IF 17.祭りのあと

2016/5/5  0:08 | 投稿者: おるん

------------------------------------------------------------
#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
------------------------------------------------------------

◆◇◆17.祭りのあと◆◇◆

結局、あっちゃんとナッコのことを考えていて眠れなかった。
昼から部活の予定だったけど、体調不良ということにしてサボった。

「家に居ても暗くなるだけやな…」

寝不足でクラクラする体を無理矢理起こして、外に出る。
お祭りの屋台が開いていた夜とは打って変わって、静かな公園。
今晩も祭りがあるから、ほんの少しお祭りの雰囲気は残っているけれど。

公園のブランコに腰掛けて呟く。

「あっちゃんと行きたかったのになぁ…バカ。」
「圭子!」
「!!あっちゃん!?」

私が家から出るのを見かけて、そのまま追いかけてきたらしい。
あっちゃんの顔を見て、昨日の屈辱的な出来事が蘇る。
あっちゃんが悪いんじゃない。でも、怒りが沸々と湧いて抑えられない。
あっちゃんに八つ当たりする前に立ち去らないと。

立ち上がってそのまま、一目散に逃げる。

「お、おい!?」

走って逃げる私をあっちゃんが追う。
当たり前と言えば当たり前。
私ってバカだな。

「付いて来んといてよ!」
「待てって!」

必死で逃げるも逃げ切れる訳もなく、100mも行かない内に腕を捕まれた。

「あほか、足の遅いお前が俺から逃げれる訳ないやろ。」
「あほー!離してや!あっちゃんのバカ!大っ嫌い!」
「ああ、もう!俺が悪かったって!今晩こそ一緒に行こうや、2人で。」
「行かへんもん!昨日も行ったし、もういいもん!」
「圭子!」
「何よ!あっちゃん、私よりナッコのこと優先したくせに!」
「断り切れんかったんは俺が悪かったって言うてるやろ!?お前かって行ってこい言うたやろ!?」
「そんなん!あの場でナッコ突き飛ばしでもすればよかった!?」
「そんなこと言うてへんやろ!?
原口優先って言うけど、そんなんお前かっていつも部活優先やんけ!俺が寂しないとでも思ってるん!?」

あっちゃんの言葉にハッと息を飲んだ。
そう、あっちゃんにいつも我慢させているのは私。

「…ごめん、私が悪い…」

それまで力一杯抵抗していた体の力を抜く。
あっちゃんに引き寄せられて、抱き締められた。

涙がポロポロ流れて止まらない。
嗚咽を堪えて泣き続けた。あっちゃんはそんな私の頭を優しく撫でた。

あっちゃん、ごめん…。
やっぱり、あっちゃんは私とじゃダメだ。
私みたいなワガママ女じゃなくて、もっと他にふさわしい人がいると思う。
あっちゃんにこんな我慢させる彼女なんか、彼女じゃない…。

ほとぼりが冷めて落ち着いた頃、あっちゃんの胸から顔を上げる。

「あっちゃん、ごめん。鼻水付いたかも。」
「え!?…まぁええわ。で、どうする?今晩。」
「んー…、昨日、ミルクせんべいとかき氷食べてないから、それ買う。」
「分かった、じゃあ7時位に家の前でいい?」
「うん。」

◇◆◇

その日の夜、新しく買った服は見せられなかったけど、2人でお祭りに行った。

昨日のことがあったから、そしてあっちゃんの不満を聞いてしまったから。
折角2人で来たのに心から楽しめない、心が狭い私。
あっちゃんもそんな私に気付いてか、気遣ってくれる。

ミルクせんべいの枚数を競ってみたりして、カラ元気を出してみるものの、やっぱり何か違う。
最後にかき氷を買って、シャリシャリ食べながら家に向かう。

家の前に着いて、別れ際に言った。

クリックすると元のサイズで表示します


「なぁ、あっちゃん。私ら、もう別れよう?」
「え?」
「やっぱり、我慢しながらとかそんなんおかしいよ。私みたいなん、相手にしたら疲れるやろ?」
「なにそれ?おもんない。お前、それで良いん?」
「…いいよ。」
「お前、いつもそうやって自分で勝手に決めて。何のために俺が居るん?」
「…うーん?あっちゃん、かっこいいし、優しいし、頭も良いし。」
「…」
「私には勿体なすぎた!」
「もう、ええ加減にせえよ?」

あっちゃんが腕を振り上げた。
しばかれる!
そう思って身を縮めたけど衝撃は来なかった。

「そやな。お前みたいなん相手にすんの、疲れたわ。」

目を開けると、あっちゃんが私から目を逸らして溜め息をついた。

「ごめんな、あっちゃん。私、ワガママで。あっちゃんのこと、ずっとずっと大好きやのに…!」
「あほ。別れるときに言う台詞ちゃうやろ。振るんやったらな、もっと悪役に徹せんと、未練が残るやんけ…。」
「ごめん。ごめんなさい…あっちゃん…。」

震える体を、震える手を必死で抑えながら、震える声でそうやって謝るのが精一杯だった。
今まで15年間、一度だって見たことがなかった、あっちゃんの苦痛の表情。

「…圭子、お前のこと泣かせたかった訳ちゃうねん。笑っててほしいから。
俺のこと好きやって言うてくれて傍に居ってくれて、嬉しかった。ありがとう。
…もう、明日からは只の幼馴染みやな。おやすみ…。」

そっと開けられた門扉がキィと小さな音を立てた。
そのまま家に入っていくあっちゃんの後ろ姿を見送った。

こんなことで別れなくても良かったのかもしれないけど、遅かれ早かれ、こんなことになるだろうと思っていた。
お互い若いんだもん。付き合って心を許せば許すほど、互いに求めるものが大きくなる。
本来ならそれをも乗り越えていくべきなんだろうけど、私にはまだ、乗り越えられる自信がない。
幻滅されたくないし幻滅したくない。
だからこれで良かったんだと思う。

私の初めての恋が終わった。


-続く-

---
1.序章
16.夏祭り
18.自暴自棄
0



コメントを書く

名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ