太陽と月(桜薫る番外編) 2.不良と優等生

2010/12/10  1:13 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2.不良と優等生

私の彼女はちょっと変わっていると思う。
知り合ったのはこの白薔薇学園高等学校。というか、その通学路。

「ご、ごめんなさい…。」
「あぁ?ごめんで済むわけねぇだろう?」
ウチの制服を着た女子生徒が他校の男子生徒数人に囲まれて因縁を付けられている。
咥え煙草で薄っぺらい鞄を小脇に抱えた俺は、珍しく通常の通学時間にその場所に居た。
ちょうど歩いている歩道を塞ぐようにしていたので、そのままソイツ等の中に突っ込んでいく。
「あぁ、お前何なんだ?痛ぇ目に遭いたいのかよ?」
女子生徒に食って掛かっているヤツの足を蹴ったら、そう返ってきた。
「んぁ?邪魔だから退けよ。」
「なんだと!?」
ソイツが俺の方を向いたので、咥えていた煙草の火をソイツの制服の胸で消してやった。
「邪魔。」
「こ、コイツ!!」
殴り掛かってこようとするソイツを別のヤツが制止した。
「おい、コイツはやべぇって。コイツが綾川だ!!」
「なに!?コイツが!?」
黙って見ているとソイツ等が揉め始めた。俺とやり合うかどうかで揉めているらしい。
それを尻目に、女子生徒に声を掛ける。
「おい、お前、今のうちにとっとと学校に行け。」
「は、はい!ありがとうございました。」
その女子生徒はぴょこっと小さく頭を下げて小走りに学校に向かって走っていった。
それに気付いて俺に食って掛かってくる。
「てめぇ!ナメたことしてんじゃねぇよ!!」
「あぁん?どっちがナメてんだよ?」
有無を言わさずその瞬間に鼻柱に指輪を嵌めた拳を食らわせる。
鼻血を出してうずくまっている。まず一丁上がり。
「…次はどいつだ?」
睨みを効かせたところで残りのヤツらはうずくまったヤツを抱えて去っていった。
「ちっ、つまんねぇ…。」

その日は午前中は授業に出たが、午後から屋上の日陰でサボっていた。
読みかけの文庫本を顔に乗せて昼寝。
放課後になって、ぼちぼち帰ろうかと起き上がったら、朝のあの女子生徒が屋上に上がってきた。
「あ、あの!綾川さん!」
「うん?」
「今朝はありがとうございました!!」
「あ、あぁ。別に気にすんなって。」
「友達とか色々聞いて回ったら、ここに居るだろうって…。お怪我はありませんでしたか?」
「怪我なんかするかよ。」
俺の前にぺたんと座り込んで俺の顔をまじまじと覗き込んだ。
「良かった…。あの、これお礼です。」
彼女は俺の目の前にコーヒー牛乳の紙パックを差し出した。
「んなもん、いら…」
言いかけたところで彼女を見ると、差し出した手がカタカタと震えていた。
「…ったく…。ありがとよ。」
コーヒー牛乳を受け取ると彼女が微笑んだ。
「あの、またここで会えますよね?」
「…さあな。俺、帰るわ。お前、気ぃつけろよ。」
彼女を置いてさっさと家に帰った。

それからも学校に居る日は彼女が俺について回るようになった。
不良の俺に近づいてくるヤツなんて、お坊ちゃんお嬢ちゃんが多いこの学校にはほとんど居なくて、たまに居るロクでもない馬鹿が俺を慕って寄ってくる位だ。
「…なぁ、俺の事、怖くねぇの?」
「どうしてですか?」
「…俺、一応不良だぜ。頭金髪だしよ。先生にも目をつけられるから、俺に近寄るな。」
「怖くないですよ。綾川さん、優しいもん。」
「うーん。」
今までこんなことはなかった。モテない訳じゃなかったけど、寄ってくるのはみんな不良の女ばかりだった。こんな普通の子が俺に寄ってくるなんて。
「大体、お前の名前も何も知らねぇのに…。」
「あっ、すみません…。私、1-Aの遠藤奈月(えんどうなつき)です。」
「ふーん、奈月ね…。」
彼女は俺の一個下だった。そのうち、教師の目にも留まり、他の不良(男女問わず)にも目をつけられ始めた。
「奈月、嬉しいんだけどよ、お前を傷付けたくないんだ。だから、俺には近寄らないでくれ…。」
そう言って彼女を遠ざけた。それ以来、彼女は俺を遠目に見ていることはあっても、近寄ってくることはなくなった。

進級して三年になった。所謂受験生というヤツだ。
白薔薇学園高等学校には、祖父さんの代から通っていて、最近は寄付金なんかも出しているようだった。
近所なのもあって、当然のように通わされることとなった。
嫌なら白紙答案で不合格になってしまえば良かったものを通常どおり試験を受けて合格した。
この学校は基本的には進学校だ。大学も同じように親父が通っていた慶応に行くことになるんだろう。
流石に何も勉強せずに大学受験に合格する自信はない。
似合わないながらも眼鏡なんかをかけて、時折図書館に通った。
相変わらず、不良の格好のままだし、授業はよくサボっていたが、本を読むことは子供の頃から好きだったので図書館はそれなりに居心地が良かった。
どうせ大学に行くなら文学部にしようか…。法学部や経済学部なんかに行けと言われそうだが余り興味がないし、文学部の方がのんびりできそうな気がするし。
俺に付いて来ていた不良達も、俺が図書館通いしているのが気に食わないらしく、喧嘩を売られることもあったが、そもそも群れるのは好きじゃなかったし、離れていってくれて助かった。

結局、不良以外に友達を作らなかったから、白薔薇学園高等学校でいい思い出というものはほとんど無い。
強いて言えば、学校の蔵書を片っ端から読み漁ったことと、奈月に会えたことくらいだ。
とはいうものの、高校での彼女との思い出はこれだけだった。

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1.よく当たる占い
3.再会>
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