千葉県市川市で07年に起きた英国人女性(当時22歳)殺害・死体遺棄事件で、逮捕された市橋容疑者(30)は、医師の父と歯科医師の母との間に生まれ、岐阜県内の中学、高校を卒業後に上京。私立大を中退して千葉大園芸学部に進学したと言う。れっきとした国立大学卒業生だ。学部では緑地環境学科で庭園デザインを学び、卒業後は「市川か浦安の辺りに住み、設計事務所でアルバイトをしながらデザインの実務経験を身につけたい」と話していたと言う。親が購入した市川市福栄のマンションに住み、十分な仕送りを受けていたとか。
市橋容疑者は、友人たちの間では似顔絵が上手なことで知られ、女性によく手描きの似顔絵を描いて渡していたと言う。英国人女性と初めて会った時も「英会話を教えてほしい」と自宅に押しかけ、似顔絵を描いて贈ったらしい。美的センスに優れ、恵まれた糧環境に育ち、何不自由がない青年が、一体どうして、あのような事件を起こしたのだろうか。
テレビ、雑誌、新聞で、何かと解説されているが、結局、将来計画が挫折したことが、大きいと思う。当人は「本当は医者になりたかった」と言っているとか。両親がお医者さんなら、当然期待もそのようなものだっただろう。それが上手く行かなかったことへの屈折した気持ちが、反社会的な行動へと走らせたのではないか。性的なものへの異常な関心も報道されている。整形を繰り返し、逃走を続けたのも、一方では、女性への未練が断ち切れなかったせいだろう。

逮捕された市橋容疑者
(インターネットより借用)
それにしても、逮捕後、食事を拒否し続けているのは、異常としか言いようがない。一体何のための「拒食」か。報道によれば、出された食事を一度も口にせず、ただ水やお茶を口にしているだけとか。こうした拒食は、例がない訳でなく、例の麻原容疑者も、逮捕後暫く拒食したと言う。これは、体力を弱らせ、取調べを遅延させる為の戦術だとか、権力への抵抗だとか、言われている。しかし、犯罪者に特有の自分勝手な理屈である事に変わりはない。それとも、前途を悲観しての「緩慢な自殺行為」なのか。
医師である両親に多大な迷惑を掛けた市橋容疑者は、裁判では、「親に頼らない」旨を明言している。連絡さえ一切断っているとか。確かに、一部推測されたように、逃走中の生活資金や、まして、整形代金などの家庭からの内密な援助など、無かったらしい。工事現場で、肉体労働をしてお金を貯めたと言う。結局、やはり家庭関係の重圧が、容疑者をこう言う人間にしてしまったのだろう。
私が何故こうした判断をするかと言うと、実際に、教育現場にいたからである。「経済的に恵まれた家庭の子供」「社会的に有力者の家庭の子供」は、「貧しく、恵まれない家庭の子供」に比べ、何倍かのプレッシャーと戦わねばならないことを、見聞きしてきたのだ。その癖、こうした子供たちは、一般にプレッシャーに弱い。人は、「医者になれないくらいで、そんな贅沢な」と思うだろう。そうではないのだ。それが全ての場合だってあるのである。考えれば、気の毒なことである。

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