桜薫る 48.卒業式

2010/10/15  2:11 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇48.卒業式


いよいよ卒業式。天気も良くて小春日和。
去年は私達が送る方だったけど、今年は私達が送られる方。制服の左胸に赤い薔薇の造花を挿した。
一人ずつ名前を呼ばれて、壇上で卒業証書を受け取る。
送辞を生徒会副会長の川原君が読んでくれた。生徒会やクラブ、校内行事での先輩達の思い出なんかを思い出した。
答辞は生徒会長の中手川君が読むものだと思っていたのだけど、中手川君が『これは是非、通年首席で伝説的生徒会長だった草間君に。』と大袈裟な文句をつけて譲ってくれたらしく、薫君が読んだ。
薫君は淡々と白薔薇学園高等学校での思い出を話し、教職員、後輩、保護者達に感謝の意を述べた。
去年と同じく仰げば尊しを歌う。
これで高校生活が終わるのだと思うと涙が出た。
白薔薇学園高等学校にはみんなの半分の一年半しか居なかったけど、かけがえのない思い出がたくさんできた。
生まれて初めて『この人じゃなきゃ!』と思う人が現れて、彼と一緒の時間を過ごすようになった。
大学は別々になるけど、これからもきっと彼と一緒の時間を過ごすだろう。

式が終わって、例年どおり校庭に出る。
クラブに入っていた人は後輩達から花束を貰っていた。
薫君に呼ばれて一緒に居ると、中手川君と晶ちゃんも来て、そこに川原君と杉井さん、それと現役員の二人がやって来た。
「中手川会長、安田さん、ご卒業おめでとうございます。」
「草間さんもご卒業おめでとうございます。」
それぞれ花束を受け取って、お礼を言っている。微笑ましいなと思って見ていると杉井さんが私の前に立った。
「谷本さんも!」
そう言って私にも花束をくれた。
「え?いいの??」
「もちろんじゃないですか!役員ではなかったですけど、たくさんお世話になりましたから。」
「ありがとう。」
嬉しくってまた泣きそうになる。薫君も中手川君も晶ちゃんも私に微笑みかけてくれた。

「それにしても、草間前会長、答辞、かっこよかったですよ。」
「あぁ、ありがとう。」
薫君は褒めてくれた川原君に淡々と返す。
「ちぇっ、草間、もう少し嬉しそうにしろよな?一番おいしいところを譲ってやったんだぜ?」
中手川君がふてくされる。ついつい面白くって口を挟む。
「うふふ、草間君、照れてるんだよ?これで。」
「なっ、バカ!そんなことあるか!」
薫君がちょっと顔を赤らめて否定した。
「ほらね!」
あははとみんなで笑う。薫君はつっけんどんに開き直って言う。
「あぁ、当然だ。かっこよかっただろう?!」
それがまた面白かったけど、笑うともっと怒りそうだったから、みんな笑いをかみ殺した。


◇◆◇


食堂で謝恩会が催された。
立食パーティ形式でアリサやアキたちと一緒に喋りながら食事をする。
先生や友達達と写真を撮ったり、連絡先の交換をしたりする。
私は春から一人暮らしになることが決まっているから、その住所を教えたりした。

「谷本さん、卒業おめでとうございます。」
先生が手にグラスを持ってやってきた。乾杯とグラスを持つ手を少し上げた。
「あ、綾川先生。ありがとうございます。」
「ふふ、白薔薇学園での一年半はいかがでしたか?」
「はい、とても楽しかったです。」
「四月から大学生ですね。」
「はい、お蔭様で。」
「弟とも仲良くしてもらってありがとう。お陰で留年せずに卒業してくれて、兄として嬉しいです。」
「では…。」
先生が去り際に耳元で囁いた。
「この後…、二時頃に準備室に一人で来てください。最後のコーヒーをご馳走しますから。」
「はい…。」

ちょっと嫌な予感がしたものの、無視するわけにも行かず、薫君には綾川先生に呼ばれたと伝えて食堂を後にした。
最後の国語準備室。コンコンとドアをノックする。
返事がない。
「あの、谷本ですけど…。」
するとカチャっとドアが開けられた。
「谷本さん、どうぞ。」
先生に促されて部屋に入る。
「さて、とっておきのを入れますからね。」
先生がコーヒー豆を取り出してミルで挽いている。
しばしガリガリと豆を挽く音が響く。コーヒーの香りが部屋に広がる。
ドリッパーにフィルターをセットして挽いた豆を入れて、ケトルのお湯を静かに注ぐ。
コーヒーの事は良く分からないけれど、先生の仕草が丁寧で、そういう作法があるんだろうと思った。
カップに注いだコーヒーを私の前に置いて、隣に座った。
「どうぞ、召し上がれ。」
「いただきます。」
甘いコーヒーの香り。苦味と酸味のバランスが私好み。先生のコーヒーの好みは私と似ているのかしら。
カップのコーヒーを半分くらい飲んだところで先生が話し出した。
「谷本さん…、草間君とはいかがですか?」
「え?いかがって…、ふ、普通です。」
カップをソーサーの上に置いて視線を自分の膝に落とす。
「彼、ああ見えてかわいいですよね。強がるところなんか特に。」
先生が私の顔を下から覗き込む。
「せ、先生…?」
「以前、彼に忠告したのですがね?」
何を?と聞きたかったけど声が出ない。
「卒業したら覚悟しておきなさいと。」
どういう意味ですか?…コーヒーを飲んでいるのに急激に喉が渇いて声が出ない。
「私は、竜士ほど諦めが良くはないのですよ?」
心臓がドキドキしてきた。先生…!薫君…!!!
先生が私の後頭に手を置いた。これってもしかして…?もしかしなくても!!!
座ったままでどうしていいかわからなくて、前と同じように固まってしまった。目を瞑るのが精一杯だった。
先生の唇がそっと触れた瞬間にドアが勢いよく開いた。


◇◆◇


そろそろ謝恩会も終わりに近づく。鞄を取りに行って帰ろう。
桜のヤツ、まだ戻ってこない。遅いな。
綾川先生のところ…?そういえば、以前…。
『卒業したら覚悟しておきなさい。…なんてね。冗談です。』
ちょっと待て!!まさか!!

食堂を飛び出し、渡り廊下を走り抜けて一般教室棟に入る。
階段を駆け上がって二階の国語準備室の前に来た。
息を整えながら、中の様子を伺う。

なにやらぼそぼそ話す声が聞こえる、
「以前、彼に忠告したのですがね?卒業したら覚悟しておきなさいと。
…私は、竜士ほど諦めが良くはないのですよ?」
おい!?

バターン。

勢いよくドアを開ける。
部屋の奥で、桜が壁に向かって座っていて、その奥に先生が並んで座っていて、…桜にキスしていた。
「桜!!」
先生が彼女からそっと離れる。
「おや、ノックはしてもらいたいものですね。」
こちらを見てニヤリと笑った。
「先生!…いや、綾川!!桜に何をするんだ!」
「ふふ。見ての通りですよ。…覚悟しておきなさいと言ったでしょう?」
桜の元に歩み寄って、彼女の手を取り、椅子から立たせる。
「桜!遅いからと思って様子を見に来たら!!」
彼女の手は汗ばんでいて、表情も固まっていて、立ち上がるのがやっとの状態だった。
彼女と先生の間に入って、綾川と対峙する。
「いい加減、生徒にちょっかいを出すのを止めませんか?」
椅子に座っている綾川を睨むが、ヤツの表情はまだまだ余裕。元々不良だっただけはあって、睨みだけでは威圧できないか。
「ふふ。谷本さんはもうここの生徒ではなくなりますからね。」
くそっ、この兄弟は!揃いも揃って!!
「…以前ここに来た時はまだ、俺にはどうこう言う資格がなかったが、今は違う。」
「ほう。」
「桜は俺のオンナだ。無用なちょっかいを掛けるのは止してもらおう。」
「ふふ。」
「…何がおかしい?」
「いえ、何もおかしくなんかありません。君もなかなか言うじゃありませんか。」
「俺はこの状況で黙っていられるほど人間ができていないんでね。」
「ほう、いつもの敬語はどこに行ったんでしょうか?…男として対等に見てくれていると思えば良いのかな?」
「そっちこそ。いい加減、本性出しても構わないんだぞ。」
「本性?ふぅん。じゃあ遠慮なく。」
そう言って綾川が椅子から立ち上がった。俺よりもヤツのほうが上背が十センチくらい高い。見下されている格好だ。
ヤツは俺の顎を掴んで引き上げた。
ちょ、ちょっと待て!この格好は?
「な、何を…?」
「ほら、以前、新聞部が言っていたでしょう?『綾川先生と草間会長は仲が悪いように見えて、実は付き合っているのではないですか?』って。」
「え!?」
なんで、そんなことを今?…綾川、両刀使い!?
「君が困る顔も見てみたくてね。」
「や、やめろっ。」
予想外の事で動揺した。反抗する声が震えている。
「…なーんてね。ふふ、流石にそんな趣味はないよ。」
ヤツが俺の顎から手を離して、クスっと笑った。
「君が頼りないことを言うなら、彼女を奪ってやろうと思っていたけど、…上出来だな。」
自分が男にキスされるかと思った恐怖。悔しい。まともにヤツに向き合えなくて視線を右下に落とす。
「くっ、先生にはやっぱり敵わない…。」
「そうでもないよ?実の弟の竜士でさえ、こんなに食って掛かってきたことはないから。」
ほう。弟は兄貴には反抗しないのか…。ヤツのみぞおち辺りを見つめながら聞く。
「それは褒め言葉だと思っても?」
「ああ、そうだよ。褒めてるよ。」
褒められた…。この人に、今までまともに褒められていると思ったことなんてなかったのに。
「自分も、先生の事、三年間尊敬してました。色んな本を読んでいて造詣が深く、感性も鋭い…。」
「それはそれは、ありがとう。また機会があれば家に遊びに来ていいから。」
「…。」
「草間君、谷本さん、卒業おめでとう。ふふ、やっぱり、君達はお似合いだよ。これからも仲良くね。」
余裕の表情でそんなことを言ってのける。
最初から本気じゃなかったんだな。俺がこうするだろうってわかってて中途半端に手を出しやがって。
またもや手のひらの上で転がされたようで無性に腹が立つ。
「…ありがとうございます。行こうか、桜。」
振り返って、桜の手を取った。桜も先生にお礼を言う。
「綾川先生…、ありがとうございました。それとご馳走様でした。」
「こちらこそ、ご馳走様。」
先生がにこやかにそう言った。
「くっ!」
何がご馳走様だ!!俺の桜の唇を!
横に居る桜は顔を真っ赤にしている。
部屋から出て、開けっ放しのドアを静かに閉めた。
「桜…もうちょっと早く乗り込んでおけば良かったな。遅くなってごめん。」
「ううん、私こそ…ごめんなさい。」
「桜、こっち向いて。」
綾川のキス。そんなものなかったことにしてくれる!
準備室の前の人気のない廊下。右手を桜の髪に掻き入れ、その唇に俺の唇をぐっと押し付ける。
「これで帳消しになるか?」
ちょっと声を荒げて言う。綾川には負けない。
「ん…、もう一回くらいしてくれたら帳消しになりそう。」
桜がとろんとした目で俺を見て、そう囁いた。仕方がないな。
「調子に乗るなよ…。」
そう言いながら、左手で彼女の右手を握り、今度は優しくキスをした。
彼女の手の力が抜ける。俺が一番、君が好きなんだ。だから、ほら、俺のキスが一番気持ち良いだろう?


◇◆◇


そのまま三階に上がり、教室から鞄を取ってくる。記念品なんかをたくさん受け取ったので、結構な荷物だ。
「桜、今日、ご両親はいらしていたのか?」
「うん。お母さんが来てたよ。先に帰ったけど。お父さんは少し早めに帰ってくるって言ってた。」
「突然なんだが、君の家に挨拶に行こうと思って。」
「え?」
「もうすぐご両親が引っ越してしまうだろう?そうするとなかなか会う機会が作れないから…。」
「挨拶って…。」
「いや。そんな大したことはしないつもりだが、付き合っている相手が居るのなら、どんな人間か分かっていた方が安心するかと思って…。」
「あ…。じゃあ、お母さんに電話してみるから、ちょっと待ってね。」
昇降口で靴を履き替えて、上履きを袋に入れて鞄にしまう。
携帯で家に電話をしたらお母さんが出て、説明すると驚いていた。
「お母さん、待ってるからいつでも良いって。でも、お父さんには刺激が強すぎるから帰ってくるまでにしてって。」
「そうか…。突然だからな、仕方ないか。」

彼の自転車で家まで向かう。荷物がたくさんで漕ぎ辛そうだったけど、無事に辿り着いた。
「お母さん、ただいま。」
「桜、お帰り。」
奥のリビングからお母さんが出てくる。
「こんにちは、初めまして。草間薫といいます。」
「初めまして、桜の母です。わざわざご丁寧に。どうぞ上がって。」
彼が家に上がり、脱いだ靴を揃えた。
「突然すみません。しかも学校帰りで手ぶらなんですが…。」
「あぁ、良いのよ。学生なんだから、気にしないで。」
そう言ってお母さんが奥に案内して、ダイニングテーブルを指す。
「散らかっててごめんなさい。こっちに座ってもらおうかしら?」
私と薫君が並んで椅子に座った。お母さんがお茶とお茶菓子を出してくれた。
「大したものがないんだけど…どうぞ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
そう言って薫君がお茶を一口飲んだ。
「…あの、谷本さんのご両親がもうすぐ引越しされると聞いて、ご挨拶に来る機会を逃してしまいそうだったので…。」
「あぁ、それで突然。うふふ。」
お母さんが緊張する薫君を見て笑う。
「実は一年半ほど前からお付き合いさせていただいていて、ご挨拶が今頃になってしまったのが申し訳ないのですが。」
「あはは、そんなに気にしなくて良いのよ。こうして来てくれただけでも嬉しいわ。」
「ありがとうございます。」
「あら?そういえば、去年、学校で会ったわよね?」
「ええ。チラッとだけですが…覚えていてくださったんですね。」
「今思い出したの。あの時、綺麗な挨拶をする子だなって…。」
「そうですか…。」
「もしかして、草間君は板橋の辺りに住んでいるのかしら?」
「え?はい。」
「あぁ、なるほど。それで下宿先をね…。」
急に予期しないことを聞かれてキョトンとする薫君。お母さんは私を見て微笑んだ。
「お母さん。草間君、凄いんだよ!生徒会長を一年半やってて、成績も三年間首席だったって!」
「…もしかして、あの答辞の人!凄いわね!進学先は決まったの?」
「いえ、まだ…。前期試験の発表待ちで。その後、後期試験もありますし…。」
「お母さん、草間君、東大受けたんだよ。」
「え!?」
お母さんが東大と言う言葉に驚いて絶句した。
「やめろよ。落ちたら恥ずかしいだけじゃないか。」
そう言って薫君が私の腕に肘をぶつけた。
「多分、大丈夫だって。」
「ったく…。」
小声で小競り合いしている私達を見て、お母さんが笑う。
「ふふふ、じゃあ、まだ勉強する時間が必要なのね。わざわざ大切な時間を割いてくれてありがとう。」
「いえ、こちらこそ急に押しかけてしまって。」
「草間君が大学に無事進学できたら、桜の事、よろしくお願いしますね。この子、甘やかし過ぎて何もできなくて。」
「はい…。自分ができることであれば。」
「お母さん、何もできないってヒドイ!」
「ホントにできないじゃない。明日からお料理の特訓だからね。」
「えぇぇ。」
「さて、草間君はお家に帰らないと。ね?」
「あ、はい。お邪魔しました。」
「真面目そうな人で良かったわ。桜、彼を大事にしなさいよ!」
そう言ってお母さんが席を立つ。薫君も席を立って玄関に向かう。
「今日はわざわざ来てくれてありがとう。受験がんばってね。」
「草間君、またね。」
「はい。お邪魔しました。失礼します。…またメールするから。」
そう言って彼が私の家を後にした。

三日後、薫君からメールが来た。無事合格、おめでとう!

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1.出会い
<47.恋愛の神様 49.桜日和(前編)(全年齢ver)>
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2010/10/21  21:52

投稿者:おるん

>紫さん
ありがとうございます。www
うふふ、楽しんで頂けて何よりです。^^
先生は美しいからこんなに黒くてもサマになる。www
といっても、先生も普段は優しい・・・かな??あれれ??
普段から、自分がモテることを十二分に分かっていらっしゃいますからね。w
思っているほどのプレイボーイではありませんが、
薫君なんかと比べると、余裕でプレイボーイですよ。w
また、番外編も楽しみにしていただけると嬉しいです。^^

2010/10/21  20:22

投稿者:紫

うぉぉぉーーーっ!
先生・・・先生っ!いいんですかっ!こんなことして。www
でも、なんか非常に萌えましたっ!
会長ではなく、先生に対して。www
かおるさん宅の先生は、超黒いので、ウチの先生と全然違っていて、それがとても面白く、ドキドキしながら読んでしまいました。

2010/10/15  2:21

投稿者:おるん

すみません。
色々詰め込みすぎの回です。
親への挨拶はほんとにおまけで付け足しなんですが、薫君ならきっと挨拶に行くに違いないと。w
で、いよいよ次回、エロ小説。そして最終話。w
ほんのりハッピーエンドで終わります。

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