血栓症のサイン、見逃さないで!〜低用量ピルを安心して内服していただくために〜

2013/12/17  22:27 | 投稿者: 江夏 亜希子

今朝のYahooニュースで、このような見出しが躍りました。
「ピルの副作用、血栓に注意を 5年で11人死亡例」

今年に入り、このブログでも取り上げてきた「超低用量ピル・ヤーズ」で2例の死亡例が報告されたことを受け、11月には、産婦人科学会からもこのような緊急の注意喚起が出されていました。

低用量ピル(低用量経口避妊薬(LOC)/低用量エストロゲン・プロゲスチン合剤(LEP))は、確実な避妊のほか、月経痛の軽減、経血量の減少、月経周期の調整など、女性のQOL(生活の質)を向上させる薬剤です。
私は、女性の心身の健康を守る産婦人科医として、この薬を積極的に処方してきましたし、自分自身もこれまで愛用してきたことは、このブログでもこれまで書いてきたとおりです。

ただ、低用量ピルに対する社会の偏見や誤解は非常に大きいため、
当院では処方の前に必ず、
・ 月経周期の成り立ち
・ ピルの成分と作用、副作用
について時間を取って説明し、処方禁忌に該当しないことを確認し、
メリットとデメリットを納得していただいて内服開始することをお勧めしてきました。
その際に説明している内容を、ここにまとめておきます。

デメリット=副作用として、多くの方が心配される「がん」や「嘔気」「体重増加」などはあまり問題になりません。(乳がんリスクは不変、子宮体がん、卵巣がんはむしろ5〜6割に減少)
ただ、唯一、「命に係わる問題」になるのは「血栓症」です。

血液の中では、常に
「固まって出血を止めようとする働き(凝固)」と、
「固まろうという血液を溶かそうとする働き(線溶)」
のバランスが絶妙に保たれているのですが、
例えば、血管に傷が付く、破れるなどの問題が起これば、即座に血液を固めてその穴を塞ぎ、出血を止めようと準備しています。

女性は月経中や妊娠・出産で急な出血に見舞われることが多いわけで、
女性ホルモンの代表「エストロゲン」には、血液を固めようとする働きがあるのです。
これは、月経中や妊娠中、「出血を止めよう」とする働きを高めておくという意味で、
大変理にかなった役割ですね。

低用量ピルは、このエストロゲン(正確にはエチニルエストラジオール)を含むため、内服すれば、しない場合と比べ、血栓を起こしてしまうリスクが上昇することは間違いありません。
冒頭の記事にもあった通り、
通常の状態でも血栓症は10万人あたり年間5名程度の発症があるのですが、
ピルを内服すると、そのリスクを3〜5倍程度に上昇させてしまいます。
しかし、妊娠中や産褥にはさらにリスクが上昇します。
(こちらの慶応大吉村先生のHPに、リスクの対比が載っています。)

と、考えると、「あなたは血栓が怖いから、妊娠してはいけません」と言われることはないわけで、起こらない可能性の高い血栓症のリスクを恐れて、低用量ピルのメリットを得られないとしたら、これは非常にもったいないことです。

現時点では残念ながら、血栓症を起こす人、起こさない人を内服前に確実に判断できる方法はありません。
大切なのは、
1)リスクのある方は内服を避けること(得られるメリットよりデメリットが大きい場合)
(「低用量経口避妊薬(OC)の使用に関するガイドライン」参照)
2)血栓にならないよう気を付けること(ピル内服していない人も必要です)
(長時間同じ姿勢を取らない、脱水にならないようにする、長距離移動するときにはひざ下の弾性ストッキングを利用し、こまめに席を立つようにする、など。)
3)血栓の初期症状を見逃さないこと
この3点に尽きるのではないかと思います。

特に、内服している方にとって大切なのは3です。
血栓の「前触れ症状」で気づき、対応すれば、命にかかわるような状態は避けられます。
【気を付けたい血栓の前触れ症状】
・下肢(ふくらはぎ)の痛み;特に片側(左>右が多い)、同部を握ると痛みが増す
・胸(乳房ではなく)の痛み、息苦しい感じ
・激しい頭痛、前触れ(まぶしい感じなど)の後に痛む
・視界、視野の異常、目のかすみ
・片側の痺れ、ろれつが回らない、長く続く腹痛


疑わしい症状があれば、まずは処方を受けた医師にご相談いただきたいですし、
万一、激しい症状であれば救急医療機関を受診して
ピル内服中であることを伝えたうえで、血栓の可能性について適切な検査、治療を受けていただく必要があります。

次のエントリーで、血栓を早く見つけて対処できた実例を挙げますね。


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