桜薫る 9.会長の特別授業

2010/8/12  10:56 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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 小説内には一部ウェブカレのイベントに近い箇所があります。
 小説内には一部ウェブカレのイベントの内容を引用した箇所があります。(ネタバレ注意)
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
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◇◆◇9.会長の特別授業


一日家でゆっくり休んで、すっかりいつもの調子に戻った。
やっぱり、慣れない仕事で色々緊張してたのかな?と思う。
ゆっくり寝て、ご飯をしっかり食べたら、朝、気持ちよく目が覚めた。

アリサと一緒に登校する。
「サクラ、おはよう。もう大丈夫なの?」
「おはよう。うん、すっかり。寝不足だったのかも。」
駅の改札の前で出会って、一緒に階段を上る。
「にしても、会長、マメだよね。」
「だって、隣のクラスなのにワザワザ保健室まで来てさ?」
「そう、かな?…生徒会の仕事が忙しかったから、そのせいじゃないかって、責任感じてたみたい。」
「ふうん。でも、ホント、サクラは会長に気に入られてるよね。」
アリサが私の方を見て言った。私も彼女の方を向いて訊く。
「そうなの?」
「だって、役員じゃない人を生徒会に連れて行ってるとこ見たことないよ?」
アリサは再び前を向く。ちょっと小首を傾げて過去を思い出しているようだった。
その様子を見て、私も前を向いた。次に言うことが本意でなくて、自分の足元を見ながら言う。
「…そうなんだ。でも、生徒会の人と噂があるじゃない。」
「あぁ、そういえばそうだよね。三年の人でしょ?…二股?」
「まさか!会長ってそんなことしそうにないよ?」
二人顔を見合わせた。でもすぐにお互い顔を外側に逸らす。
「うーん、ああ見えて結構…なのかもしれないよ?何考えてるかよく分からないし。」
「まぁ、何考えてるか分かりにくいよね…。」
そのままホームに滑り込んできた電車に乗る。電車の中では何も話さなかった。
草間君、やっぱり結城さんとそういう仲なのかなぁ…?
私に何かと構ってくるのは転校生が珍しいからかなぁ。
優しいのは絶対。そこは私だけが特別という訳ではなさそうで。それ以外でも構ってくれるのは、たまたま私が話しかけ易いだけか…。
いつもどおり、学校の近くで自転車に乗った彼が私達を追い抜いていった。挨拶もなしで素通りだ。
「会長、気になるわー。」
「え?」
「だって、あれだけ素顔が分からない人、中々居ないよ?」
「そう…だね…。」
草間君の素顔か…。他の人には見せないんだろうな、と思うところもあるけど、やっぱりそれも彼の一部分な訳で。一体、ホントはどんな人なんだろう…。


◇◆◇


放課後、廊下で彼が教室から出てくるのを待っていた。
彼が私に気付いて寄ってくる。
「谷本、もう平気なのか?」
「うん。お陰様で。」
「そうか。」
「…あの、草間君が忙しくなかったら、昨日言ってた勉強の件…。」
「ああ、見てやろう。教科は何がいい?」
「一番苦手なのは数学。…と英語。」
「分かった。ちょっと仕事があるから、四時からで良いか?」
「うん。」
「しばらく教室で自習しておいてくれたまえ。」
「うん。じゃあ、あとでね。」
「ああ。」
彼は生徒会室の方に歩いていった。
何の仕事なんだろう?お手伝いするのになぁ…。

仕方なく、人がまばらになってきた教室にもう一度入って、自分の席に座る。
帰り支度をしたヒトミが声を掛けてきた。
「あれ?サクラ、帰らないの?」
「うん。もうすぐ中間テストだからここで勉強しようと思って。」
「エライなぁ〜、とか言いつつ、私もこれから塾なんだけどね。頑張ってね。」
「塾かぁ、考えてなかったな。私も親に相談してみようかな…。」
「もしウチの塾、見たかったら言って〜。見学申し込むし。」
「ありがとう。」
「じゃあね。」
「バイバイ。」
ヒトミが教室から出ていった。入れ違いにアリサが教室に入ってきた。
「サクラぁ、帰ろう?」
「ゴメン、今日、ここで自習して帰るから。」
「え?ここで?」
「う、うん…。家でやっても捗らないし…。」
「もしかして個人レッスンですか?」
アリサがニヤッと私を見る。鋭い。
「うん、まぁ。…分かっちゃった?」
「ははは。さっき廊下で話してるの聞いたから。」
「なんだ、知ってたのか。驚かさないでよ。」
「あはは。会長の個人レッスン、どんなんだろうね?すごい厳しかったりして。」
「厳しいのかな?うぅ、怖くなってきた…。」
「じゃね。がんばってね。」
「ありがと。バイバイ。」
アリサもさっさと鞄を持って教室から出て行った。

草間君、私の馬鹿さ加減に呆れちゃうかもしれない。やだな。でも、テストも怖いし。
あー、もう。とりあえず、分からないところが分からないから、前から順番にするか。
数学の教科書と参考書とノートを机の上に広げる。
参考書の単元の最初を読む。
「えっと…、指数と対数。log…、常用対数?自然対数???」
ここだけで思考停止してしまいそう。せめて一問目くらいは解かないと…。
log10,100=2って、えっと…、ここがこうだから、…10^2=100かな??
あぁ、なるほど。じゃあ二問目は…。


◇◆◇


俺が生徒会の用事を済ませて2-Bの教室に行くと、誰も居ない教室で一人、桜の姿があった。
教科書と参考書とノートを開いた状態でシャープペンを握ったまま、机に寄りかかって眠っていた。
「さ…」
起こそうとしたが、余りに気持ち良さそうなので少しこのままにしてやろう。
シャープペンをそっと指の間から抜き取ってやる。俺のブレザーを脱いで肩に掛けてやった。そして一つ前の席の椅子に後ろ向きに背もたれに跨がって座る。
よく眠ってる…。まだ調子が戻らなかったのか?
睫毛が数えられそうな距離。赤ん坊みたいな無邪気な寝顔。
「う、ん…。草間く…。」
うわ。寝言で呼ばれた。なんか恥ずかしい。
桜色の唇。柔らかいんだろうか?衝動的に無意識のうちに手が伸びていた。
この唇にキスできたら。他の誰にも触れさせたくない。
彼女が小さく身じろぎした。
ハッと我に返り、立ち上がる。
「う、うーん。」
彼女が目を覚ました。目を擦りながら顔を上げる。
「あれ?草間君?ごめん、寝ちゃってた。」
「ふふっ、あははっ。桜、頬に参考書の跡が付いてる。」
「やだっ!そんなに寝てたのかな?」
あたふたするのがかわいい。俺のブレザーにも気付いて返してくれた。
「さて、勉強するか?」
また彼女の前の席の椅子に座りなおす。彼女が参考書を指差す。
「うん。えっと、数学なんだけど、指数と対数のところをね…。」
「あぁ、じゃぁ、この例題からやろうか。」
「うん、ここがこうなって…。」
「対数の和は底が同じ場合は真数の積の対数とすればいい。すなわち…。」

数学、苦手なんだな。教えるのに骨が折れる。でも、基本さえ押さえれば、何とかなるはずだ。
今晩、まとめプリントを作ってやるか…。
「今日はそろそろ終わりにしよう。明日またやれば良い。」
「うん。ありがとう。」
随分日が暮れるのが早くなってきた。
桜を駅まで送ってやる。二人の時間がもっと増えれば良いのに。


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1.出会い
<8.疲れ 10.綾川兄弟>
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2010/8/24  22:33

投稿者:おるん

>紫さん
毎度ありがとうございます。^^
お互いの好意は薄々気付いているものの核心に迫れない。。。
まどろっこしくてヤキモキします。w
ま、それも恋愛の醍醐味なんで、一緒にドキドキしようかと。w

2010/8/24  19:34

投稿者:紫

あと一歩で触れられるのに、まだ触れられない...うう...そのもどかしさが青春ですよねぇ。www
まだお互いの気持ちを探り合ってる状況...桜ちゃんにしたら、他の女の子との噂も気になるし...というところでしょうね。
はっきり聞いちゃいたいけど、聞けないそのもどかしさがたまりません。www

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