観音様と良い縁を結べるようにと、修復を手がけた勢山さんが結縁(けちえん)の五色の紐を堂内に張りました。
その紐を追うと五色の紐を手にした観音様が。亀裂が入っていたお身体などが直され、古色が施されたお姿は気品に満ちています。
平安期の様式に合わせた板光背と台座が新たに制作され、欠損部分の復元や、修理のたびに塗重ねられて来た彩色層を取り除いた今回の修理は、いわば造顕時の姿に戻られたと言って良いそうです。本来の姿に戻られたせいか、観音様の表情もとても満足げに感じられました。
當麻寺中之坊で剃髪(ていはつ)し、尼僧となった中将姫の守り本尊と伝えられるこの観音像。勢山さんにお聞きすると、4〜5回修復された形跡があるとのこと。信仰の形態が変わったことや、各時代の特色がその都度加味された結果、造顕時の様式が失われてしまったようです。
約一年をかけて本格的な修復が終了し、導き観音像(十一面観音菩薩像)が中之坊剃髪堂に戻られたのは4月5日。4月16日に結縁記念法要がいとなまれました。
「観音様の修復をお任せできる方に出会い、ようやく本来のお姿に戻ることができました」と、法要後に挨拶された中之坊院主の松村實昭師。
「先人が守ってくれたから現在があります。その事に感謝しつつ、時代考証を大切にして造顕時の様式を再現しました」と渡邊勢山師。
八重桜が咲いているというのに肌寒さを感じる日よりでしたが、結縁ご開帳初日に訪れた方々は、誕生の頃のお姿に戻った観音様に感激し、ご縁のあった事を大変喜んでいる様子でした。
さっそく駆けつけてくれた蓮花ちゃん(葛城市のマスコットキャラクター)も、無心に手を合わせていました。
昇る朝日と沈む夕日。
どちらも同じ太陽で毎日繰り返されていることなのに、その様は時に言葉に現せないほどの感動を与えてくれます。
時代は違っても、想いは同じだったのでしょうか。
遠い昔の天平の頃、奈良二上山の峯の間に沈み行く夕陽に極楽浄土を体感した中将姫は、観音様に導かれ、二上山麓の當麻寺中之坊で剃髪し尼僧となりました。中将姫が一夜で織り上げたと伝えられている當麻曼荼羅は當麻寺のご本尊です。
長い年月を経て、いまもなおロマンをかきたてる中将姫伝説。
この伝説を現代に伝える當麻寺の練供養会式が、今年も5月14日に開催されます。
昨年の練供養会式で、西日に照らし出された荘厳な様子を初めて目にした私は、極楽浄土に向かう中将姫の姿を垣間見た気がしました。
守り本尊の導き観音像が懐かしい姿で現れ、中将姫様もさぞかし喜ばれていることでしょう。
導き観音像結縁特別ご開帳は、6月16日まで當麻寺中之坊剃髪堂で行われています。
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