仮校舎公式イベ 世界征服

2013/2/10  3:18 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2012年7月薫【仮校舎公式イベ】世界征服

時折吹き抜ける風に七夕の短冊が飾られた笹の葉がなびく渡り廊下。
さらさらと笹の葉の音が鳴る。

「今年も七夕は終わりか…。ぼちぼち片付けないとな…。」
笹に掛けられた短冊を一枚手にとって読んでみる。


『世界征服』


「ぶはっ!!こ、コホン。」
なんだコレ!?
まぁ、ここにそんな切実な願い事を書くヤツはいないか。
それにしても、予想していなかっただけに驚いたな。
…気を取り直して、もう一枚見てみるか…。


『百人一首かるた大会開催』
…綾川先生?

『ダンクシュートを決める』
…これは相葉だな。

『メジャーデビュー!!』
…綾川竜士か。


「…ふむ。世界征服が一番インパクトがあったな。」
「でしょ!?」
「うわっ!!!」

背後に突然人が現れて驚く。
やたらと俺に寄ってくるアイツだ。
いつも唐突に現れるので危険だ。
注意してやろうと、彼女のほうへ向き直る。

「君っていうヤツは…!な、な、なんだその格好!!!」
「??何って、水着だけど?」

俺の胸元に立って下から俺を見上げる。
あまり大きいとはいえない胸とはいえ、女子な訳で、谷間が見える…。

「くっ!なぜ水着なのかと聞いている!」
「え?明日プール開きでしょ?みんなで掃除してるのよ。」
「………」

普通、体操服でやるだろう…。
水着姿で校内を走り回るなど考えられない。
説教しようかとも思ったが、そんな気力も無い。

「そうか。頑張りたまえ。」

彼女に背を向け、その場から立ち去ろうとした。

「ちょっと待ったぁ!ほら、草間君も一緒に掃除してよね!」
そう言って彼女が俺の腕を掴む。

「こ、こら!離したまえ!俺はやることがあるんだ!」
「えー!生徒会でしょー?困っている生徒を助けてくれるんでしょー??」
「それはそうだが、俺は他にもやることがあってだな…」
「えーーー!人手が足りないんだってばー!」
「ああ!もう!仕方がないな!手伝えばいいんだろう?
着替えてくるから先にプールへ行っていろ!」

七夕の笹を片付けるのを綾川先生に相談して、人手を集めてもらおうと思っていたのに。
七夕の笹は本来、川に流すものらしいが、流石にこのご時世ではそういうこともできない。
笹の枝葉と短冊飾りを焼却炉で焼くのだ。
プール掃除が終わってからだと、生徒はほとんど下校しているだろうな。
今年は一人で後始末か。アイツのせいで帰るのが遅くなりそうだ。

そんなことをブツブツ考えながら、生徒会室で体操服に着替え、プールサイドへ急ぐ。

プールに近づくにつれ、キャアキャアと騒ぐ声が聞こえてくる。
プールサイドに出てみると、アイツが走り回っていた。
数人は真面目に掃除をしているようだったが、水をかけられたのか、頭から体操服からずぶ濡れになっていた。

「あっ!会長ー!アイツをなんとかしてくれよー。
ふざけてばかりで邪魔なんだよ。」

ずぶ濡れの男子が一人こちらにやってきて言った。
…何が『人手が足りない』だ。
邪魔して足を引っ張っているのか、アイツは。

「草間君!来てくれたんだ!ありがとう!はい、デッキブラシ!」

当の本人は全く悪びれもなく、デッキブラシを持って走ってきた。
俺はそのデッキブラシを受け取り、早速プールの中に下りる。

「お前も掃除しろ!」

と彼女に呼び掛けたら、ハーイという声と共にバシャッと頭からバケツの水を浴びせられた。

「………水をかける先が違うだろう………?」
「へへーん!暑いし、ちょうどいいでしょ?」
「真面目にやれ!!」

体操服を脱いで上半身裸になる。
髪からポタポタ雫が落ちるのを見ながら、体操服を絞る。

「草間君、隙アリ!!」
いつの間にかプールに降りてきたアイツが俺の脇腹を突付いた。
「っ!!!」

ふざけたアイツが踵を返して逃げ出す。
が、足が滑って転びそうになる。

「水があるんだ!危ないだろう!?」

辛うじて彼女を背中側から抱き止めた。

「………。」
彼女が俺の腕の中で仰向けになっていて、放心状態だ。
そのまま、何も言わず立ち上がり、俺の背後で真面目に掃除をし始めた。

「おい。プール掃除が終わったら、俺の用事にも付き合え。」
「なんでよ?」
「俺の仕事を放置してこっちに来たんだぞ。
しかも頭から水まで浴びせられて。
ちょっとは俺の役にも立ってくれ。」
「うん。分かった…。」

プールの掃除がひとしきり終わったところで、プールの後始末を体育委員に任せ、アイツと二人、先にプールから出てきた。

「何するの?」
「七夕の笹を燃やす。」
「え?」
「いつまでも飾っておくわけには行かないからな。」

渡り廊下の柱にくくりつけられた笹を一本一本外す。
彼女に数本持たせ、残りを自分が担ぐ。
歩くたびに、笹の葉が擦れ合ってさらさらと音がする。
何か話そうかとも思ったが、彼女の横顔と笹の葉の音だけで十分だった。

焼却炉の前に着いた。担いできた笹を下ろす。

「短冊、枝ごと切って全部外せ。燃やすから。」
「えー!?これ全部?もったいないよ!」
「そんなこと言っても、置いておくわけにも行かないだろう。」
「そうだけど…。」
「ほら、日が暮れると体が冷える。」

グズグズ言う彼女を尻目に焼却炉に火を入れた。

「みんなの願い事が叶うように、ちゃんと燃やせよ。」
「………」
「おっと、君の分は燃やさないでおこうか。」

そっと笹から君の短冊を外して手元に置いた。
生徒会では恒例なのだが、こうやって好きな人の短冊を自分のお守りにする。

…好き…なのか?
考えたこともなかったが、気が付けばいつも傍に居て…。
彼女は無邪気に笑って、俺は説教ばかり。
それでもその掛け合いが内心楽しいと思っていた。

「私の願い事、叶わないじゃない。」
「…叶ってたまるか。『世界征服』なんて。」
「私も草間君の分の短冊、燃やさないで取っておこうかな。」
「俺の願い事が叶わなくなるな。」
「草間君の願い事って?」
「ん?『世界平和』だ。
君みたいなヤツを野放しにしておいたら世界が乱れるだろう?」
「じゃあ、短冊燃やさなくても、その願い事は叶うと思うよ?」
「??」

「だって、私を野放しにしなかったらいいんでしょう?
草間君の鎖で、ちゃんと私を縛っておいて……」

彼女は震える瞳で俺の目を見つめる。
彼女は水着姿で、俺は短パン姿で、裸同然の姿な訳で。
喉が渇いているはずなのに、生唾が出て、ゴクッと飲み込んだ。

「ば、バカ!」
「なーんてね!やーい!照れてやんのーーー!!
草間君のエッチ!!!」

彼女が笑いながら、俺の短冊を見つけて笹から取り外した。

「生徒会では好きな人が書いた短冊をお守りにするって先輩から聞いたよ?
…私が持っててもいいよね?お守りにするから。」
「!!……そうだな、きっとご利益があるぞ。」

彼女が俺の短冊を胸に当て、えへへと嬉しそうに微笑んだ。

俺としたことが。完全に彼女のペース。
『世界征服』と『世界平和』。どっちが勝つんだろうか。

-終-

スチル:佳鈴さん
※スチルは仮校舎にてどうぞ。
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