桜薫る 39.修学旅行(後編)

2010/10/2  3:18 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇39.修学旅行(後編)


ホテルに戻ると、入り口で薫君が立っていた。冷静そうにしていたけど、かなり動揺しているようだった。
既に私と綾川君が無断で外出したことが数人の生徒と先生にバレていて、二人揃って担任の山中先生に大目玉を食らった。
綾川先生も山中先生と同室で、一緒に私たちを説教しつつ、とばっちりで弟の不祥事を責められていた。

二人で先生の部屋から出てきたところに薫君が立っていた。

「桜…。君ってヤツは…。」
無表情で私を見つめる。
「薫君…、ごめんなさい…。」
彼が何も言わず、強引に私の手を取り、歩き出した。
どこに行くの?が怖くて聞けなかった。
背中で怒ってるのが分かる。
いつもなら私の歩調に合わせてくれる彼が、ズンズン早足で歩いている。私がつまづいてもお構いなしだ。
非常階段を下りて、ホテルの非常口から出る。
そこでやっと手を離してくれた。
「急に居なくなったら、心配するだろう?」
「…ごめんなさい。」
「君の友達も心配していたぞ。さっき、帰ってきたと伝えておいたが。」
「…ごめんなさい…。」
「なんで外出したんだ?」
「…あの…。」
なんて言ったら良いか、分からなくてしどろもどろになる。
彼は私の目を見ずに矢継ぎ早にどんどん質問を投げかけてくる。
私も説明したいのに、間髪入れずだ。
「夜景が見たかったから?」
「…ううん、違…。」
「それも、よりにもよって綾川と…。」
「…だから…。」
「俺は、…桜のオトコだと思っているのだが?…俺にとっては桜が一番だ。なのに、なんで俺以外の男と?」
「…あのね、それは…。」
「…俺ではいけないか?」
彼が私の両肩を掴んで、私の目を見た。彼の目は潤んで、今にも涙が溢れそうだった。
「そんなことない!私、薫君が大好きだから。薫君じゃなきゃ嫌だから。」
「じゃあ、なんで…。」
彼が目を伏せた。雫が一粒落ちるのが見えた。
薫君を泣かせてしまった。傷つけてしまった。大好きな薫君。私、最悪だ。

そのとき、非常口のドアが開いて、綾川君が出てきた。
「ちょっと待て、草間!」
薫君は少し驚いたようで体を震わせた。綾川君の声を聞いて急いで涙を拭って背筋を伸ばした。
「なんだ、君か。」
綾川君の方に振り返って、少し上擦った声で、冷静に振舞う。
「悪かった、桜を無理矢理連れて行ったのは俺だ。」
「…。」
「桜のヤツ、ちょっと元気なかったからさ…お前のコトで悩んでんのかと思って…。」
「…。」
それを聞いた薫君が、視線を私の方に投げる。
「でも、聞いたら何でもない事で…。マジ、俺が悪かったから!それにお前が心配するようなこと、何もねえからな!!」
また綾川君の方を向き、握った拳がワナワナしている。
「………綾川、一発殴らせろ…。」
「そ、草間、待て。お前、そういうキャラだったか?」
「…歯を食いしばって、腹、据えた方がいいぞ。」
「おいおい…。」
「行くぞ!」
「!!」
綾川君が身構えた瞬間、電光石火で彼の拳が腹に入る。
ゲホッと綾川君が咳をしてよろめいた。
「効いた…。いいパンチ持ってるじゃねぇかよ…。ヒョロっこい優等生だと思って舐めてたぜ…。」
「当たり前だ。言ったことは無かったが、幼少の頃から空手をやらされていたのでな…。手加減しておいたからこのことは内密に。」
「殴ってから言うなよ、そんなこと…。」
「すまないな。桜は俺の彼女だから、今後、無用なちょっかいを掛けるのは止してもらおうか。」
「わぁったよ。言っとくけど、俺も桜のコト、好きだったんだぜ。泣かしたら承知しねぇからな!」
「知っていたさ。任せておけ。」
薫君は綾川君に向かって、涼しい顔で微笑んでそう言った。
いつもの薫君だ。綾川君にハッキリ伝えてスッキリしたみたい。なんだかよく分からないけど、これで良かったのかな?
無言で私の肩を叩いて、ドアへ促す。
その場にお腹をさする綾川君を置いたまま中に入った。

誰も居ない非常階段を上りながら、彼が小声で聞いてくる。
「綾川に何を相談したんだ?」
「え?ホントに大したことなくて…。」
「ふむ。」
「だ、だからね、リカコが…ね…、付き合ってるなら…するのが普通だって…。」
「え?」
「だから…ヤリたいはずだからって。」
「!!…桜、友達とそんな話を…。」
「薫君、私のこと嫌いになっちゃったのかなとか、色気無いからなのかなとか、思っちゃって…。」
「バカ。リカコ…保坂か、アイツもバカだな。本当に彼女が大事なら、そういうことはむやみにするものじゃない。」
「そうなの?」
「…ヤリたくないと言えば嘘だ、俺だって…。」
そう言って薫君が私を見て生唾を飲んだ。思わずドキッとして、胸元を隠したら、恥ずかしそうな顔をして目を逸らした。
「でも、妊娠にしても病気にしても女性の方が大変になるから。…もし何かあったときに俺はまだ責任を取れない。覚悟もない。」
「そっか、そうだよね。私、軽率に考えてた…。ごめんなさい。」
「いいんだ。俺も君にそう言っておけば良かった。」
階段の踊り場で、彼が私を抱きしめた。
「桜、俺達はまだ高校生だし、受験生だし、まだ早いと思っている。でも、覚悟ができたときにはちゃんと俺から誘うから。」
「うん…。ありがとう。薫君、大好き…。」
「俺も好きだ、桜。」
チュッとキスをして離れる。非常階段から廊下に入って、それぞれの部屋に戻る。

部屋にいたアリサ、アキ、リカコが出迎えてくれた。
謝った後、さっとシャワーを浴びる。
布団の上でまたお喋りだ。
みんなが辟易する程、薫君ののろけ話をした。


◇◆◇


翌日は札幌へ移動して、自由行動。
北大のキャンパス内を歩いていたら、薫君の班と出会った。
「あ…。」
「…。」
お互い、ちょっと照れる。
アリサ達も薫君の班の男子達も気を遣ってくれた。
北大の中に居る間、班分けを無視してバラバラで巡って、三十分後に正門前で落ち合うということになった。

「谷本…、一緒に行こうか?」
「うん。そだね、草間君…。」
嬉しいけど、ちょっと照れる。手なんか繋いでみようかな…?
そっと彼の手を触る。
「!!…あまり触るな…。」
「!…ご、ごめん…。」
「いや、こちらこそすまない。なんだか照れてしまってだな。」
「私も…。」
変な距離感。お互い、傍に居るのは分かっているけど、手が届かない距離で歩いている。
「…やっぱり、手を…繋いでも構わないだろうか?」
「うん。」
昨日もハグもキスもしたのに、手を繋ぐだけでこんなにドキドキできちゃうなんて、おかしいよね。
クラーク像やポプラ並木を二人で見て、写真を撮った。
キャンパス内で散歩をしている人に頼んで、二人の写真を撮ってもらった。
去年の文化祭の以来だと思う。前はウエイターとウエイトレス姿だったけど、今日は制服。
彼はちょっと緊張気味でもあり、でも無表情ではなくてちょっと微笑んでて。
私もちょっと照れてるけど、嬉しくって笑ってる。
「いいのが撮れたな。」
「うん。」
「修学旅行、君とは一緒に行動できないと諦めていたからな…。」
「嬉しい?」
「まぁな。」
「なにそれ、素直にもっと喜べばいいのに。」
「ふふ。そうだな。嬉しいよ。」
「さて、そろそろ集合場所に戻るとするか。」
「うん。」
ほんの三十分だけだったけど、旅行先で薫君と二人、手を繋いで歩けたのが物凄く嬉しかった。
この感覚が何年経っても変わらず、なくならなければいいな。

修学旅行はこの翌日、飛行機で帰路に着いて終わった。

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1.出会い
<38.修学旅行(前編) 40.穂の素朴な疑問>
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2010/10/7  1:55

投稿者:おるん

>紫さん
ありがとうございます。

ええ。意外な会長。w
でも、腕っ節は強くないです。空手も試合よりも型ばっかりで。ww
頭がいい人なので責めどころはちゃんと押さえていますが、
体が物理的についてこない(怪我する)のと、力があまりない(あっても人並み)ので、
ガチ勝負になると勝てないでしょう。w
今回は油断した竜士君が薫君の間合いとタイミングを読み損ねたということで。

物語の最後、ここで宣言しているように手篭めにしちゃいます。あはは。^^;

2010/10/6  23:18

投稿者:紫

あら、会長の意外なキャラ発見!
かおるさんの会長は、優等生なだけじゃなくて、腕っぷしも強くて、なんかあらゆる面で完璧ですよね。
文武両道というか・・・。

会長の手篭めが気になりますが・・・。www

2010/10/2  3:41

投稿者:おるん

はい。会長の意外性が発揮される回です。
もちろん竜士君の方が喧嘩も腕っ節も強いですよ!!
多分、薫君が本気で殴ったら、相手よりも薫君の拳の骨が折れると思う。^^;

こんなこといいつつ、この物語の最後(49話)で桜ちゃんをモノにしてしまいますので、乞うご期待!?w
親に挨拶しにまで行くのに、あっさり手篭めにしちゃいますから!!(滝汗
完全に女性向けエロ小説と化するのですが、ここで公開していいものやらどうやら。。。orz
(mixiのマイミクさん+その友達、pixivのR-18では公開済み。)

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