2012/12/13

A兄さん物語の断片・3  お人形系妄想創作

ツイッターお人形垢(@honeyring_dolls)からの転記。
兄さんと紗雪の会話。
兄さんがついにデレますw

あっちは完全セリフのみなので、兄さん視点の地の文を追加。
そして、最後に付け足しもあるのでお人形垢で読んだ方もご覧下さい。急に歌うよ!



弟だった存在は新しいオーナーの元で女の子として転生を遂げた。
対面する予定だったが、事情で延期になったらしい。
夜明け、ひとりでぼんやりと窓の外を見ていると、小さく声をかけられた。

「…お兄ちゃん」

ここのファーストドールであり、<津軽の冬>紗雪が、はだしで棚から降りてきてそっと隣に立った。

「…起きてたのか?」
「いま起きたの。えっと、なにしてるの?」
「…外を見てたよ。」
「……会いたかった、の?『彼女』に」
「いや、むしろ少しほっとしている…だが、まあ、そう、だな」
(俺も少しは素直にものを言うべきだな、この子達には)

返ってきたのは意外な答えだった。
「…えへへ、さゆも少しほっとしてるわ、悪い子ね」
「どうして?」
こちらの事情はこの子達には関係ない、そう思っていた。

「お仕事が終わったら…お兄ちゃんがまた旅に出てしまいそうで」
「…最初は確かにそのつもりだった。けど、まあ、その、だ」
「…?」
どうも、うまく言葉になってくれない。
「…外を、見ていたのは。きみやオーナーが言う冬の夜明けのことを考えていた…」

オーナーは本来冬が嫌いだったが、津軽に来て初めて知った、たくさんの仲間とわいわい騒いでから、幸せな気持ちで帰宅する冬の朝の光景のイメージを、真冬に出会った、ブルーグレーの瞳と微笑むような無邪気に語りかけるかのような表情の紗雪に託し、そこからいつしか津軽計画の構想が生まれたと話してくれた。
事情により計画の始動までは数年かかったが、その間一人子としてオーナーと強い結びつきを得た紗雪を柱に、現在計画は順調に進行中であり、近々最後に残った「夏」も迎えるつもりだという。
また、地域のドールオーナーの集いに参加することにより、交流を求める気持ちが蘇ったオーナーは、その中でのほかのオーナーとの語り合いによって、津軽計画に託すより鮮明な想いと物語に気付き、また男子ドールへの興味が生まれたことで、自分との出会いに繋がったことも。
ただ、ドールも、人間との交流も、思うままに手に入るものではない。
資金、タイミング、相手の気持ち、時間的制約…無理に求めると必ずどこかにひずみを生む。
(求めすぎると壊してしまう物だってある…自分の限界を超えてのめりこむと、自分自身のバランスだって崩すし、まして相手のあること、失った関係は二度と戻らない。それを知っているから、不安なんだろう…会いたいのに、話したいのに、ひとたびタイミングをはずすと、話すのが怖いと悩んだりもする。拒絶されるのが怖いと、立ちすくむことがある。そう、いまの俺のように)

転生した「彼女」には会わないほうがいいと心に決めていた。
でも、オーナーに届いた写真を見せられたら…無垢な瞳の少女に釘付けになった。
会いたい。否、「会ってみたい」
ただ、今の「彼女」は俺のことなど何一つ知らない。新しい家で、新しいオーナーと新しい家族がいる。
オーナーが違えば、今までのように言葉なしで自然と分かり合うことはもうできない。
初対面で怖がられたら、拒絶されたら…
受け入れてもらえたとしても、俺が以前の弟のイメージを重ねて、またのめりこみ、寄りかかりすぎてしまったら…同じ過ちを、繰り返してしまったら。
そう思っていたので、今回は会えないと聞かされたとき、ほっとしてしまったことも否定できないのだ。

「君達を愛し、大きい人間に愛されて、作り上げた『世界(あおいもり)』で暮らすオーナーは十分幸せにも見える。それなのになぜ、あんなにも求めるのかな。独りきりで唇を噛みしめ吹雪の中を幾度歩いても、数度のうつくしい朝で冬を愛せるのか…仲間と過ごす時間を求める気持ちを失わないのか…」

紗雪と出会う以前のオーナーのことは断片的にしか聞いていないが…まだ触れてはいけないこともあると感じている。
少女たちが大切にしている手作りのクマの人形をみるに、辛い記憶だけではなかったようだが。

考え込む俺をよそに、紗雪はすまして笑った。
「さゆだって全部わかるわけじゃないけど…『何故』なんてお姉ちゃんに問うてはだめよ?そういうものだから仕方ないの、きっと理由なんて探さないわ。」
「そういうものか」
「そういうもの♪お姉ちゃんは贅沢なの。そしてあたしは、贅沢が言えるようになったお姉ちゃんが好きなのよ」

しばしの沈黙。
紗雪がふと話し出した。

「はじめはあたし達が何故戦うのか分からなかったわ。何と戦っているのかも。あたし達がいくら戦っても、お姉ちゃんの世界…『あおいもり』の外には影響を及ぼせないのに。でも少しずつ見えてきたわ。あたし達が戦うのは外の誰かじゃない…」

そう、最初はただ四季のモチーフを与えられるだけだった彼女たちだが、長い髪をなびかせスカートを翻し、華麗に戦うこともある。
(まともに戦闘能力があるのは紗雪だけな気もするが。なにせ、姉の和桜はおっとりしていて、花びらを用いた防御や目くらましを主に担当しているし、妹の林檎に至っては、「物陰からリンゴを投げつける」以外の攻撃は知らないように見える)
それは、バトル描写の得意な他のオーナーとのふれあいから明確になったようだが、それ以前から時折何かと戦ってはいたらしい。
ただ、その「何か」の正体は、不明のままだった。
最初は、他のオーナーとそのドール達とのスポーツマッチを想定していたようだが、どこかに違和感を感じていたそうだ。
それならばもっと、戦いに向いた性格や能力を付与するだろう、戦闘向きにカスタマイズされたのではない彼女達の戦う理由にはどこか足りないと。

勿論、ものを食べたり喋ったり行動したりするのと同様、彼女達の戦いもまた「あおいもり」(=オーナーの精神世界)でのみ具現化するものだ。現実世界から見れば彼女たちは(無論俺も)単なる人形で、表情も変えずにただ愛らしく並んで座っているだけなのだ。

「オーナーの悲しみや不安と戦っている、そういうことか」
「んー、あたしはそう思ってるけど、おそらく敵の正体は正直、本質ではないのよ。あたし達が戦うイメージを与えられたのは、『お姉ちゃんの声に応えて力を合わせて戦う姿』をお姉ちゃんにイメージさせるためなのだわ」

戦いの相手は本質ではなく、決して戦闘向きではない彼女たちが姉妹で力をあわせ、美しく戦うという行為そのものに意味があり、力があるということか。

「それがそのままお姉ちゃんの力、『あおいもり』を構築する力になる、そしてあたし達はさらに強くなる…理屈はわからないけど、そういうことなのよ」
「津軽計画にもまだわからないことが多いんだな」
「ええ。…まあ、お姉ちゃんは今のところ『エレガ系OP聴いてるとうちの子バトルシーン想像してたーのしい☆戦う女の子いいよね!いいよね!!』って言ってるしね…だから戦う相手は本当に何だっていいんだと思うわ」

(さすがファーストドール…今の喋り方そうとう似てたぞ…)
俺はつい苦笑する。さすが7年近くも共に暮らしただけはある。

「でもどうせ戦うのなら、お姉ちゃんのかなしいきもちを打ち破るイメージをお姉ちゃんにかえしたい、あたしはそう思って勝手にやっているだけ。だから…」

不意に真剣な瞳を俺に向ける。
その瞳はブルーグレイ。明けきる前の冬の曇り空。
冷たく憂鬱なはずのその色に、優しく包むようなぬくもりを灯して。

「お兄ちゃんのかなしみやさびしさとも、戦えると思うわ。戦わせて…これから」
「……君は… はは、先に言われてしまったな」

さきほど急に戦いの意味を話し出したのは、これを俺に言うためだったのか、とようやく理解する。
…俺が意地を張っている間に、この子はこんなにも俺を信頼し、力になりたいと考えてくれていたのか。
ならば…

「本当はもうメイクをいじらせた時からそのつもりではいたんだよ。練習台は教室生まれの役割とはいえ、誰にでもというわけではないからね」
「ええ…」
静かに頷く紗雪には、俺の出した結論がもうわかっているだろう。それでも。
「ただ、あいつより先に居場所を見つけて幸せになることが後ろめたかっただけで。でも、もう決めたよ」

怖さも不安も、失った後悔も消えない。
弟はもうどこにもいないという事実。
そして新しく生まれた少女に、また関わりたい、会って言葉を交わしたい、俺のことを知ってほしい、今度こそ対等な関係を結びたいと願ってしまう俺自身への呆れ、自己嫌悪。
それでも。
それでも、俺は感じた思いに突き動かされる。性懲りもなく。
その為には、同じ過ちを繰り返さないためには、俺が俺としてしっかりと生きること。
それしかないのだ。
そして、一方的に寄りかかることなく、しかし、支えあうこと。
俺を家族と認め、俺のためにも戦うと言ってくれたその信頼に応えること。
応えられる俺になること。
だから。
だから俺は。

「俺は、はにわ家第5ドール、津軽計画を支え子供達を見守る『あおいもり』の住人として、『彼女』に会うつもりだ。」

その瞳を真っ直ぐに見つめ、言い切る。
決意と力を込めたその言葉は、しかし俺自身も驚くほど穏やかで柔らかく響いた。

「まだ謎の多い津軽計画にも、オーナーにも興味がわいたし、ここなら俺は俺として何か存在意義を見つけられそうだ。見つけてみたい。そして、…最初は会わない方がいいと思っていたのだが…新しい俺で『彼女』と会って…話してみたいと願ってしまうようになった…」
それだけ話すと、紗雪はこぼれるような笑顔で頷いた。
「いいと思うわ…きっとすぐに会えるわ」

そのとき、背後から小さなあくびが聞こえた。
「ふあぁ…この分量なら…ブログでやれ…」
「おはよ林檎♪」

(メタ発言担当…?)
オーナーの呟き:まあ、だから今ブログでやってるんだけどね

幼いがやや低い声でぽつぽつと途切れがちに話す少女。
<津軽の秋>林檎。
恥ずかしがり屋で人見知りだが、気付くと俺のことを物陰からじっと見つめていたりする。

林檎はとことこと俺のそばまで来て、きゅっと小さな手で俺の袖を握った。
俺をじっと見上げながら小さな声で呟く。
「…おにーちゃんは…おにーちゃんに、なってくれるん、だよね」
「ああ…ずっと不安にさせてすまなかったね」
微笑みかけると、慌てたように袖を離してぷいっとそっぽを向いた。
「………べつに…。」
そして、ととと…と姉の隣に位置どる。紗雪がうふふ、と笑った。

「んー、みんなが起きるまで二度寝しようか、起きてようか迷うなあ」
「まよう…」
「ま、いつもどおり気の向くままってことで♪」
「それが、ここのくらし…」
姉妹がくすくすと囁きあいながら窓辺に立つ。
窓の外はもうすっかり明るくなっていた。

不意に、高く澄んだ歌声が響く。
紗雪だ。

♪くらくながいー やみをーぬけてー あたらしいじーだーいーがくーるよー
 とざさーれーてーいたー ものがーたーりーたちー うごきだすよー

ああ、いつか一緒に歌うのをせがまれた幻想楽団の曲か。
本当にこの子は歌うのが好きだ。こうやってよくひとりでもアカペラで歌っている。

♪なぜきみはー ないているのー いきるのはーかーなーしいかいー
 そんなときこそー おおきなこーえでー わらうといいー

あとを続けたのは林檎だ。
普段は無口で話すときは小さく途切れがちに呟く彼女だが、姉の紗雪が歌うと彼女も時折こうして声を合わせる。
紗雪の歌声と比べると、特段に上手いということはないが、彼女なりに姉と歌うことを楽しんでいるのが伝わってくる。

♪せーかいをーやさしくつつむー おおーきなはーなをさかーせーようー
 なーがしたーなーみだはー にじになるー

次の歌声は予想外の方向から聞こえてきた。
背後、少女達の眠る定位置の棚の上、まだ眠っていると思っていた長女の和桜が、幼い睡花を抱いてあやすようにしながら歌っていた。
体は俺よりも格段に小さく、まだ少女と呼べる体つきなのに、落ち着きと包容力を感じさせる歌声。
睡花も目を閉じたままハミングで参加している。

♪きみをきーずつけるものすべーてを ぼくは ぜったーいーゆるさないよー
 きみをまもるーためぼくはたたかーうよ ぼくを さいごまでしんーじてーほしいー

サビに差し掛かり、3人(+1人)の美しいハーモニーが響いた瞬間、あおいもり、そして俺の心が旋律で満たされた。
聴いたことがないはずのこの曲の伴奏、流れるようなストリングス、リズムを刻むパーカッション。
そして知らないはずのこの曲の背景…そう、俺のこの感覚が正しければ次のセリフは入らず…

♪ちいさきものとあざわらうー ざんーこくなーれきしのかーぜー
 つーばさをーひろげてー むかえうつー…

織り成すような歌声。
3人でも美しいのだから、津軽計画の完成、4人揃った歌声はどんなにか素晴らしいだろう。
聴いてみたい、それを。彼女達のそばで。
支えていたい、その思いを、使命を。

そして俺の唇から、自然と歌が零れ出した。

♪きみがしーろいとりになるのーなら ぼくは おおきーなーそらーになーろうー
 きみはどこまーでもはばたいてゆーける ぼくは さいごまでしんーじてーゆーこうー

知らないはずの歌詞。それでも、まるで昔から知っていたように自然と歌うことができた。
知らないはずのこの曲の背景。歌われなかったセリフ。俺が歌ったパートも、本来の漢字表記は「最期まで信じて逝こう」だ。なのにどうして彼女たちがこの曲を歌いだしたのか、今の俺には手にとるようにわかった。

物語音楽の紡ぎ手と、ひとりの歌姫がいた。
この曲も物語の一部として生み出され、歌姫が歌い、語った。
別れからハジマル歌。
年月が流れ、紡ぎ手と歌姫もいつか、道を別った。
それでもこの歌は新たな人々によって歌い継がれ…
別れの歌は物語の枠を外れ、新たな物語を語るライブの最後にカーテンコールのように全員で歌われる曲になった。
物語の中で敵だったもの、憎みあったものが、笑顔でハーモニーを重ねて全員で歌われる曲になった。
もちろん、去った歌姫を忘れられない者もいる。仕方のないことだ。
オーナーだって、似たような軌跡をたどった別の一組に関しては未だ哀しみを抱えている。
でも…

オーナーの、少女達の思いが手に取るように流れ込んでくる。
本来ここに入るべきセリフも心に浮かぶ。

――ボクのことは愛さないで欲しい。
  ボクは、もうすぐキミの世界から消えてしまうから。
  ボクのことなど忘れて生きてゆくんだ。
  これから手にするモノを愛する為に、キミは生きてゆくんだ。
  生き延びるんだ。どんなことがあっても生き延びてゆくんだ。
  どんな困難が訪れようとも、絶対諦めたりはしないんだ。
  <時を超え甦るハジマリの地平線(クロニクル)>
  それがボクとキミとの、たったひとつの約束……。

それは、俺からあいつへのメッセージにも、あいつから俺へのメッセージにも思えて。
かすかに胸が痛む。
でも、俺は決めたんだ。
新しい俺で、新しい君に、必ず会いに行くと。
俺と君の物語は、今新しくハジマルのだと…

だから俺はセリフを語らずに(無論、恥ずかしかったというのも理由のひとつではある)
その代わりに、少女達のコーラスが朝の光と共に俺を、あおいもりを包む。

♪lalala la-lalala lalalala la-lala lalala lalala-la lalalalalaー…

俺もオクターブ下で加わる。
そう、俺はやっと、
やっと、彼女たちと歌うことができた…






関連動画

原曲


ライブ版
(何度も歌われていますが、これが一番原曲との違いや扱われ方がわかるかな?)
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