桜薫る 44.模試

2010/10/11  22:59 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇44.模試


夏休みが終わって、学校で全国模試を受験した。
この模試の結果とこれまでの定期考査の結果を見て、志望校を最終決定する。

「薫君…、どうだった…?」
「これじゃ、わからないな…。」
「??」
結果シートを横からそっと覗き込む。
「うわっ…。」
驚きの余り、声を出してしまった。薫君、凄い…ほとんど満点だ。
校内の度数分布表も一人だけ突出していて偏差値は七十を超えているのは間違いない。
全国偏差値でも八十くらいありそう。
「…一応A判定になっているが、これでは心許無いな…。」
「どこが??」
「満点の人数。結構多いじゃないか…。問題が易し過ぎで参考にならないだろう。」
簡単過ぎ?レベルの違いに絶句してしまう。
「ところで、桜はどうだったんだ?」
「う。薫君のを見た後に私の成績なんて話す気になれないよ。」
「…すまないな。君の指導をするにあたって、それを見せてもらいたいのだが?」
心境複雑。私のこと馬鹿にしたりしないと思うけど、万が一、呆れられたらどうしよう。恥ずかしいよ。
歯を噛み締めながら結果シートを彼に渡す。
「どれ…。ふむ。まぁ頑張ったんじゃないか?B判定か…。」
「うん…。」
「えぇっと、国語はまあまあか。英語がまだ足りないな。もし他の日程で受けるなら日本史も押さえないとな。
…数学は壊滅か、ちゃんと覚えろ。試験科目では無いにしろ、これでは留年するぞ…。」
「ご、ごめんなさい…。」
薫君が小さくため息をついた。いつも教えてもらってるのに、実力テストになると範囲が広すぎてダメだ。
「過去問の記述問題を解かせたりしていたが、しばらくはセンター対策も兼ねて試験科目以外の勉強も追加するか…。」
「よろしくお願いします…。」


◇◆◇


模試の結果が帰ってきた翌週。放課後に三者面談が行われる。
私の直前が薫君の番だった。
お母さんが早く着いて、教室の前の廊下で二人並んで下の庭を見ていた。
「桜、あなた、大丈夫なんでしょうね?お母さん、先生に叱られるの嫌だからね。」
「うーん、頑張ってはいるけど…。」
「毎日、帰ってくるのが遅いけど、…図書館で勉強って、本当に勉強してるの?」
「してるよ!」
「塾にでも行ったほうが良かったんじゃない?」
「うん…、でも…友達が教えてくれるから…。」
「お友達だって、自分の勉強があるでしょう?それに、やっぱりプロじゃないんだし。」
「うん…。」

そこに薫君がやってきた。お父さんと一緒に。
お父さんは高校の先生だって言ってた。三者面談は大抵母親が来るから凄く目立つ。
スーツ姿のお父さんは、薫君よりも少し背が高い。髪を短くスポーツ刈りにしていて浅黒く日焼けしていて精悍な様子だけれど、その眼鏡を掛けた目元は薫君に似ていて、知的な感じもする。
「こんにちは。」
彼のお父さんが私達に声を掛けてくれた。
「こんにちは。谷本と申します。娘がお世話になっております。」
お母さんが振り返って挨拶した。私の頭も抑えて挨拶させる。
「こ、こんにちは。」
そんな私を見て、彼のお父さんが微笑みながら言う。
「草間と申します。…いいえ、こちらこそ愚息がお世話になっております。薫も挨拶しなさい。」
「こんにちは。谷本さんにはいつもお世話になっています。」
彼がお母さんに綺麗な姿勢で挨拶した。
彼が澄ました顔で私をチラッと見た。なんだか照れる。
そのとき、前の人の面談が終わって出てきた。
さっきと同じように保護者同士が挨拶を交わしている。
しばらくして教室の中から「草間さん」と声が聞こえて、薫君達は教室に入っていった。

またお母さんと庭を眺めて待っている。
さらに小言が続くかと思ったけど、お母さんは何も話さなかった。
五分程して、薫君達が出てきた。彼のお父さんが薫君に彼に話しかけていた。
「薫、志望校、それでいいのか?無理しなくて、こだわらなくてもいいんだぞ?」
「父さん、俺はこだわってなんかいない。本当にそこに行きたいし、行けると思っている。」
「そうか…。」
そうして二人が私達に会釈をして去っていった。
「父さん、俺、図書館で勉強するから先に帰って。今日は来てくれてありがとう。」
真ん中の階段の前で彼がそう言って彼のお父さんと別れた。彼はそのまま校舎の端に向かって歩いていった。
教室の中から「谷本さん」と呼ぶ声がした。

お母さんと教室に入る。
担任の山中先生とお母さんが挨拶を交わしている。「さあどうぞ座ってください。」と促されて座る。
最初は他愛もない話で、私の家での様子なんかを聞きながら先生が手元の成績表やら進路調査票やらを机に広げる。
「谷本、今回は結構良かったじゃないか!夏休み、頑張ったんだな。この調子なら志望校も手が届きそうだ。」
「ありがとうございます。」
「でも…、本命はもう少し下のランクにした方がいいんじゃないか?」
「…。」
「そうなんですか?」
沈黙する私を尻目にお母さんが先生の言葉に食いつく。
「そうですね、谷本さんの目指す学校は英語が特に難しい学校ですから…。似たようなレベルで他の学校も探してみたほうが。」
「…。」
今度はお母さんも黙ってしまった。
…確かに、この大学を志望した理由って大したことはなくて、ただ、耳障りとイメージだけで決めてしまったから、何のこだわりもないし、変えてしまっても構わないのだけど。
でも…もうここの学校に通う自分のイメージができている。頑張って勉強しているし、薫君にも見てもらってるし、今更志望校を変えたくない。
「先生、私、この志望校のまま頑張りたいです。滑り止めを一校だけ決めてきます。」
「桜!あなた、よく考えなさい!」
「考えたって一緒だもん!この学校に行きたい!」
「そ、そうか、谷本。まぁ、まだ挽回できるレベルだから。死ぬ気で頑張れよ。」
「はい…。」
先生が資料を閉じながら聞く。
「他、聞きたいことや気になることは?」
お母さんが先生に聞く。
「あの、塾などに通わせたほうが良いのでしょうか?」
「そうですね…、我が校では塾に通わなくとも十分に勉強できる環境を整えているつもりですが、クラスでも塾に通う生徒は多いです。苦手科目に絞って通われるのも良いかもしれませんね。」
「そうですか、ありがとうございます。」
このままだと、お母さんは私を塾に通わせるだろう。塾なんかに行くよりも、彼に教えてもらったほうがわかりやすい。もちろん、彼の都合によるのだけど。
「先生、草間君は塾に通ってないですよね?」
「ん?そうだな、塾に通っているとは聞いてないな。彼ほどできるなら、特別なところじゃないと無理だろうしな。」
「…。」
ささやかな反抗。これくらいじゃお母さんの気は変わらないだろうけど。
「それだけか??じゃあ、終わりにしようか?お母さん、今日はわざわざありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。娘をどうぞよろしくお願いします。」
お母さんが立ち上がって深々と先生にお辞儀した。「では失礼します。」と私の背を押して教室を出る。
次の人が廊下で待っていて、また保護者同士挨拶している。

教室の前を離れて、お母さんがため息をつきながら言う。
「塾に通うか家庭教師をつけた方が良いわね。」
「…。」
無言の私を見て、お母さんの表情が険しくなる。
「ねぇ、勉強を教えてもらっているお友達って言うのは…。」
「な、何?」
内心ヒヤッとした私を尻目に、お母さんははぁっとため息をついた。
「…とても勉強ができる人なのね。」
多分、勉強を教えてくれているのが薫君だと気付いたに違いない。
「え?う、うん。学校の先生に教えてもらうよりわかりやすいから。」
「そう。」
お母さんの声が優しくなった。あぁ、ただの友達じゃないってバレてると思う。
「…お母さん、私、勉強して帰るから…。もう帰って…。」
「…家に帰ったら、お父さんと三人でちゃんと話そうね。」
「うん。わかってる。」
ごめんね、お母さん。でも心配しないで欲しい…。


◇◆◇


お母さんと別れた後、彼が居る図書館に向かった。
「薫君。」
呼ばれて振り向いた彼は少し機嫌が悪そうだった。でも、次の瞬間、私の顔を見て立ち上がった。
「桜??」
ちょっと来いと図書館から連れ出される。人気のない階段で話し始める。
「どうした?泣きそうじゃないか?」
「うん…。面談でね、志望校を変えたほうが良いって。」
「…まぁ、先生ならそう言うだろうな。」
「薫君に見てもらってるのに、不甲斐なくて。」
「俺は…桜ならできると思っている。」
「…ホントに?」
「あぁ。もちろん頑張ってもらわねばならないが。」
「それでね、お母さんが心配して、私を塾に入れるかもしれない。」
「…それは、ご両親と相談することだな…。俺がとやかく言えない。」
「…そうだね。」
二人で黙り込む。薫君が図書館に戻ろうとする。
「ねぇ、薫君?」
「なんだ?」
「薫君もなんだか機嫌が悪かったみたいだけど?」
「…大したことじゃないから。」
視線を逸らして吐き捨てるように言った。
「私には何も言ってくれないの?」
私の声を聞いて、彼が目を伏せて話し始める。
「…父が俺を心配してくれていて、ありがたいことなんだが。」
「うん。」
「父は俺が無理をしていると思っているみたいで。確かに無理していないと言えば嘘になるが。」
「…。」
「昔から父は俺に異常なまでの期待を掛けていて。それが発端で中学であんなことになったのだが…。」
「…。」
「小学生の頃、父に『俺は東大に行く』って言ったら、物凄く喜んでくれて。」
「…。」
「それが未だに嬉しくて頑張っている。はは、ホント子供だな。…なのに今日、こだわらなくていいって言われて少し腹が立った。それだけだ。」
彼が顔を上げて力なく笑った。
「そっか…。」
「さて、勉強しようか。…絶対志望校に入ろうな。」
「うん。」
彼がぽんぽんと私の頭を叩いた。そして二人で図書館に戻った。

◇◆◇

その日の夜、家でお父さんとお母さんと、三人で進路の話をした。
まだ明確に将来の職業を決めている訳ではないけど、興味ある分野であること、憧れのキャンパスであることを伝えて、志望校は変えないと宣言した。
お母さんは塾に通うように言ったけれど、これも自分で十分勉強しているつもりだから行かないと伝えた。
お父さんも怒るのかと思ったけれど、好きなようにすればいいと言ってくれた。

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1.出会い
<43.薫の誕生日 45.神頼み>
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2010/10/16  15:21

投稿者:おるん

>紫さん
ありがとうございます☆
確かに薫君の気持ちを考えるとなんだか切ない気分に。
中高生の頃ってこんな感じだったなぁと思います。
彼氏は居なかったけど(^^;)

2010/10/15  12:13

投稿者:紫

お父さんの期待に答えたくて頑張って勉強してきたことが、お父さんの一言で裏切られた気持ちになったっていうの、なんとなくわかります。
子供の頃って、家庭と学校が世界のすべてだから、親の一言とがすごく大きいですもんね。
思春期ならではの悩みがすごくよく伝わってきて、じーんとするお話でした。

2010/10/11  23:58

投稿者:おるん

彼氏・彼女とお互いの親が初対面。。。
めっちゃドキドキするシチュエーションですよね?^^;
幼馴染とかなら、もう知ってるからそんなことないだろうけど。

薫君、お父さんの期待に応えたくてってのが萌える。w
桜ちゃん、先生に啖呵切った。すげー。www
(まぁ、結局、滑り止めと本命で学科を日程変えていくつか受けるのですが。)
久々に受験生っていうお話でした。

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