桜薫る 42.夏の風物詩

2010/10/7  13:24 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇42.夏の風物詩


俺が生徒会役員として学校のイベントに関わるのは、実質、夏休み中に行われるこれが最後。
九月には体育祭の準備を手伝ったりするが、体育祭自体は十月に行われるから、そのときには新役員に代わっている。
さて、毎年恒例の肝試し大会。学年毎で三夜連続で行う。

一日目が一年生。二日目が二年生。三日目が三年生。
スタッフは夕方五時頃に集まって準備をする。
参加者は六時半頃から集まってくじ引きをし、日が暮れた七時頃から肝試しを開始する。
文化委員と有志に三日間、裏方の驚かし役をやってもらう。当番を決めて、三日のうち一日は一般生徒と一緒に参加してもらえることにしている。

順路とは違うところに通じる箇所や教室内に入るべきところの廊下を机で塞ぐ。桜と机を並べながら話していた。
「すまないな。」
「ん?ううん。構わないよ、驚かす側って言うのも面白いし。」
「まぁ、悪趣味だが、なかなか面白いな。」
「それに、最後の日は驚かされる側で参加してもいいんでしょ?」
「あぁ。」
「薫君も?」
「あぁ、俺は参加しないんだ。」
「そうなの?薫君と一緒が良かったのに…。」
「俺が指揮を執らないとな。」
「えぇ…残念…。」
「まぁ、そう言うな。」
「もしかして、すっごい怖がりだったりして?」
「ば、バカ言うな。驚かす方が暗い中でじっとしてなきゃいけないんだからな。」

日が暮れて、参加希望者が集まってくる。
男女ペアのくじ引きをして二分置きにスタートだ。男女の比が合わない時は先生にも参加してもらったり、二度入ってもらったりで調節している。
順路はこうだ。昇降口→二階視聴覚室→理科室→三階3-A教室→3-E教室→四階音楽室→美術室→美術室横の階段で一階まで降りて昇降口。音楽室のグランドピアノの上にあるカードを取ってくれば成功だ。
参加者ペアにはLEDライトを一つだけ持たせている。これで足元を見ろということだ。

七時だ。そろそろ最初のペアがやってくる。階下で悲鳴が聞こえる。
俺達は3-Aの教室で身を潜め、紐を持って誰かがやってくるのを待っていた。
「なぁ、この学園には七不思議があるんだ。」
「え?」
「この側の階段に幽霊が住みついてるらしい。」
「…。」
桜がコクッと喉を鳴らした。
「この学園が設立されて間もない頃、入学した直後に病で亡くなった生徒だそうだ。」
「かわいそう…。」
「あぁ、学園生活を楽しみにしていたらしく、代々、現役の制服を着て現れるらしいぞ。」
「…。」
「もしかしたら、ここにも現れるかもな。」
「う…。」
「ふふ、怖いのか?」
「…やっぱり夜の学校だしね、ちょっと気味が悪いよね…。」
「怖かったら…、もっと傍に来ても、いいんだぞ…?」
「ふふ、怖くなんか無いもん。」
「…ま、こんなのどこの学校でもよくある話だからな。」
コツコツと人の足音がする。
教室に入ってくるのがわかった。
今だっ!小さな声で合図を出して紐を離す。
天井に吊り下げていたシーツが落ちて、彼らを襲う。
バサバサバサっと布の擦れる音がする。カラカラとライトが床を転がっていく。
「きゃーーーっ!!!」
「うわぁぁぁっ!」
程良くもがいたと思うところでシーツの紐を引いて外してやる。
机の影からこちらが持っている青セロハンを貼った懐中電灯で照らすと、ペアの顔が引きつっていて二人抱きついていた。
放心状態の二人に小声で呼びかける。
「ライトを拾って早く行きたまえ。」
転がったライトを懐中電灯で照らしてやった。
二人が去って、堪えていた笑いがこみ上げる。してやったりだ。
「薫君、ホントに悪趣味なんだから。…私達も参加したらあんなカンジになるのかな?」
「どうかな?」
「薫君があんな顔するなら、凄い失態だもんね。そりゃあ、参加できないよね。ふふ。」
「ふん。でも恐怖におののく桜を見たい気はするな。」
「なんか意地悪。それにエッチ。」
「何考えてるんだ。バカ。」
「それは薫君でしょ?」
「シッ!次が来るぞ。」


◇◆◇


いよいよ最終日。
薫君を誘ったけれど、やっぱり参加してくれなくて。誰と当たるかわからないけど、くじを引く。
くじ番号は七十五番。かなり後の方だ。相手を探すと、相葉君だった。
「よっ!桜ちゃんが七十五番?やったね!」
「うん。よろしくね。」
「任せといて!もし怖かったら、ボクの腕にしがみ付いてて良いからね!」
「ありがとう。」
ふふ。薫君よりも頼り甲斐があるかもしれない。でもホントにしがみ付いてたら、薫君、どんな顔するんだろ?肝試しより、そっちの方が怖い気がする。

肝試しがスタートしてしばらく経つ。校舎の中から悲鳴が聞こえる。
それと続々と帰ってくる人たち。大体みんなちょっと血の気が引いてる。
結構質が良いイベント。怖がっている人が多くて、それでいて怪我人もなく失神する人もなくっていうのが凄い。
終盤に差し掛かってきて気付く。
「ねぇ、相葉君?」
「ん?なになに?」
「もしかして、私達、最後なんじゃない?」
「…そういえば、大体みんな終わった人ばかり…。あはは、まさかぁ。」
すると前の方から声が掛かる。
「七十五番!!」
呼ばれて前に行くと、LEDライトを渡された。落とされたり投げられたりしたようで、塗装が少し禿げてる。
「先輩達が最後ですよ。」
そう、スタッフの男子が教えてくれた。
「あはは…、やっぱり…。相葉君、頑張ろうね。」
「う、うん。桜ちゃん、任せといて。」
相葉君が私の手を握って前を歩く。
階段をコツコツ音を立てて上る。まだ前に人が居るはずなのに凄く静かだ。
視聴覚室の扉を開けるとビデオが動き出して大音量と共にスプラッタシーンが映し出される。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃっ。」
相葉君の凄い悲鳴。もしかして物凄く怖がりだったりするの?面白いというか、かわいい…。
そのまま順路どおり視聴覚室を抜けて次は理科室だ。
理科室に入ると骨格模型がカタカタ音を立てて動いている。
相葉君がゴクッと喉を鳴らす。
次の瞬間、実験台の影から白衣とお面をつけた集団が襲い掛かってきた。
「きゃぁーーーー!!」
驚きすぎて腰を抜かして尻餅をついてしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
相葉君!!声にならない声を絞り出したものの、彼は私の手を離して一目散に理科室から逃げていってしまった。
うそ…、信じられない…。
しばらくして、その集団が実験台の後に下がったものの、ライトを持たない私は這いながら手探りで理科室を出た。
「相葉君??」
廊下に出ても彼が居ない。仕方が無いので、そのまま順路どおり渡り廊下を渡って階段を上る。薄暗い校舎の中。ライトが無いと足元がおぼつかない。
次は3-Aの教室だ。多分、薫君が居るはずなんだけど…。
そっと教室を覗く。相葉君の姿は無い。
校舎中、誰も居ないみたいに静かだ。流石に怖い。
「か、薫君…?」
呼びかけてみたけど、肝試しの驚かし役なんだから、返事をしてくれる訳もなく。
「う…。うぅ…。ぐすっ。」
教室の入口に突っ立ったまま、涙が止まらなくなった。
バサバサっとシーツが誰も居ない床に落ちる。
ガタンと机の影から誰かが出てきた。
「桜?どうした?」
やっぱり薫君だった。彼の姿を見たらホッとした。
「う…、ふえぇぇ…。」
彼の胸にしがみ付いて声を上げて泣いた。
「おいっ?なんで一人なんだ?」
「うぅ…、相葉君と一緒だったのに…はぐれちゃって、ライトもないし、怖くて怖くて。」
「おいおい、こんな子供騙しで泣くなよ。」
「理科室で転ぶし、階段見えないし、最後だから誰も来ないし、何にも音がしないし…!怖かったんだから!!」
「相葉…仕方ないヤツだな。…桜達が最後なんだな?」
彼の胸の中でコクンとうなづく。彼が優しく私の頭を撫でてくれた。
「ついて来い。」
そういうと私の手を取って歩き出し、青い懐中電灯を点けて3-Aの教室を後にした。
3-Eの教室に入ると、ガラガラと積んだ机が崩されて大きな音を立てた。
天井からコンニャクらしきペトッとしたものや発光する物体が降ってくる。
「いやぁぁぁっ。」
薫君の腕にしがみ付く。
「あぁ、驚いた…、君に。」
そう言った薫君の顔が少し引きつっていて、息が乱れていた。
そのまま教室を抜けて階段を上り、目的地の音楽室だ。
「ここは仕掛けが無いから安心しろ。」
そう言って奥のピアノまで歩く。カードが一枚残っていた。
「…棄権したヤツが他に居ないとしたらだが、相葉は理科室からそのまま下に下りたな。」
薫君がカードを取り、私のシャツの胸ポケットに入れた。
「あともう少しだ。」
美術室に入る。他と比べると怖くない。石膏像に下から光を当てていて、不気味なお経のような音声が流されているだけだった。
「もう終わりだからな。」
彼がライトとプレーヤーの電源を切って美術室を出た。

二人で階段を下りて昇降口に行くと、相葉君が居た。
「桜ちゃん!!」
「相葉君、酷いよ!一人で逃げちゃって!!」
「ご、ごめん。めちゃくちゃ怖くって。」
私の横で薫君がクスッと笑った。
「あ、会長?なんで??」
「一人で泣いてるのを放っておく訳にもいかなくてな。最後だと言うし、楽しませてもらった。」
「会長、なんかずるい!」
「君こそ『油断』するから。役得というヤツだ。諦めろ。」
そう言って薫君は私の胸ポケットからカードを取り出して、昇降口の真ん中に行き、残っているみんなに向かって話し出した。
「今年の肝試しはこれで終了だ。カードを持って帰ってこれたペアは飴を一つずつ貰える。各自、用が済んだら早々に下校するように。
スタッフは各教室の仕掛けとバリケードの机を片付けてもう一度ここに集合だ。では、解散!」
また彼がこちらに戻ってくる。手に飴を二つ持っていた。
「さて、君にも片付けを手伝ってもらおうか。…これは褒美だ。」
一つを私に渡して、もう一つを薫君が食べた。
「会長、ボクのは?」
「途中で棄権したヤツの分があるわけ無いだろう?片付けを手伝ってくれるなら食べさせてやっても良いが。」
「ちぇっ、ケチ。じゃあ、ボクは帰ろっと。…会長、お疲れ様。桜ちゃん、ごめんね。」
「じゃあな。」
「相葉君、じゃあね。」
相葉君のお陰で物凄く怖い思いをしたけど、薫君と肝試しに参加できたので許してあげる。

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1.出会い
<41.星に願いを 43.薫の誕生日>
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2010/10/11  19:42

投稿者:おるん

>紫さん
ありがとうございます。
ええ、駿君は癒し系ですよね。www
こんなに手の込んだ肝試し、流石薫君です。www
高校生くらいで本気出したら、メッチャ怖いでしょうね。

白薔薇学園は校舎が新しそうなので、怖さ半減ですが、
私の母校は昭和初期に建てられた古いヴォーリズ建築のステキな校舎でした。
今は阪神大震災で傷んでしまったのもあって、立て替えられてしまいましたが。
天井が物凄く高くて、廊下が広くて、
漆喰の壁とニス塗りで磨き上げられた木の床、古いスチールの窓枠。
歴史ある学校だけあって、七不思議どころじゃなかったのもあり、
夜、半端なく怖かったです。(滝汗

2010/10/11  15:34

投稿者:紫

バスケくん、可愛いですね。
でも、そのおかげで桜ちゃんも会長と一緒に途中から回れたし、よかったですよね。
でも、実際こんな肝試しあったら、マジで怖いと思う・・・。

2010/10/7  13:42

投稿者:おるん

もちろん、駿君はイカサマしてます。
75番を引いた人を探して交換してもらってます。www
で、この失態。お約束なのですが笑っちゃう。
駿君ファンの人、ごめんなさい。

それと、桜ちゃんは裏方をしてたのですが、他の仕掛けを知りませんでした。
全ての仕掛けを知っている人間はほんの少しなのですよ。
ということにしておいてください。

あと、薫君も駿君に負けず怖がり。でも顔に出さないけどー。
桜ちゃんにしがみつかれて驚きながらも悲鳴を上げなかったのは彼の意地。
#怖がりな人が作るお化け屋敷は怖いといいますから。www

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