桜薫る 15.初恋

2010/8/19  13:29 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇15.初恋


綾乃の家は俺の家の隣。
物心が着いた頃にはいつも一緒に居るのが当たり前だった。
「綾乃ー。学校行こう。」
「はーい、ちょっと待ってね。」
ランドセルを背負った彼女が玄関から出てくる。
「薫、忘れ物ない?ハンカチは?ティッシュは?」
「持ってるよ。」
一歳年上なだけで、俺のことを散々子ども扱いする。
「薫兄(かおるにい)、朝から熱いね!」
「薫兄、こんなオニ姉(ねえ)のどこがいいの?」
俺の弟、穂(みのる)と綾乃の弟、勝典(まさのり)が寄ってきてからかう。二人は俺よりも二個下の同級生だ。
「誰がオニって!?」
「わー、逃げろー!!綾姉(あやねえ)、恐ーい!!」

弟達が先に走っていって、俺達が一緒に歩いていたら、中学生くらいの男の自転車が猛スピードで突っ込んできた。
「綾乃!」
「あっ、薫!!」
綾乃を守りたかったのに、綾乃が俺を庇った。
キキーーーーッ!ガシャン!
自転車は綾乃の足をかすめて、フェンスに衝突して止まった。
中学生が起き上がってこちらに来る。
「だ、大丈夫か??」
「う、うん…。」
綾乃が苦しそうに答える。
「薫は?大丈夫??」
「俺は大丈夫。綾乃、足…!!」
自転車がかすめたところが切れて、血が流れていた。
「じゃ、じゃあな!」
と中学生が慌てて逃げていった。
「あ、こら!待て!!!」
追いかけたかったが、綾乃が俺にしがみついている。額に物凄い汗をかいて。
ど、どうしよう??
オロオロしながら、ポケットからハンカチを出して、綾乃の足の傷を押さえる。ハンカチはあっという間に赤く染まった。
「綾乃…。」
綾乃は痛いのに泣くのを堪えている。なのに、俺が泣いている。
震える手で血塗れたハンカチで綾乃の足を縛る。
「綾乃、背中に乗って。」
自分のランドセルを前に掛け、背中に綾乃を背負って歩く。
綾乃の家に着いて号泣。
「おばさん!綾乃が!綾乃が!!」
「薫ちゃん、どうしたの?まぁ!綾乃!!」
そのまま、おばさんが綾乃を連れて病院に行った。
放課後、綾乃は病院から帰ってきているみたいだったけど、恐くて会いに行けなかった。
その日の夜、お母さんが様子を聞いてきてくれた。足を五針縫ったそうだ。

翌日、綾乃は足に包帯を巻き、松葉杖を突いて出てきた。
「おはよう。薫。」
「おはよう…。綾乃、大丈夫?」
「まぁね。まだ痛いけど。一週間位したら抜糸するって。」
「綾乃のバカ!何で俺を庇ったりなんかしたんだ!!」
「だって、私のほうがお姉ちゃんなんだから。」
「俺、男だぞ!綾乃は女じゃないか!」
朝からもう半泣きだ。
「泣かないでよ。私、平気だから。」
「次は絶対こんなことするなよ!俺が守ってやる!」
「うん。わかった。次はちゃんと守ってね。」

◇◆◇


足首の傷。
痛くもなんともない。見た目にも大分目立たなくなった。
私は薫を守りたかったから気にしてないのに、薫はずっと引きずっているみたい。
自宅に居るときなんかは靴下を履いていないから見える。
その度に、彼は一瞬辛そうな目をする。

あの頃はまだ私のほうが背が高くて。薫が中学生になって、彼のほうが背が高くなった。
偉そうなのは今も変わらずだけど、クールを気取って、無理して表情変えないように頑張ってる。
すっかりポーカーフェイスが板に付いたようだけど、私にはわかっちゃうんだな。これが。
もう高校生になって、子供の頃のように何も考えず突進なんてことはなくなったから、ちょっとやそっとではヘマしたりしないけど、まだまだ詰めが甘いったら。

彼女が転校してきてから、ペース乱されまくり。
中学、高校と他人を自分のテリトリーに入れないように入れないように頑張っていたのに、彼女をすんなり入れてしまった。能動的に入れたというよりは、彼女にその垣根を取り払われてしまって気が付いたら侵入を許していたと言ったほうが近いかも知れない。
彼女は素直でまっすぐで駆け引きなんかしない。だから駆け引きに慣れた薫には新鮮なのかもしれない。
私以外の他人に、易々と色んな表情を見せることに少しばかり嫉妬を覚えたけれど、もうそういう時期になったのだと悟った。
あぁ、薫は彼女が好きなんだなと。
もう私のことは気にしないで欲しい。淡い初恋はもう終わり。


◇◆◇


後にも先にも、綾乃を守らないといけない状況になることはなかった。
今も綾乃の左足には傷跡が残っている。
目立たないし、靴下を履いてしまえば分からない場所だから知っている人は少ないだろうが。
忘れた頃に綾乃がからかう。
「薫、私のこと、守ってくれるんでしょ?」
「う…。まぁ、その状況になればな。」
「ふふ。もういいよ。子供の頃の約束だし。私よりも大事な人が出来たでしょ?」
「…。」
「そりゃもう。わかりやすいったら。何年、あなたのお姉ちゃんだったと思ってるの?」
「敵わないな。」
「うまく行くといいね。」
「ありがとう。」
噂をすれば、だ。
「こんにちはー。草間君!今日は何すればいいかな?」
「谷本、待ってたぞ。今日はこの資料をだな…。」


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1.出会い
<14.友達−君は君のままで 16.ハロウィン(前編)>
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2010/9/4  4:39

投稿者:おるん

なんかブログのサーバーの調子が悪いらしく、ページが表示されない(あるいはスタイルが無効になる)不具合が出ているみたいです。orz
無料とはいえ、teacupさん、頑張って。。。TT

>紫さん
ありがとうございます。
そうですよね。桜ちゃんにとってはヤキモチ焼くなと言われても難しい状況。^^;
綾乃ちゃんはとても良い子です。
くっついても何の問題もないのですが、綾乃ちゃんには小学生の頃、別に好きな人がいたのであります。^^;
薫君のことは好きだし、子供の頃から漠然と将来はそうなるのかと思ってもいたのですが、やっぱり弟の域を出ないんです。哀れ薫君。(涙
ある意味、桜ちゃんにとって綾乃ちゃんは、恋のライバルと言うよりは姑・小姑に近いかもしれない。w

2010/9/3  19:42

投稿者:紫

淡い初恋、いいですね〜。
でも、桜ちゃんにとってはやっぱり心配だろうな。
いくら子供の頃のこととはいえ、初恋の人とまだつながっているなんて。

でも、綾乃ちゃんもいい人みたいだし、会長と綾乃ちゃんが最終的にくっついてもいいんじゃないの?なんて、思っちゃいました。(笑)

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