご相談ください。
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2013/12/18  0:38

血栓症を早期発見できた実例  女性の健康

さて。前のエントリーで、血栓症は早期発見が大切!と書きました。

前触れ症状による早期発見で事なきを得た実例を紹介させていただきますね。

それ、実は私なんです・・・!!

このブログも含め、いろんなところで、子宮内膜症、腺筋症+筋腫の術後、月経痛、PMS、プレ更年期の体調不良・・・などなどで、1999年日本で低用量ピルが認可されて以降、妊娠を望んでいない時にはピル内服を継続してきたことを公表してきた私。
最近は、2010年に妊娠をあきらめ、四季レディースクリニックを開院した直後からヤーズを開始してとっても体調がよくなったこと、このブログでも書いていますね
私の場合、休薬中には激しい頭痛が来て仕事に支障が出るので、昨年10月からは、休薬なくず〜っと連続して内服し、とても調子がよかったのです。
このままトラブルがなければ50歳(閉経するであろう平均年齢)くらいまでずっと続けるつもりでいました。

ところが。
11月中旬にすごく体調が悪くなりました。
朝、出勤時に走ったりすると息切れがするし、すごく疲れやすい。
11月はじめに大きな仕事を抱えてて、終わってホッとしていたときだったので、疲れと運動不足のせいだろうと気にも留めずにいたのです。
すると、11月20日ころのある朝。起きたらなんだか左ふくらはぎが痛い。
攣った?筋肉痛?何だろうな〜と思いましたが、
前日に、YouTubeみながら「恋するフォーチュンクッキー」の振りを覚えようと踊っていたせい?(爆)なんて、思っていたのです。
いや、でも、ロングブーツが左だけファスナー上げにくいのは気持ち悪いな〜と思っていました。

数日で、足の痛みも治まってきたのですが、
まあ、でも、なんか気持ち悪いし、1年半前に人間ドック受けて以降、血液検査も受けていなかったし、採血でもしとこうかな〜?と自分のクリニックで採血受けてみたんです。
 ・貧血;全然なし(ヘモグロビン13.8って!!)
 ・肝機能、腎機能、コレステロールなど;見事に問題なし!
まさか、と思って調べた血栓症の有無を鋭敏に調べるD-dimerという項目だけ異常値。3.9と、結構高い値だったのです!!

まさに、「じぇじぇじぇっ!!」ですよ。
家族に血栓症の人なんて全くいないし、自分自身もまあ、もう43歳で、ちょっと肥満はあるけど、まさか!

慌てて、泣く泣く、ヤーズを中止。
できれば早く静脈血栓の有無を調べてもらいに血管外科の医療機関を必死でネットで調べるのですが、受診できる時間に診療を受けられるところはなかなか見つからず。
(もちろん、自分の患者さんで、緊急の症状があれば、仕事休んででも行っていただくのですが。)
自分の診療はなかなか閉められないし、閉めるほどの強い症状はないし、土日や夜間に救急外来を受診するような症状でもないし。

中止後1週間でもD-dimerを再検し、下がっていたら受診はいらないかな?と淡い期待を抱いていたら、3.5とまだ高い値だったので、こりゃ〜やっぱりエコーしてもらわなきゃ、と。

さらにネットで調べてみたら、夜20時まで外来をしていらっしゃる血管外科の先生のクリニックを発見し、昨日、診療終了後に受診してきました。
幸い、下肢静脈エコーでは血栓らしきものは認められませんでした。

おそらく、11月中旬にどこかで小さな血栓を発症はしたのだと思います。
ただ、前触れで気づき、ピルを中止して経過を見るうちに、自然にその血栓を溶かすことができたのでしょう。

いやぁ、冷や冷やしましたが、よかったです。

ただ、ヤーズを中止した直後は、久しぶりの月経痛に泣き、
月経(消退出血)の後、数日は、エストロゲンの低下のせいか、
すごく体調が悪く、気分が落ち込み、
その後体調が回復したと思ったら、今度は結構な排卵痛が3日ほど続き・・・。
それが収まった今、これからきっとPMSが来て、また月経痛が来るんだろうなぁ〜と、考えるだけでブルーです。

ピルにはエストロゲンが入っているので、血栓リスクがありますが、
黄体ホルモンには血栓を起こすリスクがないので、黄体ホルモン療法に切り替えるしかない!
で、ミレーナを入れたいな〜と、エコーをしたら、
子宮の突き当りに内膜に接する3pの筋腫が・・・はぁ、ミレーナ適応外(号泣)。
(昨年、検診していただいたときには2pで、内膜とは離れているように見えたのにな・・・)
次に月経が来たら、ディナゲストを使うしかないですね〜。

ピルは1か月分の医療費が2000円前後で済みますが、
ディナゲストになると、保険診療(3割負担)でも8000円ほどかかりますので、
できればピルを続けたかったな〜というのは、貧乏開業医のつぶやき。
でも、手術以外に抑えられる方法の選択肢があるのは、ありがたいですよね。
(ホントは、妊娠の予定がないので、子宮摘出でもいいんですけど。
 その方が、今後の月経のトラブルも避けられ、
 子宮がん(頚がん・体がん)には絶対ならなくなるし。
 でも、手術のために休診にするのが難しいので。)

こうして、婦人科の様々なトラブルを乗り越えてきた私、
また「経験値(芸の肥やし、ともいう)」がアップしたのでした(苦笑)。

こんな感じで、早く見つければ大事には至りませんので、
ピル内服中のみなさん、「これって大丈夫?」と気になる症状があれば、
まずはお早めに主治医にご相談をお願いします。
私のように、まず、血液検査でD-dimerなどの凝固系の検査を行って、異常値が出るなら中止をおすすめします。
もちろん、呼吸困難とか、今まで感じたことのないような頭痛とか、緊急の症状があるときには、救急での受診が必要です!
その際は必ず「ピルを飲んでいるので、血栓が心配」とお話しくださいね。
(お受けいただく血管外科、脳外科などの先生方、どうぞよろしくお願いします)


【おまけ】
11月以降、外来を受診されているヤーズ内服中+40代のOC内服中の患者さんには、再度血栓への注意喚起をしているのですが、実例として私の例を上げ、ヤーズを中止して事なきを得たことをお話しする場合もありました。
それを聞いた一人の患者さん。
「先生も、生理痛強かったんですよね!自分も先生に勧めてもらってホントに楽になって、止めるなんて考えられない!先生、大丈夫ですか?生理痛、大変になるんじゃないんですか?」
って、すごく心配してくださった方が・・・。
ホントにありがとうございます!
上に書いたように、次の手を考えていますので大丈夫ですよ〜ってお伝えしたら、安心してくださいましたが。
(ただ、高価なのがちょっと、、、って話したら、笑ってらっしゃいましたけど。)
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2013/12/17  22:27

血栓症のサイン、見逃さないで!〜低用量ピルを安心して内服していただくために〜  女性の健康

今朝のYahooニュースで、このような見出しが躍りました。
「ピルの副作用、血栓に注意を 5年で11人死亡例」

今年に入り、このブログでも取り上げてきた「超低用量ピル・ヤーズ」で2例の死亡例が報告されたことを受け、11月には、産婦人科学会からもこのような緊急の注意喚起が出されていました。

低用量ピル(低用量経口避妊薬(LOC)/低用量エストロゲン・プロゲスチン合剤(LEP))は、確実な避妊のほか、月経痛の軽減、経血量の減少、月経周期の調整など、女性のQOL(生活の質)を向上させる薬剤です。
私は、女性の心身の健康を守る産婦人科医として、この薬を積極的に処方してきましたし、自分自身もこれまで愛用してきたことは、このブログでもこれまで書いてきたとおりです。

ただ、低用量ピルに対する社会の偏見や誤解は非常に大きいため、
当院では処方の前に必ず、
・ 月経周期の成り立ち
・ ピルの成分と作用、副作用
について時間を取って説明し、処方禁忌に該当しないことを確認し、
メリットとデメリットを納得していただいて内服開始することをお勧めしてきました。
その際に説明している内容を、ここにまとめておきます。

デメリット=副作用として、多くの方が心配される「がん」や「嘔気」「体重増加」などはあまり問題になりません。(乳がんリスクは不変、子宮体がん、卵巣がんはむしろ5〜6割に減少)
ただ、唯一、「命に係わる問題」になるのは「血栓症」です。

血液の中では、常に
「固まって出血を止めようとする働き(凝固)」と、
「固まろうという血液を溶かそうとする働き(線溶)」
のバランスが絶妙に保たれているのですが、
例えば、血管に傷が付く、破れるなどの問題が起これば、即座に血液を固めてその穴を塞ぎ、出血を止めようと準備しています。

女性は月経中や妊娠・出産で急な出血に見舞われることが多いわけで、
女性ホルモンの代表「エストロゲン」には、血液を固めようとする働きがあるのです。
これは、月経中や妊娠中、「出血を止めよう」とする働きを高めておくという意味で、
大変理にかなった役割ですね。

低用量ピルは、このエストロゲン(正確にはエチニルエストラジオール)を含むため、内服すれば、しない場合と比べ、血栓を起こしてしまうリスクが上昇することは間違いありません。
冒頭の記事にもあった通り、
通常の状態でも血栓症は10万人あたり年間5名程度の発症があるのですが、
ピルを内服すると、そのリスクを3〜5倍程度に上昇させてしまいます。
しかし、妊娠中や産褥にはさらにリスクが上昇します。
(こちらの慶応大吉村先生のHPに、リスクの対比が載っています。)

と、考えると、「あなたは血栓が怖いから、妊娠してはいけません」と言われることはないわけで、起こらない可能性の高い血栓症のリスクを恐れて、低用量ピルのメリットを得られないとしたら、これは非常にもったいないことです。

現時点では残念ながら、血栓症を起こす人、起こさない人を内服前に確実に判断できる方法はありません。
大切なのは、
1)リスクのある方は内服を避けること(得られるメリットよりデメリットが大きい場合)
(「低用量経口避妊薬(OC)の使用に関するガイドライン」参照)
2)血栓にならないよう気を付けること(ピル内服していない人も必要です)
(長時間同じ姿勢を取らない、脱水にならないようにする、長距離移動するときにはひざ下の弾性ストッキングを利用し、こまめに席を立つようにする、など。)
3)血栓の初期症状を見逃さないこと
この3点に尽きるのではないかと思います。

特に、内服している方にとって大切なのは3です。
血栓の「前触れ症状」で気づき、対応すれば、命にかかわるような状態は避けられます。
【気を付けたい血栓の前触れ症状】
・下肢(ふくらはぎ)の痛み;特に片側(左>右が多い)、同部を握ると痛みが増す
・胸(乳房ではなく)の痛み、息苦しい感じ
・激しい頭痛、前触れ(まぶしい感じなど)の後に痛む
・視界、視野の異常、目のかすみ
・片側の痺れ、ろれつが回らない、長く続く腹痛


疑わしい症状があれば、まずは処方を受けた医師にご相談いただきたいですし、
万一、激しい症状であれば救急医療機関を受診して
ピル内服中であることを伝えたうえで、血栓の可能性について適切な検査、治療を受けていただく必要があります。

次のエントリーで、血栓を早く見つけて対処できた実例を挙げますね。


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2013/12/1  21:21

荻野吟子先生との再会  女性の健康

あっという間に12月ですね。かな〜り、久しぶりの、まともな更新です。
この12月でこのブログも開設まる9年、年末からは10年目に入ります!
こうして思いついたところで更新していきますので、ぼちぼちお付き合いください。

さて、今日のお話は・・・日本の「公認」女性医師第1号、荻野吟子先生の話。
先週、NHKの「歴史秘話ヒストリア」で取り上げられたので、ご覧になった方もいらっしゃったかと思います。

私が荻野吟子先生のことを知ったのは、医学部進学を目指し、日々、追い詰められていた(?)高校生の時。高校の図書館で渡辺淳一作の「花埋み」(荻野吟子の生涯を追った伝記小説)を読んで、でした。

嘉永4年(1851年)生まれの彼女は、武蔵国俵瀬村(現在の熊谷市)の旧家の娘として生まれ、幼少期から賢く男兄弟と一緒に学問も修めつつ育ちます。
18歳で近くの町の大名主の家に嫁ぎますが、夫から淋病をうつされ、子供を産めない体になり、離婚。
その治療のため東京に出てきて、初めて西洋医学的治療を受けるわけですが、その時に男性医師から内診を受けることに苦痛を感じ、医師になることを志します。
しかし、当時は医師になることは狭き門だったうえ、女性にはその道は開かれていませんでした。前例がないから、女に医師なんかなれるわけがない、女性は体力がないから、妊娠・出産の間は仕事ができないから・・・などの理不尽な理由で。
彼女は制度改革に奔走し、ようやく受験を許され、1885年に医術開業試験に合格し、東京・本郷湯島三組町に荻野医院を開業し、多くの女性たちの診療に当たりました。

・・・そんな話は、もちろん高校の時、そして大学の時にも何度も「花埋み」を読んで知っていたのですが、そういえば医師になってから読み返したことはありませんでした。
熊谷出身、ということも、そういえば忘れていました。

今回、ヒストリアで久しぶりに彼女の話に触れ、女性医師としてもう一度彼女の人生を見直してみたいと思いました。本はおそらくクローゼットの中の段ボールの奥に入っていて、すぐに出せそうになかったので、久しぶりに予定のない日曜日の今日、熊谷市立荻野吟子記念館をふらっと訪れてみました。

熊谷と行田の間の、田園地帯の奥、利根川の土手縁に記念館はありました。

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残念ながら内部は撮影禁止でしたが、
室内の壁3面に彼女の一生が年表で示されていました。

名主の娘として不自由なく育ち、大名主の家に嫁ぐときには、娘なりの夢を抱いていたこと。
性感染症をうつされ、子供を産めなくなって離婚し実家に帰り、闘病。
その中で医師になることを志し、学問を修める大変さに加えての、女性であることへの偏見との苦闘。
医師となってからは、女性の苦しみと向かいあう中で苦悶し、女性教育の大切さに目覚める必然。
そして、13歳年下の宣教師と恋におち、北海道へ理想郷を作るために一緒に渡ります。
子供を産めないことに引け目を感じ、養女をもらい、育てるとともに、
女性教育に力を注いていましたが、
夫に先立たれて東京に戻り、医院を開業。
1913年(大正2年)、63歳で没。

もう一度、医師という「同業者」になってから彼女の人生をなぞってみると、
高校生の時、大学生の時に読んだのとまったく違う感慨がありました。

彼女の苦闘、苦悩の足元にも及ばないし、比較するのもおこがましいのですが、
もし、彼女の人生を知らずに医師になっていたら、こんなに強くは歩めなかったかもしれないな?迷った時に、敢えて険しい道を選ぶようなことはなかったかも?と思いました。
私は学生の時に彼女の生き方に感動したことに恥じないように、
必死で医師として仕事をしてきたと、胸を張って報告できるかな?
その結果、こうして東京で仕事をさせてもらっているのかもしれないな〜とぼんやり思ったのでした。
きっと、「日々の診療だけじゃなく、教育にも力を入れなければ」という発想も、
大きく影響を受けてたんだろうな〜と。

奇しくも、私が医師になることを志すのに大きな影響を与えた祖母が生まれた年が、
彼女が夫と死別して東京に戻った年、明治41年だったようです。
祖母は、男兄弟みんなが医師になる中、自分も医師になることを夢見て、
女学校も優秀な成績で卒業したのに、「女だから」という理由で許されず、江夏の家に嫁いできた人です。
幸い、祖母はそこで夫との仲もよく、子供にも恵まれて一生を終えますが、
末孫の私に「これからは女も職業を持つ時代だ、がんばって医者になりなさい。女でも医者になれる時代に生まれた貴女がうらやましい!」と、ずっと言い続け(もちろん、ブリブリの都城弁で(笑))、私が医学部に入学した年の12月に亡くなりました。

そういえば、私の祖母より5歳くらい年上の天才詩人、金子みすずさんも、離婚の原因に夫から淋病をうつされたことも入っていましたね。

こうした女性たちのつらい歴史から目を背けず、
当たり前が当たり前じゃなかった時代が長かったことを考え、
現在私たちが与えられていることの大切さを見つめ、先人たちの苦労に感謝することは
やっぱり大切なんじゃないか?と。

ヒストリアで紹介されていた、彼女が書いた手紙の一部。(現代語訳)

男尊女卑の風潮は
婦人が職を持たないで経済的に自立せず
そこに安住していることに原因があるのではないでしょうか
もし自分たちの本当の力を知ったなら
女性も自らの価値を
悟ることができるはずです

私より120年前を生きていた荻野吟子さん。
私も含め、現代を生きる多くの女性たちが、
今でもまだ、同じようなことで毎日思い悩んでいるということを、
どう見つめていらっしゃるのでしょうか?

それから、現在の女性医師事情。
医学部に進学・卒業する女性医師が3〜4割になったというのに、
仕事と結婚、妊娠・出産を普通に両立することに、多くの女性医師が四苦八苦、七転八倒していることを。
私などのように、仕事に邁進してきた結果、子供を産むことができなかった女性医師が、それを自分のなかでなかなか消化できずに苦悶していることを。
そして、資格を取った後、仕事から離れてしまう女性医師が多いことが問題になっているのを。

なんか、申し訳なく思ってしまいますよね。

私だって、10年後、20年後の後輩たちに、「女性だから」っていう気持ちは味わって欲しくはないです。自分が苦労したことは少しでも道を均してから後進に渡したいし。
いろいろな理由で、現場を離れている人たちには、職業として医師を選んだのなら、男女限らず、石に齧りついてでもやっぱり続けて欲しいですよね。どんな形でも構わないから。
その覚悟がないなら、最初から医学部を目指さず、覚悟のある人に道を譲ってほしい・・・。

女性の自立が遅々として進んでいない原因って、やっぱり私たち女性の心にあるものが大きいんじゃ?と私も思ってしまうんですよね。
男性のせいとか、社会のせいとか、教育のせい、とかにしてしまっている限り、
「自立」はできないんだと思います。

さあ、自分にできることはなんなのだろう?しなければいけないことはなんだろう?

と、いろいろと頭に浮かんできました。おいおい形にしていければ、と思います。


なんと、記念館前の「吟子桜」が1本だけ咲いていました!
係りの方に尋ねると、冬に咲く桜なんですって。

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2013/6/12  5:25

シンポジウム「人工妊娠中絶を取り巻く現状」レポート その1  女性の健康

 6月9日(日)、性と健康を考える女性専門家の会が主催する年1回の総会シンポジウム「人工妊娠中絶を取り巻く現状」が開催されました。
 もともとこの会は、1997年(私が医者になって2年目のピヨピヨの時ですね)に、女性医療に関わる先輩たちが、低用量ピルの認可を求めて立ち上げた会。(そして1999年に日本でも低用量ピルが使えるようになったのは、ご存じのとおり)
 私は2004年に東京に出てきてから参加させていただき、昨年からなぜか(?)副会長の大役を仰せつかっております。
 今年のシンポジウムは、ついにここに切り込みました。
古くて新しい問題「人工妊娠中絶」。
いや〜、ピル解禁の遅れもすごかったけど、ここにもありました、日本のガラパゴス化。

今回のプログラムはこの通り
1. 人工妊娠中絶をめぐる議論の検討  
    明治学院大学 社会学部教授  柘植あづみ先生
2.女性の人権と選択−中絶技術の観点から
    金沢大学 非常勤講師 塚原久美先生
3.避妊・人工妊娠中絶の最新情報
  ・日本のOCについて
     対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 対馬ルリ子先生
  ・経口妊娠中絶薬の動向  
     米国アクアイナス大学 松本佳代子先生

改めて気づいたことたくさんで、長いレポートになってしまいます。
何回かに分けて書かせてもらいますね。

1. 人工妊娠中絶をめぐる議論の検討
ここでは、まず、人工妊娠中絶の法律的・社会学的な背景についての話がありました。
人工妊娠中絶(=堕胎)は、日本でも法律で禁じられています(堕胎罪)。
ただし、母体保護法で定められた一定の条件を満たした場合のみ、認められることになっています。
古来から、国家は人口の量・質を管理するために生殖に介入してきました。
終戦後の近代日本では、まず1948年に「優性保護法」が制定されました。
その名の通り、「優性上の見地から、不良な子孫の出生防止と母性の生命・健康の保護を目的とする法律です。
「優性」というのがまさに「質の管理」ですよね。
さらに、戦前の「産めよ増やせよ政策」から、終戦後のベビーブームで爆発的に子供が増えたことを受けての「量の管理」として、「経済的条項」が1950年に追加されています。
この優性保護法の「気持ち悪さ」は、全文を読めば感じていただけると思いますが、第1章第1条が「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」・・・「不良な子孫」って。
で、実際に1966年から兵庫県では「不幸な子どもが生まれない対策室」っていうのができたり、1964年の朝日新聞がからだの不自由な子どもや親のない子どもたちのための団体の大会を報じた記事の見出しが「不幸な子どもらの危機を訴える」ですって。
こんなのが当然だった時代に生まれたのか?とぞっとしました。
(まあ、だから今でも「優性思想」が抜けない方々がたくさん残っているのも、納得できるというか。非常に残念ですけど。)

そんな長い時代を経て、「優生保護法」が「母体保護法」に改正されたのは、1996(平成8)年。
ちょうど私が医師になった年です。
母体保護法についてはこちら
この第1章第1条は、
この法律は不妊手術および人工妊娠中絶に関する事項を定めることにより、母性の生命健康を保護することを目的とする。
とされ、「優性思想」が排除されたのです。
ですから、最近話題になっている「新型出生前診断」で、「胎児の異常がわかったら人工妊娠中絶を選択する人が増えるのでは?という懸念がありますが、胎児の異常を理由にした人工妊娠中絶は認められない、ということになっているのです。
しかし、実際には「妊娠の継続または分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」という事由に当てはめて中絶を選択することも多くみられるんですよね・・・。

では、アメリカでの人工妊娠中絶はどのような位置づけになっているのでしょうか?
恥ずかしながら、「宗教上、中絶が認められないんじゃない?」くらいの漠然とした知識しかありませんでしたが、国家としては1973年のRoe vs.Wade裁判に対する連邦最高裁判所の判決により、すべての州において、妊娠初期の人工妊娠中絶と妊娠中期も条件付きで合法化されているそうです。
そもそも、妊娠初期の胎児は、母体外での生存可能性が低いので、母体に妊娠継続の意思がなければ生存できない=女性のプライバシー権が胎児の権利に勝るという考え方らしいです。
よって、日本のように「中絶の理由」は問われず、「妊娠期間(週数)によってのみ制限される、というのです。知らなかった〜。
ちなみに、柘植先生によると、iPS細胞が作られる前に万能細胞として注目されていたES細胞は、受精卵が実験材料となるため、日本では「受精卵の権利」が問題になる一方、アメリカではそのあたりをほとんど気にしていないというのが象徴的だったとか。
いや〜、お国変われば、ですね。日本で広く行われている「水子供養」なんて、そもそもそんな概念がないんですよね。
どっちがいいとか、悪いとかではない問題ですが、
私は、今、生きている人間が生きづらい、苦しい思いをしないこと、が最優先なんじゃないか?と考えます。
それは、日本人の伝統を否定するわけではなく。
だから私は、患者さんが人工妊娠中絶を選択される際、いつも話をしています。
「赤ちゃんは、お母さんが幸せであることがきっと一番うれしいのだから、
 お母さんの選択をきっと子供は恨んだりしないと思いますよ。
 お母さんが幸せになるための選択なのですから。
 もし、今回のことをつらいと思うのであれば、
 もう2度と同じことを繰り返さようにしなきゃいけないですよね。」

ということで、柘植先生の講義では、人工妊娠中絶=「悪」と条件反射的に語れるものではないことが、まず確認されました。   

(続きます・・・が、いつ書く、とは明言できません。気長にお待ちください)
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2012/8/19  7:33

願望をすべてかなえるのが医療ではない。  女性の健康

おはようございます。日曜日の朝、早めに目が覚めたら、クリニックのメールに問い合わせが。
当院では、メールによる医療相談はお受けしない方針なので、
(このブログのトップにも書いているように、
 プロに意見を聞くのに無料でメールや電話で済ませようというのは
 筋が違っていると考えます。
 医療に関わる相談はとにかく受診してするものであると考えます)

その考え方から、個々に返信するのは、私の中では「ルール違反」なのですが、
あまりにもこのような問い合わせが多いので、
当院での医療の考え方について書いておこうと思いました。

当院はもちろん、医療が必要な人には適切な医療を提供します。
しかし、どんなに医療が発展しても、
「人の願望をすべてかなえることはできない」と考えています。
ですから当院は、
「無いものねだりを止めて、自分自身のあるがままを受け入れるお手伝いをする」
ためのクリニックでありたいと思っています。

よくある、「医療の限界」と思われる相談内容を例示すると、
1)40代半ばになって、月経も不順になりつつあるけれど、これから妊娠したい
→これが、医学的に無理なことは、これまでも書いてきたとおりです。
 卵子の数が少なくなり、質が低下した後、
 または閉経後に「自分の子供」を授かる可能性はかなり低いものです。
 それでも「妊娠しよう」と思えば、卵子提供を受けるしか方法はありません。

2)胸が小さいのがコンプレックス 大きくする治療を受けたい。
→これは、ご本人からもありますが、
 お母様が「こんなに小さい胸だとかわいそうだから」と、相談に来られることも多いです。
 悩む気持ちもわからないでもないですが、
 これも個人差のレベルで、「大きければいい」というものではありません。
 ホルモン治療で少しふっくらすることはありますが、
 効果は絶対ではありませんし、副作用だってないわけじゃない。
 保険診療で「乳房を大きくする治療」と認められたものはありません。

そして、今回の相談メール。
3)としましょう。
「娘が小学5年で初潮がきた。まだ身長が150pいかない。
 自分(母親)も身長が低いのがコンプレックスなので、
 なんとかもう少し伸ばしてあげるためにできることはないか?」

確かに、女性ホルモンのエストロゲンには骨端線を閉鎖させる作用があるので、
初潮が来た後は、身長の伸びが緩やかになり、止まることがほとんどです。
ですから、「思春期早発症」(9歳以下で初潮を迎える)で、
そのままだと145p以下(女児)の身長になることが予想される場合は
月経の発来を抑えるホルモン治療の対象となります。
具体的には、性腺刺激ホルモンを抑える薬(GnRHアゴニスト)を投与して、
月経が来ないようにする治療をします。

この方の場合、あくまでも「病的ではない、身長低め」ということで、
一般的には医療の対象にはならない訳です。
私みたいな、「大柄な女」から見ると、小さい人って可愛くってうらやましいけどなあ。

ちなみに、このGnRHアゴニストって、子宮筋腫や子宮内膜症の治療に使われているもので、
使うと月経(女性ホルモン分泌)が止まり、更年期症状の副作用が出るので、
「使いたくない」と言われる方も多いものなんですよね・・・。
(まあ、初潮が来るかこないかの時期に使っても、更年期症状は起こりませんが。)

1)、2)、3)いずれも、
私には「無いものねだり」ではないのか?と思えるのです。

そして、いずれの例にも
「できることはやってみましょう」と治療を試みる医療機関もあります。
1)は今のところ海外に行くしか方法はないかもしれません。
2)は結局のところ、豊胸術に行きつくのかもしれません。
3)は?・・・女性ホルモン以外に身長に関与する要因はなくはないので、
多少は伸ばす方法があるかもしれません。専門医にご相談いただいた方がいいでしょう。
(ちなみに私。高校3年間159.5pでピタッと止まっていた身長が、
 大学1〜2年の間に2p伸びました。受験のストレスも関係していたのかな?)

ただ、私が考えるのは、その先です。
その願望がかなえられた、そのあとは?
・・・きっと、また新しい「ないものねだり」が始まるのではないでしょうか?

人生、思い通りにならないもの。
でも、それを受け入れ、持っているものに感謝して生きていかないと、
どんどん「ないものねだり」のマイナスのスパイラルにはまってしまうのでは?
そうであれば、一時的にその願望をかなえて「ありがとう」と言われても、
医療者の「自己満足」に過ぎないのではないでしょうか?

今後、同じような「思い通りにならないこと」に直面した時に、
「受け入れられる心を持つ」お手伝いをするのも、
医療関係者の仕事ではないかと思うのです。
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