桜薫る 50.桜日和(後編)<完結>

2010/10/21  1:17 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇50.桜日和(後編)


彼の布団で二人、小さくなって眠った。
彼を蹴ってしまわないか、いびきを掻かないか、色々心配だったけど、彼の寝息が心地良くて程なく眠りに落ちた。
翌朝、目が覚めると彼が居なかった。
あれ??薫君が居ない…。
窓に掛かるカーテンの隙間から朝の光が差し込んでいる。
今何時なんだろう?私、すごく寝坊したのかな??
もぞもぞと布団から這い出す。
お布団、畳んだほうが良いのかな??
どうしようか迷っていると、誰かが二階に上がってきて、部屋のドアが開いた。
「お。桜、起きたのか?おはよう。」
「おはよ…。」
薫君はもう身支度ができていて、普段の私服姿だった。
「よく眠れた?」
「うん…。薫君は?」
「あぁ、まぁ眠れたかな?」
「私、いびきとか掻かなかった??」
「あぁ、大丈夫。蹴られたが。」
「えぇ!?ご、ごめんなさい。」
「冗談。かわいい寝顔だった。」
薫君は私の目の前に膝をついて、チュッと頬にキスをした。
「えぇ?恥ずかしい。ずるいよ、私も薫君の寝顔見たかったのに。」
「見たことあるだろう?前。寝込みを襲おうとしたくせに。」
そういえば、この部屋に初めて来たとき、彼は熱を出して寝込んでて…。
そのときのことを思い出して顔が熱くなる。
「やだっ!襲ったのは薫君でしょ!?」
「はは、きっかけは桜のキスだったんだから。…朝食用意したから、食べないか?」
「…私、まだ着替えてないけど…。」
「構わない、そのままで。誰も居ないし。」
そう言いながら、彼が布団を畳んで押入れに仕舞った。

食卓に並んだ朝ごはんはご飯とお味噌汁と玉子焼きにほうれん草のお浸し。純和風だ。
「いただきます。」
二人で向かい合わせに座って合掌。炊き立てのご飯の匂いがとてもいい匂い。
「食べ終わったら、城北公園に行こうな。まだ、咲き始めだとは思うが。」
「うん。お天気だし、きっと気持ちいいと思うよ。」
お味噌汁の出汁の味が美味しい。薫君、毎日早起きしてこんな朝ご飯を食べてるんだなって、今日初めて知った。もう一年半も一緒に居るのに、なんか感動。
「薫君、お味噌汁がすごく美味しい。」
「そうか?今日は手抜きせずにちゃんと出汁を取ったからな。」
彼もお椀を持ってお味噌汁を飲んでいる。
「毎日朝ご飯作ってるの?」
「まぁ、ほぼ毎日かな。母が夜勤で居なかったり、居ても寝てたりするから。父は朝早いから食パンとコーヒーで出て行くことが多いが、弟と妹にはしっかり食べさせたいからな。」
「へぇ…。もし、薫君が起きてこなかったらどうするの??」
「そのときは勝手に食パン食べて出て行っているな。もちろん俺もそうなる。」
「薫君みたいなお嫁さんが居たら幸せだなぁ。ふふ。」
「おいおい、嫁扱いか…。君の作った朝食も食べてみたいけどな。」
「うーん、私が作っても多分、ハムエッグとトーストで終わっちゃうよ?」
「構わないさ。食事、人に作ってもらうってだけで幸せだから。」
「じゃあ、今度私の部屋に泊まりに来て。頑張る!」
「そうか。もうすぐ一人暮らしだもんな。」
「うん。もう今のマンションに荷物はほとんど無いんだけどね…。
三十日に私が引っ越して、翌日に両親が上海に。一人暮らし、不安だな…。」
「大丈夫。いざとなれば俺が駆けつけてやるから。そのためにこの近くにしたんだろう?」
「そだね。両親にはなんでそんなところに?って最初は言われたけど。」
「まぁ、大学からは離れているからな。」
彼がふふっと笑う。彼はとっくに食べ終わっていて、私が食べ終わるのを待っていることに気がついて、最後の一口を慌てて食べた。
「…ご馳走様でした。」
「…お粗末様でした。さて、洗い物しておにぎり作るかな。」
そう言って彼が立ち上がる。
「作ってくれるの?」
「ああ。君は出かける用意をするのに少々時間が掛かるだろう?」
「そだね…。じゃあお言葉に甘えて。お願いします。」


◇◆◇


身支度が済んで、出掛ける用意をしてリビングに入る。
「桜、もう出掛けられるか?」
犬と遊んでいた薫君が立ち上がった。
「うん。」
「じゃあ、行こうか。お前達は留守番だ。夕方、たっぷり散歩に連れて行ってやるからな。」
尻尾を振る犬達をなでてなだめる。

二人で玄関のドアを開けて外に出る。
「行ってきます。」
「お邪魔しました。」

昨日この家に入るときの服と、今この家から出るときの服は同じ。
見た目は同じだけど、昨日までの私達と今日からの私達は違うと思う。
セーターの下には彼が残した印がある。大人のドアを開けて一歩踏み込んだんだ。
薫君のことがもっともっと好きになった。
彼が私の一部分になったような感覚。
一夜を共に過ごしたんだなって思うと、なんだかちょっと照れくさい。
きっと彼も同じ気持ちだと思う。
彼を見つめていたら、彼も私を見て微笑んだ。

「あぁ、また遊びに来いよ。」
「うん。」
薫君は家の鍵を締めて、自転車を出した。
「ほら、荷物貸して。」
私の鞄をヒョイと持って、前籠のリュックの上に載せた。
彼がスタンドを上げて自転車に跨る。私も後の荷台に乗る。
「さて、行こうか。ちゃんと掴まってろよ。」
彼が力を込めて自転車を漕ぐ。自転車は暖かい春の空気の中を滑らかに滑り出した。


◇◆◇


公園の中を自転車を押す彼と並んで歩く。
まだまだ満開ではないけれど、ほのかに空気が桜色のような気がする。
「すっかり春だな。君が生まれた日もきっとこんな暖かい日だったのかもな。」
彼が頭上の桜の花を仰ぎながら言う。
「桜か…。君にぴったりの名前だな。」
「うん…。私も桜の花、大好き。ありがとう。」

桜の木の枝が広がる下にシートを敷いて座る。
枝の向こうの薄い青色の空を見る。
淡いピンクとのコントラストがとても綺麗。
程よく日が照って、太陽の匂いと草の匂いもする。
「気持ちいいね。」
「ああ。」
彼が優しい顔で空を眺めている。

…薫君、大人になったなぁ…。
子供っぽい私が言うのもおかしいけど、初めて会ったときからしっかりしてて大人っぽかったけど、いつの間にそんなに優しい顔ができるようになったの?
薫君が言うことはいつも真っ直ぐで、正しくて。
完璧すぎて崩せない要塞みたいだと思ったこともあった。
彼に追いつきたくて頑張ってた私。そんな私をヒョイと持ち上げてくれる彼。
彼は私のことを大事にしてくれて、言葉でも伝えてくれて、信じてたけど。
でも、私の心の奥底深くは不安で不安で。あなたが私を認めてくれないんじゃないかって。
あなたの困った顔を見るのが正直怖かった。呆れて私を置いていくんじゃないかって。
私に対してだけじゃない。他の人にも気を許した顔をしたところを滅多に見たことがなかった。
確実に物事を遂行する頭脳。彼は何の気なしに弱みを他人に見せたりしない。
でも、それが彼の弱さを隠す仮面だと気付いたのはもっと後だった。
自分の弱さも他人の弱さも受け入れられるようになったんだね。
…だから、そんなに優しい顔ができるんだね。
私はまだまだ頼りないけど、あなたと一緒に歩いていきたい。支えたい。

「桜?」
「ん?」
「何考えてた?」
「んー?当ててみて?」
「そうだな…。『薫君、かっこいいな♪』とか?」
「やだ、もう!」
「冗談だ。じゃあ世界情勢だ。円高だしな。」
「違うよ。もう。」
茶化されて膨れる私を見つめて、彼が黙った。
「…桜、君もすっかり大人になったな。」
「え…。」
何で分かったの?
「目は口ほどにものを言うとな。」
「うっそだぁ!」
「はは。当たりか!すごい偶然。」
彼が屈託の無い笑顔で笑う。
「君は、危なっかしいところがたくさんあるが、俺のことを受け入れてくれた。その優しい笑顔で俺を受け止めてくれた。
ちょっとやそっとじゃ動じなくなっただろう。そのしなやかな振る舞いが俺にはとても眩しい。」
「…。」
彼が優しくキスをした。
「今日は桜日和だな。」
「そう、だね。」
「桜、これからも俺と一緒に居てくれるか?」
「うん。もちろん。あなたが私を必要としてくれるなら、ずっと。」
「…また、十年後、ここに一緒に来よう。」
「十年後??」
「あぁ。俺ももっと大人になっているだろう。十年後も一緒に居れたら…そのときは。」
「なに?」
「今、聞いてもいいのか?」
「??」
「仕方ないな…。」
彼が後ろ頭を掻いてバツの悪そうな顔をした。そして真面目な顔をすると、私を真っ直ぐ見つめて言った。

「十年後、一緒に居れたらそのときは、…結婚しよう。」

思いも寄らない言葉に驚いた。そんな先の話、どうなるか分からないじゃない。
でも、薫君とならそんな夢を見てもいいな。一生、一緒に居れたらいいと思う。
「…はい…。…ちゃんとお嫁に貰ってくれなきゃ嫌だからね。」
「あぁ。任せておけ。」
泣きそうな私の顔を見て、彼が私の髪をくしゃくしゃと混ぜた。
「おにぎり、食べようか?」
「うん!食べる!」
泣き笑いだ。連られて彼も泣き笑いっぽい。

ホントに今日は桜日和。私日和。


−終−

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1.出会い
<49.桜日和(前編)(全年齢ver)
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2010/12/5  23:36

投稿者:おるん

>ユキさん
ありがとうございます☆
拙い小説ですみません(^^;
にしても、この量を三日で読み切るなんて凄すぎます!!!
私も高校は女子校で吹奏楽三昧で超地味ジミでした。www
なので、この小説は完全にドリームなのですよ。w
(てか、こんなに良く出来た18歳男子なんか居ないよね!)

ユキさんのブログもステキです♪
私も手芸が好きなんですけど、かなり雑把なので出来はイマイチw
ぜひユキさんを見習ってステキな作品を作りたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

2010/12/5  22:35

投稿者:ユキ

読み始めたら止まらなくなって、3日ほどで読み切りました。
なんか仕事中にまで薫くんと桜ちゃんの続きが気になるほどにハマっちゃいました^^;
ほんとこんな小説が書けるなんてすばらしい〜!

私自身の学生時代が地味だったので、こんな青春いいなぁ〜、と羨ましい気持ちでした。最後を読み終えた今、とてもさわやかな気持ちです。ありがとうございました。
番外編も楽しみにしておりま〜す。

ウェブカレの方には載せてませんが、ブログよろしければのぞいてやってくださいませ。


http://ameblo.jp/kurukuru915/

2010/10/28  12:38

投稿者:おるん

>紫さん
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最後はほんわかでしたが、涙が出るほどとはっ^^;

この二人、これからどうなるのか。
一生、一緒に居ることになると想定してます。
そのうち、薫君が桜ちゃんのお尻に敷かれてしまうでしょうね。w

2010/10/27  19:59

投稿者:紫

なんか、最後の方、感動して涙が出そうになりました。
うーん、ハッピーエンドっていいなぁ〜。
10年後の夢を見られる青春時代に戻りたいっ!

ただ「好き」という感情から一歩大人になって、しっかりお互いを受け入れていこうという、二人の決意のようなものを感じました。
10年後も一緒にいられるといいね♪

連載、お疲れ様でした。

2010/10/21  1:54

投稿者:おるん

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
pixivとmixiでは大分前に連載が終わっていたのですが。。。

いや、ホント長かった。
こんなに長い小説を書いたのは初めてでした。
なんとかそれっぽく終わってよかったです。
無理やり終わらした感も漂ってますが^^;

まぁ、文章がつたなかったり、
キャラの設定が甘かったり、
お話に矛盾・ご都合主義があったりして、
腑に落ちない部分なんかもあるとは思うのですが。。

今後も番外編だったり、短編だったりを少しずつ書けたらいいなと思います。
あと、挿絵も入れれたらな。
今後ともよろしくお願いします。

ウェブカレな彼女さんたち、サイトでも是非構ってくださいね。
pixiv、mixi、twitterもやってますから、奇特な方、お気軽に構ってやってください。^^

2010/10/21 小塚彩霧 as 奥崎おるん

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