いなかのせんきょ 藤谷治 祥伝社
四方(よも)を深い山々にかこまれた鍵田原郡(かぎたわらぐん)戸蔭村(とかげむら)━。莫大な借金を残し引責辞任した前村長の後を受けまして、村議・深沢清春は助役・平山忠則に村の建て直しを請われます。村長におさまった清春の改革によって、戸蔭村は平和な村になりましたとさ……と参るわけがございません。なんと清春を推した平山が対立候補として出馬!おまけに土建屋、材木屋、村会議長━村中の有力者が推薦人にずらり。ここに戸蔭村、数十年ぶりの選挙戦が勃発したわけでございます。人も足りない、金もない。あるのは村への想いだけ。ないない尽くしの深沢清春、家族を頼りに打って出た、一世一代の大勝負の行方や如何に!?(オビより)
演者がこの物語を語ってゆく、少ないスタイルのコミカルな小説です。
文章のテンポが良く、硬いところなんかいっさい無く、おまけに読んだ後の後味がいいときてます。
この選挙戦の候補者はふたり。
かたや深沢清春は、戸蔭村を何とかしたいと想う心で、選挙戦を正攻法で戦ってゆきます。清春の選挙戦を支えるのは、地元戸蔭村でスーパーを営む長男夫婦。東京在住で頭脳明晰な弟。少数の地元応援者。それに手伝う気がない娘。
こなた平山忠則は、選挙戦の序盤は負ける要素がないと思い何もしません。忠則の選挙戦を支えるのは村の議長や村議を始め、地元で有力な企業の社長が二人と陣営は圧倒的です。
地道な戦法が功を奏し、清春の人気が上がると分かると、忠則は一変暴挙に出ます。
忠則には金と権力があり、饗応、談合、根回し、買収、と使える手はなんでも使う選挙戦へと戦法を切り替えます。
そしてその選挙の行方は!

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