山形県・鶴岡の名産品「麦切り」。
掲示板に「麦切りとうどんの違いってなんだ?」という質問があったので、ここはひとつ師匠に聞いてみようとメールしてみました。返信メールを読みながら、これはIkoが一人で読むよりもアップしちゃえとばかりに、師匠の名前を出すなという条件でなんとかOKをもらい(許可などしておらんというメールが来そうでちょっと恐い^^;)ここにお披露目するものでありやす。以下、師匠からのメールです。
麦きりとうどんの違いを掘るとイライラするのであまりやりたくないのですが・・・
結論からいうと、麦きりだと思って食べると麦きりになります。
1.麦きりの由来
小麦粉をこねて薄くのばし、細く切るから麦きりといいます。
同様の作り方をそば粉でやればそば切り、作り方はちょっと違うがくず粉でやれば葛切りといいます。おそらく、麦きりはうどんの古い呼び名ではないかと推察します。ただし、うどんの起源は中国から伝来した饂飩だとする説が一般的です。
2.かてもの
その昔、毎日白いご飯を食べているのはごく限られたひとで、たいていの人は普段、実入りの悪い二番米や他の穀類を食べていました。ご飯のかわりに食べていたものをかてものといいます。麦やそば、古くは、粟や稗などです。そうしたものを粉にして食べるわけです。粉のまま食べる食品は今日キナコぐらいが一般的なものですが、「こうせん」というお菓子も残っています。
通常は粉のものは練って料理に使うようです。熱湯を粉に注いで強く練った「かいもち」や「ねっと」は、ごまだれやなんかを付けてたべるみたいです。あと、だんご(ここで花見団子を想像してはいけない)にして汁物に入れてにこんだりします。
そうした料理は、大分の郷土料理「やせうま」とか、どこだかの「みみ」なんか現代にも残っています。山梨の「ほうとう」もその一種です。
うどんや麦きりは、どちらかといえばハレの食べ物です。上記のものに比べて手間がかかるだけに美味しいので、庄内ではお祭りや祝い事で大勢人が集まったときに麦きりを出したそうです。と、大山の製麺屋さんでは言っていました。大人数の腹を満たすにはてっとりばやいかも。
うどんとかてものの違いは、めんをゆでて茹で汁を 捨てるか、味の付いた汁に最初から入れるかにあるようです。形態の似たほうとうは、ゆでないで汁に入れるので、かてものに分類されるでしょう。
そばといえば長細い麺類の総称となっていて、そば粉を使っていない中華そばなんかいい例ですね。そば粉を使ったそばがきやそばだんごは、今ではお菓子みたいな扱いですね。
3.麦きりとうどん
昔、庄内では乾麺をうどんと呼び、麦きりは自分の家で作る生麺のことをさしたようです。乾麺のうどんは、「いなにわ」とも呼ばれていたようで、大山の製麺屋さんなどは、昔はいなにわやと呼ばれていたと言っています。荘内日報のコラムによると、昔、庄内では秋田の稲庭うどんが流通していたことからそう呼ばれていたとのことです。
そうすると、庄内ではうどんという呼び名はいつから出てきたのかという疑問がわいてきます。それから、あったかいうどんは、昔は食べていなかったのかという疑問もあります。
どうやったら調べられるんだ?
私などは、麦きりという名前を知ったのはたぶん中学かそこらのことで、そのときは、冷たい麺をつゆにつけて食べるのが麦きりだと認識しました。今でもそう思っています。それはざるうどんじゃあないか?とも思えるのですが、器が違うでしょう。そばでもせいろそばとか板そばとかへぎそばなど、入れ物で呼び名を変える店があるじゃない?
麦きり=庄内の代表的な麺となったのは寝覚屋半兵衛の繁盛と深い関わりがあるとニラんでいます。
4.うどん・ひやむぎ・そうめん・麦きり
規格(たぶんJAS)では麦の麺を以下のように分類している。
きしめん=幅4.5〜6.4mm、厚さ約2mm
うどん =幅1.8〜3.8mm、厚さ1〜2mm
ひやむぎ=直径1.3〜1.7mm未満
そうめん=0.8〜1.3mm未満
本来、ひやむぎは麺生地を切ってつくるので、いわば細いうどんであり、そうめんは麺生地をのばしてつくるのでうどんとはちょっと違うのですが、現行法では製法の違いは問題にしていません。因みに、稲庭うどんはそうめんと同じように油をつけて延ばして作っているようです。
原料についての規格もあるはずです。たとえば大麦で作っためんもたぶんうどんと言って問題ないと思いますが、米の粉や他の穀類で作った場合、どこまで許されるのか把握していません。
ワインといえば葡萄酒のことですが、いちごワインとかブルーベリーワインとか果実発酵酒全般をワインと呼んでもいいようです。うどんがどこまで許されるのかいろいろと調べてみてください。
麦きりは原料と麺の太さから判断して間違いなくうどんです。
●結論
イ 麦きりは、小麦粉をこねて作る手打ちの生麺である。
ロ 麦きりは、ゆでて洗って、冷たいままつゆをつけて食べる。
以上二つの条件を満たしてこそ本来の麦きりである。しかし、すでに麦きりという商品名で沢山の乾麺商品が販売されている現状では、乾麺は麦きりではないといわれるとはなはだ困ってしまいます。今日の状況からして、ロだけでも十分に麦きりであると言って問題ないでしょう。そしてもう一つ、鶴岡産の麺でパッケージに「麦きり」と書いてあることが重要な条件でしょう。
関西に行くとサンガリアという飲料メーカーがあって、自販機も町中にあるのですが、その商品の一つに「あめゆ」というのがあります。水飴で甘味をつけたもので生姜の風味があります。砂糖や最近飲料に多く使われている転化糖と違ってやさしい味がして結構美味しいものです。HOTで売るとあめゆ、COLDだと「冷やしあめ」と呼び名が変わるので、缶は片面があめゆ、もう一方はひやしあめってなってます。
そういうこともあるので、鶴岡でうどんをつゆにつけて食べるときは、麦きりだ〜と思って食べることが一番いいことだと思います。それから、どうでもいいことですが、麦きりとそばの合いもりは邪道です。うどんや麦きりは、こねるときに塩水を使うので、ゆでても少ししょっぱいのです。そばは塩を使わないので、同じつゆで食べるとどちらかがピッタリと来ないでしょう。
それから、でんぷんの関係か、それとも相性なのか、そばの方が砂糖やみりんの甘味が強くないとおいしくありません。両方食べたいときは、それぞれ一人前ずつ注文した方がいいと思います。つゆや薬味を変えて出す店はこだわりがあるいい店だと思います。
うどんは地方によって太さや堅さ、コシなど実にいろいろです。インスタントラーメンは全国展開する大企業が多いのにうどんのナショナルメーカーってのがないでしょう。日清製粉のナンバーワンうどんがたぶん乾麺のトップシェアだと思うのですが、それほどのパワーはないですよね。
おそらく地域の好みに対応できないので今でも小さな製麺所が沢山あるのでしょう。珍しい業種だと思います。

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