女性は50歳前後で閉経しますが、なぜでしょう。他の動物は死ぬまで妊娠します。何か理由があるのでしょうか?
閉経年齢
閉経する年齢は古今東西それほどの差はないのです。江戸時代でも40歳半ばだとされています。江戸時代には多くの女性は閉経するまでに寿命がきて亡くなっています。明治時代までは寿命と閉経年齢は差がなかったのです。最近は平均閉経年齢(50歳)と平均寿命(85歳)との間には35年もあります。また理論上ヒトの生存限界年齢とされている110歳から計算すると60年も早いことになります。
他の動物は
霊長類の中で閉経してからもヒトと同じように長い間生存することはきわめてまれです。ほとんどは寿命の尽きるまで排卵・妊娠を繰り返し、種の保存を優先させているのです。ヒト以外で閉経後も長期生存するのはクジラとゾウなど大きな哺乳類だけなのです。
閉経する利点・欠点
■利点
閉経することにより、乳ガンや子宮体ガンなど女性ホルモン依存性悪性腫瘍のリスクは確かに減るのが利点でしょう。しかしヒトも動物という観点からすれば、子孫を生産しない状態で病気を減らしてまで生存させる目的は何なのかという疑問が残ります。
■欠点
一方早く閉経することにより、骨粗しょう症による骨折のリスク、心臓血管系の病変のリスクが増えます。早く閉経することによりこれらの病気が増えることは、個体の生存を抑えることになるのですから、早く閉経することにより自然界から個体を消滅させるためとも考えられます。しかしより多くの子孫を残す方がヒトという種にとって有利という自然選択の大前提には合わないのです。
卵巣の中では
ヒト女性の卵巣の中にある何十万個の卵子は、その女性が母親の子宮の中にいる胎児の時にすでにある程度発育した状態で止まっています。このうち女性の一生のうち約500個だけが選ばれて排卵し、選ばれなかった卵子は徐々に吸収されてなくなるのです。ある程度発育したままで排卵するまで卵巣の中にとどまっている長い間に自然界からの影響を受けるのです。たとえば放射線、薬などの外からのもの、さらに卵子の突然変異を含めて染色体異常が蓄積するのです。その異常の蓄積の限界が40〜50年であるといわれています。つまり40〜50年以上経って排卵・妊娠・出産すると、次世代の染色体異常が多くなり良き種の継続ができなくなるのです。そのために40〜50年で卵子を全てなくするという自然界の仕組みが成立してのではないかと考えられています。
別の説「おばあちゃん仮説」
フィンランドとカナダの18〜19世紀にかけての多世代にわたるデータを分析した科学者らは、孫の誕生と成長には祖母の存在が大きく関わっている事実を発見したのです。おばちゃんは娘に子ども(孫)ができると、自分の経験から得た育児の知識を、親となった自分の娘たちに伝授していきながら、家事や育児の手助けをして、娘たちがより短期間に、より多く子孫をつくるのに貢献しているとされるのです。考えてみれば当然といえば当然の結果でしょう。つまり動物行動学的には育児に手間がかかるので生殖効率が悪くなった女性が生殖競争に参加するよりは自分の娘の世代の繁殖を手伝う方がその種(つまり今回はヒト)の集団としては効率がよいという仮説「おばあちゃん仮説」です。この説が現在最も有力です。
余談ですが
先の研究者らは、おばあちゃんの多くが、自分の娘が更年期・閉経を迎えた頃に亡くなっていることも指摘しています。現在のわが国で考えてみても納得がいくのです。平均閉経年齢が50歳ですから、娘が50歳になると、その母親は大体80〜85歳となり、現在の平均寿命と合うのです。

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