昨日の投稿を見て、お友達の「ゆみちゃん」さんから「どんな内容だったか教えて!」ってリクエストをいただいたので、書いておきます。
「レボノルゲストレル放出子宮内避妊システム」(商品名:
ミレーナ52mg)は、昨年4月に日本でも発売になった新しい「子宮内避妊システム」です。
従来から「子宮内避妊リング(IUD)」というのはありましたが、
初期は「子宮の中に「異物」を入れて着床を阻害して避妊する」
というものでした。
研修医の頃、低用量ピルはまだ発売になっていなかったので、「経産婦で避妊を希望する人」にとっては、「手術(卵管結紮)」に次ぐ確実な避妊法(有効率95%)でした。
でも、当時働いていた病院の助産師さんが避妊のためにこの従来の形のIUDを使っていたのに妊娠し、ちょうどお産のときに私は立ち会ったのですが・・・赤ちゃんが無事に生まれた後、胎盤と一緒に「魚の骨みたいなプラスチックのIUD」が出てきて、かなり衝撃でした。IUDの位置が少しずれると、運よく(?)着床できちゃったんですね。
で、さらに避妊効果を確実にするため、リングの柄の部分に薬剤を添加したものが出来ました。これは、単なる物理的な着床阻害だけでなく、「じわ〜っと溶け出した薬剤」の効果で「化学的にも着床を阻害する」効果があります。
まず「銅付加避妊リング」(商品名;
マルチロードCU250Rや、
ノバT、など)から発売になりました。
子宮内に留置した銅線から少しずつ銅イオンが溶け出すことにより受精卵にとってはより着床しにくい状態になるので避妊効果が高まり、ピルのように毎日内服する煩わしさもなく(マルチロードは2年、ノバTは5年有効)、より確実な避妊が長期間行えるようになりました。
しかし、ここまでのIUDには避妊効果はあっても、子宮内膜を薄くするという効果はなく、子宮内では「異物」でしかないのでIUDを入れると月経量が増える(過多月経)、月経痛が増すという困ったことが起こることもありました。
そこで、2007年4月に満を持して日本で発売になったのが、「ホルモン付加子宮内避妊リング」なんです。ホルモンの中でも「レボノルゲストレル」という「黄体ホルモン製剤」を付加したのが、今回の「ミレーナ」というもの。
レボノルゲストレルは、第2世代低用量ピル(アンジュ、トリキュラー、トライディオール)にも含まれている黄体ホルモン剤。
黄体ホルモンは、実際の月経周期では排卵の後に卵巣から分泌され、エストロゲンによって厚くなった子宮内膜を「脱落膜化」(簡単に表現するのは非常に難しいですが、「それ以上厚くならないように安定させる」というイメージ?)するものです。
これが、常に子宮内に溶け出している状態なので、卵巣から出ているエストラジオールが子宮内膜を厚くしようとしても、できない」状態になるのです。
ですから、「ミレーナ」は理論上、
1) 確実な避妊 (子宮内異物+子宮内膜を薄く保つことによる着床阻害)
2) 月経量の減少(子宮内膜を薄く保つことによる)
3) 子宮腺筋症など、子宮内膜症の症状改善
という効果が期待できるのです。
(※ 認可が下りている適応症は1だけです。「避妊目的のもの」とされているので、保険は利かず、自費診療となります。ネットで調べると7〜10万円と設定しているところがほとんど。ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックでは73500円です)
ということで、今回の学会では、2007年4月から今年6月まで、当院でミレーナを入れた60名について効果と問題点をまとめて発表しました。
簡単にまとめると、純粋に避妊のみを目的としたのは16名、避妊だけではなく月経痛や月経量の減少などの副効用を期待したのは17名、副効用のみを期待したのが17名、計60名に妊娠例はなく、月経痛や過多月経の改善効果は7割に上りました。
ただ、大きな子宮筋腫がある例で大量出血(筋腫分娩)になった例もあり、筋腫がある場合は慎重にしましょう・・・といった内容での発表でした。
実はこのミレーナ、ヨーロッパでは1990年に発売になっており、安全性もかなり確認されてきているんですが、日本ってどうしても「避妊」とか「ホルモン」とかの話になるとおよび腰というか、模様眺めしてしまうところがあるみたいですよね・・・。
(発売元であるバイエル薬品さんによると、この期間に日本全国で出荷されたミレーナの数は約1200、使用されたと報告のあった数は800だったそうですから、全国で使われたミレーナの7.5%がうちのクリニックで使われたということ?)
なかなか普及しないのは、もちろん高価なのもあると思いますが、もし妊娠してしまって避妊手術をするとミレーナよりお金がかかるばかりか精神的ダメージも大きいですしね。
月経痛や量が多いので、避妊を兼ねて低用量ピルを5年間継続して飲んだ場合のコストは
1シート2100円(当院では比較的安く設定しています。だいたい2000〜3000円が相場?)とすると、
2100(円)×12(ヶ月)×5(年)=12万6000円
ですから、むしろ安くつくんですよね。
もちろんタバコを吸っているとか、他に合併症があってピルを使えないという人にもお勧めです。
今回検討した60名の患者さんのうち、実は8名は未産婦さんでした。
「未産婦さんには向かない」といろんな本で書かれていますが、適切な子宮頚部開大操作をすれば入れられないことはありません。
特に子宮腺筋症などで月経痛が強い人、月経量が多い人で、低用量ピルが飲めない人にはお勧めです。
興味のある方は是非クリニックにお越しくださいね!
では、学会2日目、行って参りま〜す!

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