9月初め、奈良の「當麻寺中之坊絵天井の間」で写佛を体験してきました。
當麻寺(たいまでら)は、中将姫が5色の蓮糸で極楽浄土の光景を織り上げたと伝えられる「當麻曼荼羅」でも有名で、白鳳時代(今から1300年以上前)に創建された古刹です。
ところで写佛(しゃぶつ)って何でしょう?
読んで字のごとく、仏さまを写す・・・なのですが、写経に比べ一般的でないかもしれませんね。
薄墨で描かれた下絵の上に筆で線をなぞるのが當麻寺の写佛で、簡単なようですが、これが結構難しいのです。
何しろ普段持ちなれない毛筆(小筆)を使うのですから、それだけでもかなり緊張!
練習用の下絵の上に書いた初めての線は、何んと幅が5ミリを超えるほどの太さになってしまいました。
筆に含ませる墨の量や力の入れ具合、精神集中度などで線の太さなどが微妙に変化し、中々思うようにいきません。かなり悪戦苦闘してどうにか練習用の絵を書き上げ、いよいよ本番です。
下絵は「當麻曼荼羅」に描かれている「阿弥陀如来像」「観音菩薩像」「勢至菩薩像」の3種類が用意されていましたが、私は「観音菩薩像」を選びました。
観音像は、胸飾りなどの装飾などが細かく描かれていて、曲線が多く難しそうですが頑張ってチャレンジです。
ところが、緊張で手は震え呼吸もままならないほど・・・普段何気なくしている呼吸なのに、どういうリズムでしてよいのかが解らず、一筆書くごとに胸が苦しくなってしまうほどでした。
集中しなければと思えば思うほどうまくいかず、周りの人たちの動きや息遣いまでもが気になってしまう・・・。
それに下絵が描かれていても、果たしてどこから書き始めたらよいのかも解りません。
まず気持ちを落ち着けなければと思い、じっと下絵を見つめ大切なお顔は一番最後に書くことにして、髪からスタートしました。
ふと気がつくと、絵天井の間にはいつの間にか物音一つしない静寂が漂っていました。
描くことにだけ集中した不思議な時間・・・。
今までに体験したことの無い感覚です。
あっという間に時がたち、一緒に始めた7人中のほとんどの方たちが終了してしまった様子。
3枚とも描いてしまった人もいるようなのに、私はまだ一枚目の途中・・・でもマイペースを守るほかありません。
いよいよ一番大切なお顔です。
いささか順番がめちゃくちゃですが、鼻のあとに口、最後に目を描くことにしました。
お口を描く最後の一筆で観音様が微笑んだ瞬間、1時間半近く続いた緊張が解け喜びが心の中に広がり、嬉しくて私も思わず微笑んでしまいました。
最後に心を込めて目と白毫(びゃくごう)を描き、私の観音様が誕生です。
恥ずかしながら、普段は信仰心とは縁遠い私ですが、當麻寺の絵天井の間での2時間は、自身の心の変化に向き合い無心な自分に出会えたような気がしました。
描き上げた絵はもちろん持ち帰り、時々眺め、あの時を思い出しています。
早くお似合いの額縁を探して部屋に飾らなければ!!
奈良を巡るという知人の車に飛び入り参加をさせてもらい、このような至福の時を過ごす事ができたのは、きっと今までのように欲張って忙しく行動しなかったからですね。
これからは、こういう旅を心がけたいな〜とつくづく思いました。
「写佛」お薦めです!興味のある方は、下記「當麻寺ホームページ」をご覧ください。
http://www.taimadera-nakanobo.or.jp/