2013/12/18  0:38 | 投稿者: 江夏 亜希子

さて。前のエントリーで、血栓症は早期発見が大切!と書きました。

前触れ症状による早期発見で事なきを得た実例を紹介させていただきますね。

それ、実は私なんです・・・!!

このブログも含め、いろんなところで、子宮内膜症、腺筋症+筋腫の術後、月経痛、PMS、プレ更年期の体調不良・・・などなどで、1999年日本で低用量ピルが認可されて以降、妊娠を望んでいない時にはピル内服を継続してきたことを公表してきた私。
最近は、2010年に妊娠をあきらめ、四季レディースクリニックを開院した直後からヤーズを開始してとっても体調がよくなったこと、このブログでも書いていますね
私の場合、休薬中には激しい頭痛が来て仕事に支障が出るので、昨年10月からは、休薬なくず〜っと連続して内服し、とても調子がよかったのです。
このままトラブルがなければ50歳(閉経するであろう平均年齢)くらいまでずっと続けるつもりでいました。

ところが。
11月中旬にすごく体調が悪くなりました。
朝、出勤時に走ったりすると息切れがするし、すごく疲れやすい。
11月はじめに大きな仕事を抱えてて、終わってホッとしていたときだったので、疲れと運動不足のせいだろうと気にも留めずにいたのです。
すると、11月20日ころのある朝。起きたらなんだか左ふくらはぎが痛い。
攣った?筋肉痛?何だろうな〜と思いましたが、
前日に、YouTubeみながら「恋するフォーチュンクッキー」の振りを覚えようと踊っていたせい?(爆)なんて、思っていたのです。
いや、でも、ロングブーツが左だけファスナー上げにくいのは気持ち悪いな〜と思っていました。

数日で、足の痛みも治まってきたのですが、
まあ、でも、なんか気持ち悪いし、1年半前に人間ドック受けて以降、血液検査も受けていなかったし、採血でもしとこうかな〜?と自分のクリニックで採血受けてみたんです。
 ・貧血;全然なし(ヘモグロビン13.8って!!)
 ・肝機能、腎機能、コレステロールなど;見事に問題なし!
まさか、と思って調べた血栓症の有無を鋭敏に調べるD-dimerという項目だけ異常値。3.9と、結構高い値だったのです!!

まさに、「じぇじぇじぇっ!!」ですよ。
家族に血栓症の人なんて全くいないし、自分自身もまあ、もう43歳で、ちょっと肥満はあるけど、まさか!

慌てて、泣く泣く、ヤーズを中止。
できれば早く静脈血栓の有無を調べてもらいに血管外科の医療機関を必死でネットで調べるのですが、受診できる時間に診療を受けられるところはなかなか見つからず。
(もちろん、自分の患者さんで、緊急の症状があれば、仕事休んででも行っていただくのですが。)
自分の診療はなかなか閉められないし、閉めるほどの強い症状はないし、土日や夜間に救急外来を受診するような症状でもないし。

中止後1週間でもD-dimerを再検し、下がっていたら受診はいらないかな?と淡い期待を抱いていたら、3.5とまだ高い値だったので、こりゃ〜やっぱりエコーしてもらわなきゃ、と。

さらにネットで調べてみたら、夜20時まで外来をしていらっしゃる血管外科の先生のクリニックを発見し、昨日、診療終了後に受診してきました。
幸い、下肢静脈エコーでは血栓らしきものは認められませんでした。

おそらく、11月中旬にどこかで小さな血栓を発症はしたのだと思います。
ただ、前触れで気づき、ピルを中止して経過を見るうちに、自然にその血栓を溶かすことができたのでしょう。

いやぁ、冷や冷やしましたが、よかったです。

ただ、ヤーズを中止した直後は、久しぶりの月経痛に泣き、
月経(消退出血)の後、数日は、エストロゲンの低下のせいか、
すごく体調が悪く、気分が落ち込み、
その後体調が回復したと思ったら、今度は結構な排卵痛が3日ほど続き・・・。
それが収まった今、これからきっとPMSが来て、また月経痛が来るんだろうなぁ〜と、考えるだけでブルーです。

ピルにはエストロゲンが入っているので、血栓リスクがありますが、
黄体ホルモンには血栓を起こすリスクがないので、黄体ホルモン療法に切り替えるしかない!
で、ミレーナを入れたいな〜と、エコーをしたら、
子宮の突き当りに内膜に接する3pの筋腫が・・・はぁ、ミレーナ適応外(号泣)。
(昨年、検診していただいたときには2pで、内膜とは離れているように見えたのにな・・・)
次に月経が来たら、ディナゲストを使うしかないですね〜。

ピルは1か月分の医療費が2000円前後で済みますが、
ディナゲストになると、保険診療(3割負担)でも8000円ほどかかりますので、
できればピルを続けたかったな〜というのは、貧乏開業医のつぶやき。
でも、手術以外に抑えられる方法の選択肢があるのは、ありがたいですよね。
(ホントは、妊娠の予定がないので、子宮摘出でもいいんですけど。
 その方が、今後の月経のトラブルも避けられ、
 子宮がん(頚がん・体がん)には絶対ならなくなるし。
 でも、手術のために休診にするのが難しいので。)

こうして、婦人科の様々なトラブルを乗り越えてきた私、
また「経験値(芸の肥やし、ともいう)」がアップしたのでした(苦笑)。

こんな感じで、早く見つければ大事には至りませんので、
ピル内服中のみなさん、「これって大丈夫?」と気になる症状があれば、
まずはお早めに主治医にご相談をお願いします。
私のように、まず、血液検査でD-dimerなどの凝固系の検査を行って、異常値が出るなら中止をおすすめします。
もちろん、呼吸困難とか、今まで感じたことのないような頭痛とか、緊急の症状があるときには、救急での受診が必要です!
その際は必ず「ピルを飲んでいるので、血栓が心配」とお話しくださいね。
(お受けいただく血管外科、脳外科などの先生方、どうぞよろしくお願いします)


【おまけ】
11月以降、外来を受診されているヤーズ内服中+40代のOC内服中の患者さんには、再度血栓への注意喚起をしているのですが、実例として私の例を上げ、ヤーズを中止して事なきを得たことをお話しする場合もありました。
それを聞いた一人の患者さん。
「先生も、生理痛強かったんですよね!自分も先生に勧めてもらってホントに楽になって、止めるなんて考えられない!先生、大丈夫ですか?生理痛、大変になるんじゃないんですか?」
って、すごく心配してくださった方が・・・。
ホントにありがとうございます!
上に書いたように、次の手を考えていますので大丈夫ですよ〜ってお伝えしたら、安心してくださいましたが。
(ただ、高価なのがちょっと、、、って話したら、笑ってらっしゃいましたけど。)
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2013/12/17  22:27 | 投稿者: 江夏 亜希子

今朝のYahooニュースで、このような見出しが躍りました。
「ピルの副作用、血栓に注意を 5年で11人死亡例」

今年に入り、このブログでも取り上げてきた「超低用量ピル・ヤーズ」で2例の死亡例が報告されたことを受け、11月には、産婦人科学会からもこのような緊急の注意喚起が出されていました。

低用量ピル(低用量経口避妊薬(LOC)/低用量エストロゲン・プロゲスチン合剤(LEP))は、確実な避妊のほか、月経痛の軽減、経血量の減少、月経周期の調整など、女性のQOL(生活の質)を向上させる薬剤です。
私は、女性の心身の健康を守る産婦人科医として、この薬を積極的に処方してきましたし、自分自身もこれまで愛用してきたことは、このブログでもこれまで書いてきたとおりです。

ただ、低用量ピルに対する社会の偏見や誤解は非常に大きいため、
当院では処方の前に必ず、
・ 月経周期の成り立ち
・ ピルの成分と作用、副作用
について時間を取って説明し、処方禁忌に該当しないことを確認し、
メリットとデメリットを納得していただいて内服開始することをお勧めしてきました。
その際に説明している内容を、ここにまとめておきます。

デメリット=副作用として、多くの方が心配される「がん」や「嘔気」「体重増加」などはあまり問題になりません。(乳がんリスクは不変、子宮体がん、卵巣がんはむしろ5〜6割に減少)
ただ、唯一、「命に係わる問題」になるのは「血栓症」です。

血液の中では、常に
「固まって出血を止めようとする働き(凝固)」と、
「固まろうという血液を溶かそうとする働き(線溶)」
のバランスが絶妙に保たれているのですが、
例えば、血管に傷が付く、破れるなどの問題が起これば、即座に血液を固めてその穴を塞ぎ、出血を止めようと準備しています。

女性は月経中や妊娠・出産で急な出血に見舞われることが多いわけで、
女性ホルモンの代表「エストロゲン」には、血液を固めようとする働きがあるのです。
これは、月経中や妊娠中、「出血を止めよう」とする働きを高めておくという意味で、
大変理にかなった役割ですね。

低用量ピルは、このエストロゲン(正確にはエチニルエストラジオール)を含むため、内服すれば、しない場合と比べ、血栓を起こしてしまうリスクが上昇することは間違いありません。
冒頭の記事にもあった通り、
通常の状態でも血栓症は10万人あたり年間5名程度の発症があるのですが、
ピルを内服すると、そのリスクを3〜5倍程度に上昇させてしまいます。
しかし、妊娠中や産褥にはさらにリスクが上昇します。
(こちらの慶応大吉村先生のHPに、リスクの対比が載っています。)

と、考えると、「あなたは血栓が怖いから、妊娠してはいけません」と言われることはないわけで、起こらない可能性の高い血栓症のリスクを恐れて、低用量ピルのメリットを得られないとしたら、これは非常にもったいないことです。

現時点では残念ながら、血栓症を起こす人、起こさない人を内服前に確実に判断できる方法はありません。
大切なのは、
1)リスクのある方は内服を避けること(得られるメリットよりデメリットが大きい場合)
(「低用量経口避妊薬(OC)の使用に関するガイドライン」参照)
2)血栓にならないよう気を付けること(ピル内服していない人も必要です)
(長時間同じ姿勢を取らない、脱水にならないようにする、長距離移動するときにはひざ下の弾性ストッキングを利用し、こまめに席を立つようにする、など。)
3)血栓の初期症状を見逃さないこと
この3点に尽きるのではないかと思います。

特に、内服している方にとって大切なのは3です。
血栓の「前触れ症状」で気づき、対応すれば、命にかかわるような状態は避けられます。
【気を付けたい血栓の前触れ症状】
・下肢(ふくらはぎ)の痛み;特に片側(左>右が多い)、同部を握ると痛みが増す
・胸(乳房ではなく)の痛み、息苦しい感じ
・激しい頭痛、前触れ(まぶしい感じなど)の後に痛む
・視界、視野の異常、目のかすみ
・片側の痺れ、ろれつが回らない、長く続く腹痛


疑わしい症状があれば、まずは処方を受けた医師にご相談いただきたいですし、
万一、激しい症状であれば救急医療機関を受診して
ピル内服中であることを伝えたうえで、血栓の可能性について適切な検査、治療を受けていただく必要があります。

次のエントリーで、血栓を早く見つけて対処できた実例を挙げますね。


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2013/12/1  21:21 | 投稿者: 江夏 亜希子

あっという間に12月ですね。かな〜り、久しぶりの、まともな更新です。
この12月でこのブログも開設まる9年、年末からは10年目に入ります!
こうして思いついたところで更新していきますので、ぼちぼちお付き合いください。

さて、今日のお話は・・・日本の「公認」女性医師第1号、荻野吟子先生の話。
先週、NHKの「歴史秘話ヒストリア」で取り上げられたので、ご覧になった方もいらっしゃったかと思います。

私が荻野吟子先生のことを知ったのは、医学部進学を目指し、日々、追い詰められていた(?)高校生の時。高校の図書館で渡辺淳一作の「花埋み」(荻野吟子の生涯を追った伝記小説)を読んで、でした。

嘉永4年(1851年)生まれの彼女は、武蔵国俵瀬村(現在の熊谷市)の旧家の娘として生まれ、幼少期から賢く男兄弟と一緒に学問も修めつつ育ちます。
18歳で近くの町の大名主の家に嫁ぎますが、夫から淋病をうつされ、子供を産めない体になり、離婚。
その治療のため東京に出てきて、初めて西洋医学的治療を受けるわけですが、その時に男性医師から内診を受けることに苦痛を感じ、医師になることを志します。
しかし、当時は医師になることは狭き門だったうえ、女性にはその道は開かれていませんでした。前例がないから、女に医師なんかなれるわけがない、女性は体力がないから、妊娠・出産の間は仕事ができないから・・・などの理不尽な理由で。
彼女は制度改革に奔走し、ようやく受験を許され、1885年に医術開業試験に合格し、東京・本郷湯島三組町に荻野医院を開業し、多くの女性たちの診療に当たりました。

・・・そんな話は、もちろん高校の時、そして大学の時にも何度も「花埋み」を読んで知っていたのですが、そういえば医師になってから読み返したことはありませんでした。
熊谷出身、ということも、そういえば忘れていました。

今回、ヒストリアで久しぶりに彼女の話に触れ、女性医師としてもう一度彼女の人生を見直してみたいと思いました。本はおそらくクローゼットの中の段ボールの奥に入っていて、すぐに出せそうになかったので、久しぶりに予定のない日曜日の今日、熊谷市立荻野吟子記念館をふらっと訪れてみました。

熊谷と行田の間の、田園地帯の奥、利根川の土手縁に記念館はありました。

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残念ながら内部は撮影禁止でしたが、
室内の壁3面に彼女の一生が年表で示されていました。

名主の娘として不自由なく育ち、大名主の家に嫁ぐときには、娘なりの夢を抱いていたこと。
性感染症をうつされ、子供を産めなくなって離婚し実家に帰り、闘病。
その中で医師になることを志し、学問を修める大変さに加えての、女性であることへの偏見との苦闘。
医師となってからは、女性の苦しみと向かいあう中で苦悶し、女性教育の大切さに目覚める必然。
そして、13歳年下の宣教師と恋におち、北海道へ理想郷を作るために一緒に渡ります。
子供を産めないことに引け目を感じ、養女をもらい、育てるとともに、
女性教育に力を注いていましたが、
夫に先立たれて東京に戻り、医院を開業。
1913年(大正2年)、63歳で没。

もう一度、医師という「同業者」になってから彼女の人生をなぞってみると、
高校生の時、大学生の時に読んだのとまったく違う感慨がありました。

彼女の苦闘、苦悩の足元にも及ばないし、比較するのもおこがましいのですが、
もし、彼女の人生を知らずに医師になっていたら、こんなに強くは歩めなかったかもしれないな?迷った時に、敢えて険しい道を選ぶようなことはなかったかも?と思いました。
私は学生の時に彼女の生き方に感動したことに恥じないように、
必死で医師として仕事をしてきたと、胸を張って報告できるかな?
その結果、こうして東京で仕事をさせてもらっているのかもしれないな〜とぼんやり思ったのでした。
きっと、「日々の診療だけじゃなく、教育にも力を入れなければ」という発想も、
大きく影響を受けてたんだろうな〜と。

奇しくも、私が医師になることを志すのに大きな影響を与えた祖母が生まれた年が、
彼女が夫と死別して東京に戻った年、明治41年だったようです。
祖母は、男兄弟みんなが医師になる中、自分も医師になることを夢見て、
女学校も優秀な成績で卒業したのに、「女だから」という理由で許されず、江夏の家に嫁いできた人です。
幸い、祖母はそこで夫との仲もよく、子供にも恵まれて一生を終えますが、
末孫の私に「これからは女も職業を持つ時代だ、がんばって医者になりなさい。女でも医者になれる時代に生まれた貴女がうらやましい!」と、ずっと言い続け(もちろん、ブリブリの都城弁で(笑))、私が医学部に入学した年の12月に亡くなりました。

そういえば、私の祖母より5歳くらい年上の天才詩人、金子みすずさんも、離婚の原因に夫から淋病をうつされたことも入っていましたね。

こうした女性たちのつらい歴史から目を背けず、
当たり前が当たり前じゃなかった時代が長かったことを考え、
現在私たちが与えられていることの大切さを見つめ、先人たちの苦労に感謝することは
やっぱり大切なんじゃないか?と。

ヒストリアで紹介されていた、彼女が書いた手紙の一部。(現代語訳)

男尊女卑の風潮は
婦人が職を持たないで経済的に自立せず
そこに安住していることに原因があるのではないでしょうか
もし自分たちの本当の力を知ったなら
女性も自らの価値を
悟ることができるはずです

私より120年前を生きていた荻野吟子さん。
私も含め、現代を生きる多くの女性たちが、
今でもまだ、同じようなことで毎日思い悩んでいるということを、
どう見つめていらっしゃるのでしょうか?

それから、現在の女性医師事情。
医学部に進学・卒業する女性医師が3〜4割になったというのに、
仕事と結婚、妊娠・出産を普通に両立することに、多くの女性医師が四苦八苦、七転八倒していることを。
私などのように、仕事に邁進してきた結果、子供を産むことができなかった女性医師が、それを自分のなかでなかなか消化できずに苦悶していることを。
そして、資格を取った後、仕事から離れてしまう女性医師が多いことが問題になっているのを。

なんか、申し訳なく思ってしまいますよね。

私だって、10年後、20年後の後輩たちに、「女性だから」っていう気持ちは味わって欲しくはないです。自分が苦労したことは少しでも道を均してから後進に渡したいし。
いろいろな理由で、現場を離れている人たちには、職業として医師を選んだのなら、男女限らず、石に齧りついてでもやっぱり続けて欲しいですよね。どんな形でも構わないから。
その覚悟がないなら、最初から医学部を目指さず、覚悟のある人に道を譲ってほしい・・・。

女性の自立が遅々として進んでいない原因って、やっぱり私たち女性の心にあるものが大きいんじゃ?と私も思ってしまうんですよね。
男性のせいとか、社会のせいとか、教育のせい、とかにしてしまっている限り、
「自立」はできないんだと思います。

さあ、自分にできることはなんなのだろう?しなければいけないことはなんだろう?

と、いろいろと頭に浮かんできました。おいおい形にしていければ、と思います。


なんと、記念館前の「吟子桜」が1本だけ咲いていました!
係りの方に尋ねると、冬に咲く桜なんですって。

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