9月25日。
深浦王位に羽生名人が挑戦する、
第49期「王位戦七番勝負」の第7局(最終局)が神奈川県箱根町「ホテル花月園」で開催された。
深浦は後手番・1手損角換わりの戦型から序盤「角桂交換」という大胆な駒損の勝負手を打ち、100手で羽生を投了に追い込み、王位を初防衛した。
タイトルの真の価値を定めるのは、外在的な価値(賞金、序列、格式)だけではなく、棋士同士の純粋な「対局内容」に大きく依存することを、深浦ほど短期間に、また明確に示した棋士はいないと思った。
前期、これもフルセットの激闘の末、羽生王位から深浦が初タイトルを奪取。羽生・深浦の7番勝負は名局揃いで、その多くの対局が棋士の選ぶ「年間ベスト10」に入るほどだった。
深浦は最強の棋士を「跳躍版」にし、王位というタイトルの価値を一気に高めた。羽生を相手に、2期連続フルセット「4‐3」での勝利。この事実は、深浦という棋士の底知れぬ精神的な強さを示している。
今期も前期と同様、両雄の対決は「3勝3敗」で最終局にもつれ込んだ。
深浦が「3勝1敗」とリーチをかけたのだが、羽生は容易に土俵を割らず、第5局・先手番を「相矢倉」で制し、第6局・後手番も「相居飛車力戦」で凌ぎ切り、舞台を最終局の箱根に移したのだ。
運命の第7局。
深夜、熱闘の興奮を味わいたく、『週刊将棋』に掲載された棋譜を並べてみた。
戦型は、後手深浦から角交換をする「1手損角換わり」となった(現代将棋では後手番の最も有力な戦法の一つ)。
対し、羽生は「右銀」を前線にぐいぐいと繰り出し、
ジックリ指すというよりも烈しい展開に誘導した。両者、指すごとに烈しさを増幅させ、序盤は瞬く間に終わり、一気に中盤に突入する展開となった。
羽生の早繰り銀による2筋の攻めに対し、28手目、深浦は「△5五角」と打った。普通、穏便に局面を落ち着かせる場合、
羽生も持ち駒の「角」を合わせるのだが、羽生は「角」を温存し、深浦「角」に凝っと「銀」と「歩」で圧迫を加えた。
この後、深浦の大胆な一着が出た。
意表を衝く「角桂交換」だ。
しかし、駒損の代償として「△3七」にしっかりと「と金」を作った。結局、この「と金」の働きが駒損を大きく上回り、重要な局面の全てに決定的な関与をすることになった。
対局後のインタビューで羽生がある質問に対し「気色ばむ」ような場面があり、「おおっ、羽生さん熱い敗戦だな」と思った。

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